義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

文字の大きさ
41 / 229
第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

40.もし常人でも勝ち目ある手段となれば……(SIDE:アーデル) ※ クズ2度目のざまぁ回(その5)

しおりを挟む
 論理も何もないクズ相手に口先だけで丸めこむシィプシィ。
 その姿は頼もしいの一言だった。

 この場にマイヤーが居ないから余計に頼もしく思うと同時に、別の意味で安堵もしていた。

(本当、こういった暗黒面をクラーラに伝授してくれなくてよかったわ)

 アーデルはほっとするも、真実は違った。
 シィプシィはクラーラにもしっかり腹黒部分を伝授しているのだが、アーデルはクラーラを盲目的に溺愛するあまりその事に気付いてなかった。
 自分に都合のよいフィルターを備えてる辺りはアーデルもある意味クズと同類なのかもしれない……


「シシィ嬢。続きを……」

「……わかりました。次は不眠不休の労働でしたね」

 ペーターからの催促に一瞬怪訝な顔をみせたシィプシィであるも、何事もなく次の話題へ移る。

「不眠不休の原因は準備期間の短さです。この規模の催しであるなら最低でも一週間の猶予が必要です。その猶予が三日であれば不眠不休で行わなければ到底間に合わないので不眠不休は必然でしょう」

「マイヤーは三日で行けると言ってたぞ。実際、ちゃんと開催できてるじゃないか!!」

「だから、皆が不眠不休で働いたからですよ。おまけに予算も相場の半分以下なせいで、無茶を承知で働いてくれた者達にろくな給金も払えないときた。もう鬼はどちらかって話です」

「そ、それでも!アーデルが無理やり働かせた事には変わりない!つまり、鬼は」

「王命には国民を強制的に働かせるだけの力があります!!その強制労働を促すような王命を出したのは誰ですか!!!」

「うっ」

 怒気を込めたシィプシィの言葉に思わずたじろぐクズ。
 ただアーデルからしてみれば、その強制労働を促す依頼をそのまま受理したのは誰だっと突っ込みたくなる言葉でもあった。


 商業ギルドは国政とは切り離された独立組織であり、国境を超えた各国にも根を張る巨大組織。

 王命でも突っぱねようと思えば突っぱねる権利を行使できる。
 無理難題とも言えるような王命であれば、なおさらだ。

 だというのに受理したということは、不眠不休での労働は商業ギルド側にも少なからず責任あるのだが……

(そのあたりを上手い具合にぼかして糾弾してるのはさすがだわ)

「まだまだ言いたいことはたくさんあります!!貴方は責任者という立場にもかかわらず現場に全く顔を出さない。書類も見ない。これでは不正してくださいと言ってるようなものです!!おまけに忙しい中で代理責任者を態々呼び出して遊び歩いていたとも……」

「あ、遊んでるわけでは……」

「あー遊びではなく本気ですか。婚約者がいる身ですでに婚約が決まっている令嬢と……サイテーですね」

「ち、違う……俺とクラーラは真実の愛で繋がってるんだ!!アーデルに望まない婚約を強要されたクラーラを救うために……」

「ほぉほぉ、望まない婚約ですか。一応言っておきますが、クラーラ様の婚約は貴方の父君。国王様も絡んでます。トビアス国王陛下の勅命なので、しがない王太子妃に過ぎないアーデル様ではどうしようもありませんよ。皆様方の言葉を借りるなら、アーデル様は無能なのでなおさら……ね」

(いやいや、国王陛下の勅命は山吹色のお菓子を持参したお父さんとお母さんによるONEGAI攻撃で半ば無理やり出させたものだし!下手すれば勅命の私用化で訴えられかねない案件だからあんまり掘り返させないで!!!)

 アーデルは必死に心の中で弁明するも、シィプシィは止まらない。

 本来ならこちら側に非があるようなものであっても、絶妙な言い回しによってクズに非があるようにみせかける。

 よく考えれば違和感や矛盾等に気付けるようなものでも、察しの悪いクズでは気付かない。

(でも、こうやって気付けるのは第3者目線で冷静に聞いてるからであって、当事者になれば全く気付かないのよね。そうしてペースを完全に握られたらもうなすすべなし。もし常人でも勝ち目ある手段となれば……)


「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!いい加減にしろぉぉぉぉぉ!!!!」


 口で勝てないなら力で勝つ。
 つまり、暴力に訴えかけるという非常にシンプルな手段だ。



 ただし、それがシィプシィに通じるかはまた別問題であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...