6 / 80
1章
ヴァーリア国と英雄 04
しおりを挟む「あっ、コハクさんお帰りなさ・・・あれ? なんだか疲れてます?」
広場に戻ったコハクを、フローラとセンリが出迎える。
「んと、まぁ。久々に運動したからかな」
ただでさえ緊張で気が張っていたうえ、更にその場で戦う事となったのだ。
コハクが疲れているのも当然だろう。
「ところで二人に聞きたいことがあるんですけど。"魔創"って、知ってますか?」
「あぁ、確か英雄の力と呼ばれているやつか。魔力が無限に成長するんだっけか?」
そう答えるセンリ。
「無限に成長する力・・・へぇ、なんだか凄そう・・・」
「はい! 実際、凄い力なのですよ!」
魔法の話が好きなのか、フローラは楽しそうな顔で話題に食い付いた。
「通常、魔力とは身体の成長と共に魔力量も成長していきます。
例えるなら、筋肉みたいなものです。筋肉も魔力も訓練によって鍛える事で成長しますが、人間の身体にはある程度限度がありますし、年をとれば衰えていきます。
けど英雄の力はその限度がなく、衰える事もありません。
それに加えて"インベイジョン"という相手の魔力を吸収する魔法を扱う事が出来ます!
死竜を倒した伝説の英雄が扱う"インヴェイション"は相当強力で、魔法はもちろん、ありとあらゆる攻撃を吸収出来た、無敵の魔法だったと聞いています!」
凄い勢いで説明を始めるフローラ。
そんな彼女に続いて、センリが口を開く。
「ようは筋肉の例えだと、相手の筋肉を千切って自分の身体にくっつけるだけで筋力がアップ出来るって訳だ」
「・・・センリさんの説明はなんだかグロテスクです」
フローラは、うっ・・・と具合悪そうな声を漏らす。
センリは「そうか?」とふざけた様に笑った。
「でもほら、人間ってのは1匹魔物を倒したところでゲームみたいにレベルアップする訳じゃないだろ?
でも"魔創"を持つ奴は、魔物を倒してその魔力を奪えば、ゲームでレベルアップしていくみたいに、どんどん強くなっていくって事さ。そう聞くと英雄っぽいだろ?」
「なるほど・・・」
コハクはそんな力が自分にあるのかと思い、思わず微笑んでしまった。
「ところで、コハクさん? どうして急に英雄の力の事を知りたくなったのですか?」
「えっと、カギツキ隊長の話だと、僕にその英雄の力があるらしくて・・・」
「え?」
一瞬、時間が止まったかの様に二人が固まる。
そしてその間の後。
「えええええええ!?」
あまりに驚いたのか、フローラが声を上げる。
「は!? ほ、本当にか?」
フローラの程取り乱してはいないが、センリも相当驚いている様子である。
「は、はい。カギツキ隊長は冗談を言う様な人に見えないし。やっぱりこの力って凄い珍しい事なのでしょうか?」
「そうですよ! "インヴェイション"は魔法としてある程度再現されてますが、無限に魔力が成長する英雄の体質はまだ再現されていません!
つまり、私達が"インヴェイジョン"を使ったとしても、英雄の体質が無ければ相手の魔力を奪えるというだけの魔法にしかなりません! それだけ特殊な、唯一無二の体質なんです!」
「そ、そんな凄い力なんですね」
「だてに"英雄"なんて呼ばれてないのさ」
「・・・でも、カギツキ隊長は僕に"英雄の力"があることをあまり良く思ってないみたいで」
「成る程、それで浮かない顔していた訳か」
「まぁ、疲れているのには他にも理由があるんですけどね」
コハクはシンキとの試合を思い出して、はははと笑う。
「何、今すぐにそう思い詰める事ないさ」
「そうですよ! ほら、今度一緒に任務を受けましょう? お手伝いしますよ!」
「・・・ありがとうございます、二人とも」
突然、異世界に送られてしまい色々と不安を感じていたコハクだが、センリやフローラの様な良い人達と仲良くなれて良かったと、少し安心した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる