異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

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2章

主人公のあり方とは 02

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 昼を過ぎた頃。

 壁外の任務から帰宅したコハクはカノールの店に来ていた。


 客はコハクを入れて3人程。

 あまり繁盛しているとは言えないが、コハクはこの落ち着いた雰囲気を気に入っていた。


「・・・はぁ」

 コハクはメニューと財布の中身を見比べながら溜息を吐くと、水の入ったコップに口を付ける。



 兵士として働いた報酬は、当然ながらどれだけ魔物を狩ったかによって変わる。

 危険な魔物を狩れば多くの報酬が貰えるし、珍しい魔物を狩ってその素材を売るという稼ぎ方もある。

 そういった稼ぎの良い獲物の多くは高いランクの地域にいる為、兵士としてのランクが上がればそれだけ稼ぎも増えるのだ。


 なのだが、コハクは"メインバイパー"に襲われた事がトラウマとなり、Bランク帯に入れずにいた。

 故に、コハクの財布の中身は、あまり満足とは言えない。


「・・・あ、注文いいですか?」

「はい、ご注文ですね!」

 コハクは、丁度近くのテーブルを拭いている店員の少女を呼ぶと、少女は元気の良い声で返事を返した。


「えーっと・・・これと・・・これをお願いします」

 出来るだけ、値段とカロリーの効率が良さそうなものを選んで注文する。 

「はーい、承りましたー」

 そうして店員の少女が厨房の裏へと去っていくと、コハクは新聞を手に取り、記事に目を通し始めた。


「ん、殺人?」

 コハクはひとつの記事に興味を引かれた。

 記事の内容は、任務に出ていた3人の兵士が死亡したというものであり、犯人は、新たにこの世界へ送られてきた異界人だと推測されていた。


「こんにちは、コハクさん。身体の具合はどうですか?」

 カツカツと義足を鳴らし、店の奥からカノールが出てくる。

「あ、どうも、カノールさん。身体はもう全然平気です」

 一瞬、魔物に対してトラウマが付いてしまった事を相談してみようかと考えたコハクだが、会って早々にする話でもないかと思い、言い留まった、


「それは、ご無事でなによりです」

 そう言いながら、カノールはコハクのいるテーブルの席へと腰を下ろした。

「おや、殺人事件ですか。何やら物騒ですね」

 カノールはコハクの読んでいる新聞を見てそう言う。

「・・・ですね。記事によれば、兵士を殺したのは魔物ではなく異界人らしいです。そしてその異界人は未だ発見されてないみたいです」

「ふむ、異界人による殺人、ですか」

 呟きながら、カノールは難しい表情を浮かべた。

「・・・あの、今までにも異界人が人を殺す事件って、あったりしたんですか?」


「そうですね、ありましたよ。何処の世界から、何者が送られて来るのかはわからない。危険な異界人が現れる事は、おかしくはありませんからね」

「・・・そっか。あるんですね、そういう事件」


 思えば、あの竜使いの少女・アルスフォードも、相当危険な人物だったろう。

 今でこそ、コハクには彼女が殺人を犯す様な少女には見えないが、もしあの時、彼女と対峙していたのがセンリ達ではなく、もっとランクの低い兵士だったら、ただ事では済まなかったのかもしれない。

 ヴァーリア国が異界人を恐れるのもおかしくは無いと、コハクは感じた。


 その時、奥の階段から誰かが降りてくる音が聞こえる。

 長い黒髪を揺らして降りてきた少女は、何も言わずに真っ直ぐ店の出入り口へ向かっていく。


「あれ? あの子・・・」

 前に、コハクが初めてこの店に来たときに店員をしていた、雪妃という少女だ。 


「おや、雪妃さん。お出かけですか?」

 カノールがそう呼びかけると、雪妃は「ええ。夕方には戻るわ」と返事を返し、外へと出て行った。

 そんな彼女の後ろ姿を見ながら「やっぱり、美人・・・」などと思うコハクである。


「・・・あの、カノールさん。雪妃さんってここで暮らしてるのです?」

「ええ、そうですよ。寝床に困っていた所を、式利さんに拾われたと言っていました」

「へぇ、そうだったんですか。・・・雪妃さんは普段あまり店で働いたりはしてないのですか?」

「あぁ、実は今現在、この店には私と雪妃さんのの他にも、2人の子が住んでいましてね。
お恥ずかしい話ですが、この店の売り上げだけでは生活が大変でして。それで、雪妃さんは"寝床があれば十分だから"と、外へ働きに出ているのですよ」

「なるほど、そういう事ですか・・・」


 今、店員として働いている少女が、ここに住んでいる一人なのだろう。 

 クールな印象を受ける雪妃とは反対に、明るい印象のその少女は、高校生であるコハクよりもずっと歳下に見える。


「おっと、コハクさん。そんな目で見ないで下さいな。ヴァーリアでは10歳になれば労働が出来ると法律で決まっていますが、彼女達をこき使うなんて事はしませんよ。
荒い扱いをすれば、センリさん達が黙っていませんからね」


 カノールは、くくく、と冗談っぽく笑う。

 その時、店のドアが開き、来客を伝える鈴が鳴った。


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