61 / 80
3章
ようこそ、反乱
しおりを挟む「報告通り、街中に魔物がいます! クソ、なんでこんな所に魔物が・・・!?」
「推理なんて後でいい! まずは魔物を倒さないと何も解決しないぞ!」
兵士達が商店街に辿り着くと、すでにそこは瓦礫と血肉で溢れていた。
そしてその中心に、黒い体毛の大柄な魔物、ビーストが堂々と存在している。
どうやら、死体を漁っているらしい。
この知性のない黒い魔物に、慈悲などという概念はない。
勇敢に立ち向かう者や、逃げる者、その場で立ち尽くす者、男も女も大人も子供も関係なく、強靭な爪で人々を裂き、ナイフの様な鋭い歯で肉を食いちぎる。
「気を付けろ、Sランク帯の魔物だ。真向から戦って勝てる相手じゃない。
前衛は出来るだけ攻撃を防ぐ事に徹しろ。前衛が攻撃を凌いでいる限り、奴はただのでかい的に過ぎない」
班長の命令を受け、剣や盾を装備した前衛の兵士達は黒い巨体へと向かっていく。
後衛の魔術師達は、建物の屋上からビーストの様子を伺う。
ビーストがくんくんと鼻を動かす。
兵士達が近付いてくる事に気付いたのだろう。
黒い毛で覆われた頭部を動かし、鋭い牙の並ぶ口から、ふしゅうと息を吐く。
そして合図もなく唐突に、ビーストは強靭な脚で地面を蹴り、前衛兵士達へ向かい駆ける。
「くるぞ」
剣と盾を構え、ビーストを迎え撃つ兵士達。
ビーストは兵士の一人に狙いを付け、鋭い爪の生えた腕を振り下ろす。
大振りな一撃を避ける兵士。だが、ビーストは間髪入れずに腕を振り回し、執着に兵士へ襲い掛かる。
「魔法を放て! 誤って味方を撃たない様に気を付けろよ!」
後衛の魔術師達が、合図と共にビーストへ向け魔法弾を放つ。
魔法の光弾が魔物の背中を焼くが、魔物は気にかけずに目の前の兵士へと襲い掛かる。
「もっと撃ち込め!!!」
ビーストの攻撃を避けた兵士達が剣でビーストを斬り裂き、魔術師達が放つ魔法の光弾が、次々とビーストに着弾する。
強靭な身体を持つビーストだが、兵士達の猛攻を受けて、黒い体毛が、どす黒い血が飛び散る。
この調子ならビーストを倒せると、兵士達がそう思った瞬間。
「っ!? なんだ!? 待て!!! あああああ!!!!」
突然、後衛魔術師の一人が屋上から落下する。
「ぐあっ!? クソ!!! 足が!!!」
地面に叩き付けられた魔術師が悲鳴を上げる。
命は無事であるが、しかし軽症では済まないだろう。
「な、なんだ、何事だ!? 何かがおかしいぞ・・・?」
別の場所からその光景を見てた魔術師が、班員達に連絡を取ろうとデバイスを取り出す。
その背後に、人影が近付く。
「・・・っ!?」
人の気配を察し、振り向く魔術師。
その瞬間、カメラのフラッシュが瞬く様に、幾つもの光が点滅する。
それが魔術器から魔法の光弾が発射された光だと気付いた時には、もう遅い。
「がっ!!!」
光弾が魔術師の身体を撃ち抜く。
魔術師達が扱う魔法と比べれば威力は低いが、それでも拳で殴られる以上の衝撃があるだろう。
続けて2発、3発と、次々に光弾が魔術師の身体に被弾し、爆発を起こす。
「ぐっ、ああ!!!」
そして光弾の爆発に押し出され、魔術師は屋上から落下した。
「くっくっく。今の感じを覚えたか?」
カミノは屋上の縁に近づき、落下した魔術師を見下ろす。
彼女の後ろには、数人の反乱者が並んでいる。
「この調子で、キミ達はあの魔物の援護をすればいい。戦場を乱し混乱させる程、奴らを倒しやすくなる」
カミノは片腕に魔力を込めると、前線で魔物と戦闘を行う兵士へ向け、虹色の火球を放つ。
放たれた虹色の火球は着弾すると破裂し、火炎と衝撃で兵士達を蹴散らす。
「ぐあぁぁ!? くそっ!? さっきから何が起きている!? ぐああああ!!!」
カミノの放った火球により負傷した兵士を、ビーストが容赦なく追い討ちをかける。
先ほどまで優勢だった兵士達が、一人ずつ魔物の牙に噛み砕かれ、引き裂かれていく。
その様子を見下ろしながら、良い反乱の幕開けだなとカミノは笑った。
0
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる