異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。

朱音めあ

文字の大きさ
64 / 80
3章

英雄と救世主の再戦 01

しおりを挟む

 
「それじゃあ、話は終わりだな。ユークリウッド、あの二人を殺せ」

 カミノの合図で、ユークリウッドは腕を黒い刃に変化させ、コハクへと襲い掛かった。

「くっ・・・!」

 ユークリウッドが振るう刃の連撃を、コハクは盾で防ぐ。
 
 前回の戦いで、コハクは盾の重さに振り回され、ユークリウッドの速さについていけずに苦戦を強いられていたが、しかし今は違う。

 今のコハクの動きは、盾や鎧の重さなど感じさせない程に、ユークリウッドの攻撃に素早く反応し、完璧に防いでいく。


 訓練で成長したのはコハクだけではない。

 式利がユークリウッドを剣で切り裂く。

 当然ながら、剣はユークリウッドの身体を擦り抜けて傷一つ付けれないが、

 しかし、式利が振るう剣の刃が衝撃波を放出し、炸裂した。


「・・・ッ!?」 

 ユークリウッドの身体の1/4程が、その衝撃波により形を保てなくなり、霧状に散る。

 一瞬、驚いた表情を浮かべるユークリウッド。

 だが、ユークリウッドは魔法を唱えると、式利へ向け黒い霧を放出した。

 結界を展開して霧を防ぐ式利だが、水流の様に勢い良く放たれた黒い霧は想像よりもずっと強力で、式利は押し流されそうになり、必死に耐え、押し留まる。


「式利さん!!!」

 コハクが盾を振り上げ、勢い良くユークリウッドへ叩き付ける。

 手ごたえはないが、しかしユークリウッドの身体は衝撃で歪み、黒い霧の放出も止んだ。


「どうやら、魔法の扱いを覚えた様ですね。戦いに備えてたのは、私達だけではないという事ですか」

 態勢を立て直した式利は、ユークリウッドへ剣を振るう。
 
 式利の振るう剣と、ユークリウッドの黒い刃が激しく、何度も交差し、ぶつかり合う。

 ユークリウッドは捨て身上等で式利へ掴み掛かるが、式利はそれを読んで上体を逸らし、攻撃を避けた。

「人のクセを覚えるのは得意なんですよ。だてにセンリ様のサポートやってませんから」
 
 式利の振るう剣から放たれる虹色の衝撃波が、ユークリウッドの身体を削り取る。 


 更にその隙を突いて、コハクの盾がユークリウッドの左肩を強打する。

「ちっ、貴様ら・・・!」

 ユークリウッドの左腕がぐりゃりと歪む。 

 更にコハクは、無防備になったユークリウッドの左腕を素手で掴み<インヴェイジョン>でユークリウッドの魔力を奪い取る。

 
「っ・・・!?」

 ユークリウッドの左腕はさらに形が崩れ、黒い刃も形を歪ませ、霧状に散っていく。

「なんだ、今のは・・・!?」

 ユークリウッドはコハクを睨みつけると、今度は右手を黒い刃に変形させ、コハクの腕を切り裂く。
 
 だがコハクの腕は傷一つ付かない。

 腕を守る鎧が、黒い刃からコハクを守っている。


「くっ、右手も変化するのかっ!?」

 しかし、ユークリウッドの左腕が再生する。

 そして、コハクが盾を構えるよりも早く、ユークリウッドが再生させた左腕を振るう。

 狙いは、鎧に守られていない喉だ。 

 そこへ、式利がユークリウッドを剣で切り裂き、魔法の衝撃波が炸裂してユークリウッドの左腕を吹き飛ばした。

 続けて剣を振るう式利だが、ユークリウッドはそれを避けて、再びコハクへ向かい飛び掛る。

 コハクは盾を構えてユークリウッドを迎え撃つが。

 ユークリウッドは自ら身体の一部を霧化させ、強引に盾を乗り越え、コハクの後ろへ周りこんだ。

 そして腕の刃でコハクの身体を切り裂くが、コハクの背を護る鎧が黒い刃を遮った。


「ちっ・・・」

 ユークリウッドは左腕に霧を集めて再生させようとするが、式利の放つ虹色の衝撃波が、集まりかけていた霧を散らせる。

「もう一発、どうですか!!!」

 続けて魔法の衝撃波を放つ式利。

 その虹色の衝撃波を、ユークリウッドは右腕の刃で防ぎ、そしてその刃をコハクへ向ける。
 
「貴様は・・・」

 コハクの盾とユークリウッドの刃が激しく衝突する。


「貴様は、何をした!!! アリアに、何をした!!!」

 叫びながら、ユークリウッドはコハクへ向け右腕の刃を何度も叩きつける。

「ぐうっ、こいつ、何を言って・・・!?」

 盾と鎧で身を包んでいるコハクには、黒い刃は届かない。

 しかし、ユークリウッドの激しい攻撃を受ける度、コハクは盾は弾き飛ばされそうになり、身体は押し倒れそうになる。

 
「おっと、暴れないでください! 霧の異界人さん!!!」

 式利が魔法の鎖を放ち、ユークリウッドの両腕に絡みつく。

「邪魔だ!!!」

 ユークリウッドは自ら腕を霧化させて鎖から逃れ、霧化した状態のままコハクへと襲い掛かった。


(今だ!!!)

 コハクは、両腕が霧化してもなお向かって来るユークリウッドへ、拳を繰り出す。

 ユークリウッドが霧化した状態から実体を形作るのには、数秒程掛かる。  

 つまり、黒い刃も形成する事が出来ない。

 コハクはユークリウッドの両腕が霧化する瞬間を狙っていたのだ。


 霧化したユークリウッドの身体に拳が触れた瞬間。

 コハクの<インヴェイジョン>がユークリウッドの魔力を奪い取る。


「っ・・・!!!」

 剣や武器を通しての<インヴェイジョン>よりも、素手の<インヴェイジョン>の方が圧倒的に強力だ。

 コハクの拳を受けたユークリウッドの身体が、激しく削り取られる。
    
「やめろ・・・貴様ら・・・! 僕から・・・!!!」

 ユークリウッドは腕を再生させようとするが、片腕はコハクの盾による打撃で、もう片腕は式利の魔法により、再生しかけていた腕は再び霧状に散る。

 そしてコハクは拳による追撃を繰り出し<インヴェイジョン>でユークリウッドの身体を削り取る。


「僕から、彼女を奪うつもりか!!!」  
 
 コハクの拳が、ユークリウッドの頭部を削り取る。


 その時。

『・・・ユーくん?』

「・・・っ!?」

 コハクは一瞬だが、耳元でささやく誰かの声を聞いた。

 やさしく囁く、少女の声である。
 
(今のは・・・?)

 聞き間違いではない。

 コハクには、間違いなくその声が聞こえた。


「クソ・・・」 

 ユークリウッドは霧状のまま滑る様に移動し、二人と距離を取った。  

「あぁ、アリア、アリア、アリア。アリアは僕が護る、だから、彼女を脅かす奴は・・・僕が、殺さなきゃいけない」


 何を仕掛けるつもりかと。

 コハクと式利の二人は警戒し、ユークリウッドの出方を伺った。


 ユークリウッドが手のひらを開くと、まるで手品の様に、手のひらから小さな結晶が現れた。

 ユークリウッドは異質な腕で、その結晶を握り潰す。

 ユークリウッドの腕が、別の生き物であるかの様に脈打ち、軟体動物の様な触手が伸びて蠢く。

 そして、ユークリウッドの肩がパキパキと音を鳴らしながら変形していく。


「一体、奴は何を取り出したんでしょうか」
 
「さぁ、何だろう。僕にはわからないですけど、あまり良い雰囲気では・・・ないよね」

「同感です」

 2人は魔法を唱え、ユークリウッドへ向け虹色の衝撃波を放つ。

 2人が放った魔法の衝撃波はユークリウッドの身体を霧化させるが、しかしそれで変化が止まる事はない。


 ユークリウッドの肩から黒い霧が吹き出す。

 そこから、黒く硬質で、より大きく、禍々しい一本の腕が形成される。

 息を吐き出しながらユークリウッドは顔を上げ、目がギロリと動き、2人を捕らえる。


「なんだか・・・凄くヤバそうな気がしますが」

 コハクが呟く。


「えぇ、私もそう思います。どうやら、本気を出させてしまったみたいですね」

 式利は、ポケットに仕舞ってあるデバイスに手を掛ける。

「どうしてもの場合にと思いましたが・・・助けを呼ぶ準備は、しておきましょうか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...