姉上、それは悪役令嬢まっしぐらですぞ! ~悪役ルートは拙者が全力回避いたす~

ゴンザレスゴルゴンゾーラ

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【第7章 】これが現実(リアル)…戦場(スクール)ぴょん!

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学院の春の空気は穏やかだった――
……はずだった。

「キャッ、ごめんなさいレオ様~☆ぴょん♪」

マリエッタが急に靴紐を結ぶふりでしゃがみ、
不意にぶつかりそうになるレオ。
オタク魂全開の彼は即座に後退してすごいポーズで固まる。

(な……なにゆえ……この絶妙なタイミング……!?)

図書室では、同じ本に偶然手が伸びた。

「……あっ……」

ふと手と手が触れ合う。
レオ、即座に石化。

(や……やわ……!?
こ、これが三次元女子の……手の感触……!?
拙者のHPが……HPが削れていくでござる……!)

さらに、ふんわりと甘く柔らかな花のような香りが
レオの鼻腔をくすぐった。

(ぬ、ぬぬ……!)
(この香り……これは拙者が吸い込んでもよい気体なのか!?)
(三次元女子固有のフェロモン……!? いや、だが!未許可の吸引は礼儀としてどうなのだ……!?)

脳内で警告アラートが鳴る。

ピコン。
【警告:未知の女子属性芳香/吸引リスク判定不可】

「……ぬおおお……!」

レオは顔を真っ赤にしたまま、静かに1歩後ずさった。
マリエッタは何も言わず、ツインテールを優雅に揺らしながら
にっこりと笑った。

(……ふふ、反応可愛いですわね……)


温室実習では“たまたま”ペア組み替えが起き、
気づけばレオとマリエッタがペア。

すぐ近くの木陰――
茂みに隠れていたシリルが眼鏡をそっと押し上げる。

キラン……!

「……偶然とは面白いものだな、レオ」

アイコンタクトする腹黒兄妹。

「今ですわ兄様」
「ああ、GO」

キラン……!

またも光るシリルの眼鏡。


---

しかし、そんな中でレオには気がかりがあった。
最近のマリエッタの笑顔が、ほんの少しだけ陰っている気がしたのだ。

学院のベンチで、レオはひとり悩んでいた。
そこへ静かに現れたのがセレナだった。

「レオ……最近、マリエッタ嬢と話してないの?」
「そ、そんなことは……ない……でござるが……」
「……なら気づいて。彼女、少し元気がないわ」

レオはハッと顔を上げる。

「聞いてしまったの。最近、学院内で“マリエッタ嬢に内々の縁談話が出たらしい”って噂が流れてるの」

「な……っ!?」

レオの世界が揺らぐ。

(まさか……あのシリル殿が……!!
“他の婚約者を探す”と言っていた……
本当にあてがってしまったのか!?)

「本当かどうかはわからない。でも――
無理やり決められた婚約が嫌で、悩んでいるのかもしれないわ」

セレナはレオの肩にそっと手を置いた。

「レオ。……あなたはどうしたいの?
彼女を他の誰かに取られてもいいの?」

レオの瞳が揺れる。

「拙者……拙者は……」

セレナはにこりと微笑んだ。

「今ならまだ間に合うわ。
彼女の隣に立ちたいなら、自分から動きなさい」


---

(茂みの中)
隠れて様子をうかがっていたシリル。
眼鏡を指で押し上げると――

キラアアアン……!(最大級の光量)

(完璧……さあ、レオ。
君が動かねばすべては台無しだぞ……)


---

レオはゆっくりと立ち上がった。
丸まっていた猫背がすっと伸び、
長い前髪をゆっくりとかきあげた。

初めて額とまっすぐな瞳が露わになる。

「……拙者は……決めたでござる」


---

去っていくレオの背中を見送りながら、
シリルは微笑を浮かべた。

「ようやく動いたな」

隣のマリエッタは、ツインテールをふわりと揺らしながら
優雅に微笑んでいた。

だが、その瞳の奥には――兄と瓜二つの腹黒の光。

「さすが兄様……完璧ですわね♪」

抱きしめていたキラキラ装飾の手帳が
月明かりにキラン……!と冷たく輝いた。


---
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