姉上、それは悪役令嬢まっしぐらですぞ! ~悪役ルートは拙者が全力回避いたす~

ゴンザレスゴルゴンゾーラ

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『推しを譲る予定だったヒロインが退場したので計画崩壊中』 ―乙女ゲームなのに推しが猫背で婚約者が脳筋だった件―

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私、マーガレット・クラレンス。
貴族の令嬢で、まあそれなりに家柄も立派らしい。
でも本当の私は、前世の記憶を持った転生者だ。

……といっても、特別な力があるとかそういう話ではない。
ある日気づいたらこの世界にいて、しかも赤ん坊の頃から妙に達観していたので、途中で「ああ、これはあの乙女ゲームの世界だな」と察したというだけの話。

しかもこの世界――なんと、私が死ぬほどやり込んだ乙女ゲーム
『薔薇色の学園恋愛録』の舞台だった。


貴族の子女たちが名門学園に集い、運命の恋に身を焦がす――
美形ぞろいの攻略対象たちが、あの手この手でヒロインを誘惑してくる夢の学園生活。
前世ではありとあらゆるルートを回収したけれど、なかでも私の最推し、いや、永遠の推しはただ一人。

氷の貴公子、レオナルド・フォン・グリフォード公子。

完璧な銀髪、冷たい美貌、口数少なくも知性がにじみ出る言葉選び。
その奥に隠された優しさと孤独……くぅっ、思い出すだけで尊い!!

無口で無表情、でもふとした仕草や言葉に優しさがにじむ。
ストイックで孤独で、誰にも見せない弱さを、ヒロインだけに……!

前世の私は、レオ様に人生の一部を捧げていた。

だから、この世界で「レオナルド公子は実在していて、しかも自分より2学年上」と知ったとき――
マジでガッツポーズした。勝ち確じゃん、これ。

入学すれば、すれ違えるかもしれない。
運がよければ、同じ図書館で空気を吸えるかもしれない。
それだけで人生に意味があると思ってた。

……そう、あの忌々しい婚約話が来るまでは。

8歳のとき。
クラレンス家とバークレイ家の間で婚約が決まり、相手の子と初顔合わせをすることになった。

で、出てきたのが――カイル・バークレイ(当時10歳)。

私の最初の印象?
「ガサツ」「態度デカい」「声がデカい」そして何より――脳筋。

私が丁寧に挨拶しても、「あ?なんだおまえ」って感じ。目も合わせない。
そのくせ、剣とか筋トレとかの話になると目の色変えて語ってくる。
「女はつまんねー」とか普通に言う。
ほんと何なの? 品性ってどこに落としてきた?

しかもよりによって、このカイルってやつ、ゲーム内では私の婚約者ポジ。

そして、ヒロインにちょっと笑顔向けられたくらいで、
「守らなきゃ!」って盛大に勘違いして庇い始めるという、思考ゼロの脳筋ルート担当。

前世からずっと思ってたけど、私脳筋キャラが一番嫌いなのよ。
頭使わずに「守る!守る!」ってそればっか。
誰かの事情とか立場とか全部無視で、ヒロインの涙だけで突っ走るあのタイプ。
チョロいにもほどがある。

しかもゲームでは、ヒロインを庇うカイルに腹を立て私は嫉妬して、
ヒロインに陰湿な嫌がらせをし、最終的に断罪される悪役令嬢になる。
いや、ほんとふざけんな。
何が悲しくて筋肉に人生破壊されなきゃいけないのよ。

当然、私は決めた。

この婚約、なんとしてでも破棄してやる。

理想は、ヒロインにカイルを押しつけて、こっちは自由の身。
こっそりレオ様を推しながら、学園ライフを満喫する予定だった。

……だったんだけど。

そのヒロイン、まさかの退場済みとか聞いてないんだけど!!!


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