てっぺんかけたか

しっかり村

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ヘリコプターとセンダイムシクイとノック音

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壱 ヘリコプターとセンダイムシクイとノック音


パラパラパラパラパラパラ……
ショウチュウイッパイグイーッ……
コンコンコンコン……
パラパラパラパラパラパラ……
ショウチュウイッパイグイーッ……
コンコンコンコン……
「朝も早よから騒々しいのう。焼酎一杯グイーッはセンダイムシクイの鳴き声だとしても、コンコンは狐じゃのうてドアをノックしとる音じゃな。誰かが勝手口をノックしとる。じゃっけどパラパラって何じゃ? 誰ぞコショーでもバラまいておるんかいな、こない早うから」
繰り返されるけたたましさに目を覚ましたお春は、勝手口を少し開けて外を窺った。
「おう、オハヨウお春さん! 早くからすみませんですな。焼酎一杯ぐいーっといきたいところですが、ボージョレーヌーボーですわ。今年はホケチョ君が成人になったから、オマケして紅白二本ずつですよ」
眼の前に立っているのは、カーキ色のヘルメットを被ってゴーグルを低い団子鼻にかけた青い目の男。お春と同じくらいの背丈だが、手足は太く分厚い身体もまたカーキ色のツナギに包まれている。お春と、その夫である源ジィとは兄弟同然に育った幼馴染のカマクラ氏だ。
「こない早うから誰や思うたらカマクラはんかいな。ああ、そうすっとパラパラはヘリコプターの音かいな。朝早うから起こされるんはかなわんな。ボージョレ―の白なんて相変わらずハッタリかましよって。どーせまたラベル貼り替えただけなんやろけど、ひとまず貰うとくわ」
「いやいや相変わらず辛辣なのは、夕べも遅くまで呑んでたからですかな。もう十時ですよ」
「まぁ、センダイムシクイに焼酎一杯ぐいーって誘われてるうち、そこそこの時間にはなったんやけど、前の晩にしくじったんで早う寝たほうや。なあ、源ジイ」
「そうじゃ。ワイン無うなったんが十二時前やったからな。年甲斐もなくヤケ酒して、ちとペース早すぎたなとは思うたんや。いやしかし、まるで見とったかのように丁度のタイミングで新しいの持って来よるんやな。相変わらず怪しい男やカマクラはんは」
のそりとほくそ笑みながら、夫の源ジィが出てきた。
「そりゃちっちゃい頃からずぅ~っと一緒だったから以心伝心ツーカーですがな。けど、今日はたまたまですよ。昨秋のボージョレ―で恐縮やけど、赤白二本ずつ贈答用のがあったから持ってきたんですよ。ホケチョ君も成人になったことだし。お祝いですがな」
四本のボトルを目の前に掲げてブラブラさせながら、目はホケチョを捜している。
「ホケチョ君は……?」
「ホケチョはおらんようなった」
「へ? おらんようなったって……?」
「オシリ島へ行ってもうたんや」
「オシリ島へ?」
「せや。トーチャンカーチャン捜しに行くゆうてな」
ぼんやりとカマクラ氏の前に立つ源ジイとお春はまだ寝間着のままだ。おそろいのヨモギ色の作務衣の胸元がはだけて、お春の老いた乳房の谷が見え隠れする。お春は、胸元の低い谷から取り出した紙切れを広げて見せた。

 ~オシリ島へ行ってきます。父さん母さんを捜し出し、不老不死の泉を汲んできます~

「不老不死の泉……ですか」
カマクラ氏が唖然と左上の空に視線を泳がしたとき、北限の孤島に春を報せる、少し不慣れなウグイスの声が響き渡った。
  ホウホケチョ
  ホウホケチョ
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