灰かぶりと宝石姫

ナカナカ田

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プロローグ

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大好きなお姉さま

あなたがなりたいものはなんですか?

この家ーー王家の跡取りですか?

あなたが望むその地位を、揺るぎないものとしてあなたに贈れたら、あなたは私が生きていくことを許してくれますか?

富も地位も権力も私にとっては無意味で、興味のないものでした。

母は、私を産んだことで身体を悪くした母は、私を恨んで死にました。

お前さえ産まなければ。

サリーだけにしておけば。

私の記憶の母は、いつもそう言っていました。

母が死んだ後は、同じように父も私を責めました。

望まれない子。

それが自分なのだと、聡い私は分かってしまったのです。

世界は私を歓迎しない。

あるのはただ絶望で。

私は生きる意味を知りませんでした。

そんな時いつも、お姉さまだけが私の小さな光で。

会うと笑ってくれる。

挨拶を返してくれる。

心配なのと抱きしめてくれる。

今はもう、お姉さまにすら嫌われてしまっているかもしれないけれど、

優しくしてもらった幼い日々は、

私のただ一つ輝く日々で。

それを糧に残りの全ての人生を生きられるほどのものだったのです。

お姉さま。

お姉さま。

私の世界で唯一、大好きなお姉さま。

全てをあなたにあげるから、

そのあかつきには、

遠い地で、

あなたを想って生きること、

許してはいただけませんか?
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