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14 sideメルキュール
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「サチュルヌ嬢に近づくな」
以前サチュルヌが雷を落とした場所で、メルキュールとマルスはノーヴァと向き合っていた。
男女別で分かれる授業のあと、メルキュールがノーヴァに声をかけ、この場所に連れて来たのだ。
本来なら、こんなことはしたくなかった。
まっとうな方法で、正々堂々と勝負し、この男に勝ちたかった。
しかし、最近学院でひそやかに囁かれている噂を耳にしてしまい、時間をかけることが出来なくなってしまった。
(一刻も早く、この男とアース家の娘を退けなければならない!)
ーー殿下と、サチュルヌ嬢のためにーー
「重ねて言う。サチュルヌ嬢に、近づくな」
2人がかりでエトワール子爵令息に詰めよる。
自分はともかく、体格のいいマルスはかなりの圧だろうに、エトワール子爵令息は飄々としていた。
チラリとこちらに視線を向け、
「発言をしても?」
と悪びれもなく言ってくる。
こちらが目線で頷けば、
「それは、俺やアンタが決めることじゃない」
飄々とした態度とは裏腹に、ひどく真摯な目をしてヤツは言った。
「なっ、なんだと⁉︎」
「誰と付き合うかは、本人たちが決めるべきで、外野がとやかく言うことではない。と申し上げたのですよ」
打って変わってこちらを小バカにしたような慇懃な態度である。
「貴様、何様のつもりだ⁉︎」
1つ年下であるマルスは、入学式での一件を知らない。そのため、ヤツの無礼な態度に驚いていた。今にもヤツに食ってかかりそうな勢いである。
自分も似たようなものであったが。
明らかに怒りをにじませた我々の様子に気づかないわけもないのに、相変わらずヤツは涼しい顔をしている。
「いい魔法士になれると思うよ。彼女」
「…っ!!!なにを…」
心臓をわしづかみにされたような衝撃だった。
なぜ知っているのかは分からない。けれど、ヤツは知っているのだ。
「強くて優しい、いい魔法士になると思う。訓練は必要だろうけど」
静かな、しかし、強い光を宿した目でヤツがこちらを見ている。
「な、なにを…」
「あの魔力量だ。まともに訓練できてないんだろう?そもそもあの魔力を受けていなせる魔法士なんて、いないんじゃないか?」
こんなヤツの言うことを真剣に聞いてはいけない。だが、ヤツの指摘はまごうことなき事実だった。
ーー私より、殿下よりはるかに高い魔力を持つサチュルヌ嬢。
この国に、彼女を指導・訓練することのできる魔法士はいないのだ。
サチュルヌ嬢には伝えていないが、殿下やサチュルヌ嬢の兄ヴェルソー様、そして私。各々の両親までも巻き込んで、我々は密かにサチュルヌ嬢を導くことのできる魔法士を探していた。
しかし、王と王妃、公爵夫妻と宰相夫妻の人脈を持ってしても、国内に彼女を任せられる魔法士は見つけられなかったのだ。
頭の中に警戒信号がともる。
ーーーキケンキケンキケンーーー
ーーーコノオトコハ、キケンーーー
ーーコイツらをサチュルヌ嬢に近づけてはならないーー
(ーー絶対に!!ーー)
「どこで何を知ったかは知らないが、口で言って聞かぬのなら、力ずくで退かせるまで」
そう言うと、空中に魔法陣を展開させる。威嚇の意味も込めて。隣では、マルスが剣を抜いている。訓練用のものではあるが。
「マジか」
それを見てそれほど焦った様子もなく、ヤツは頭をポリポリかいていた。
その姿にカッとなる。
(なんだ!その態度は!!)
瞬間、2つ展開させた魔法陣のうちの1つが紅く輝き、ノーヴァの足元で火球が弾けた。
ノーヴァの足元の地面は鋭くえぐれている。
「次は本気で当てる」
本気の怒気を目に込めて、ヤツを睨んだ。
ーーにもかかわらず。
「あー…マジかぁ。そうくるわけねー。どうしたもんかなー」
苦笑いしながらこちらを見ている。
「ふざけているのか⁉︎次は、本気で当てると言っている!」
「いや、それは分かってるんだけど。どうしたもんかなぁと思いまして」
バカにしているとしか思えないほどのほほんした態度で、ヤツは本当に困ったような顔をしていた。
「警告はした。貴様は、どうせやれはしないとタカをくくっているかもしれないが、多少のケガは自業自得!」
言うと同時に、2つの魔法陣が黄色と紅に輝き、電流をまとった火球がノーヴァに迫る。
そのとき、
「なにやってんのよ!!!」
という声とともに、小柄な人影がノーヴァとメルキュールの間に立ち塞がった。
「っ!ルナ!」
という声と同時に、ドゴォン!!というすさまじい音がした。
以前サチュルヌが雷を落とした場所で、メルキュールとマルスはノーヴァと向き合っていた。
男女別で分かれる授業のあと、メルキュールがノーヴァに声をかけ、この場所に連れて来たのだ。
本来なら、こんなことはしたくなかった。
まっとうな方法で、正々堂々と勝負し、この男に勝ちたかった。
しかし、最近学院でひそやかに囁かれている噂を耳にしてしまい、時間をかけることが出来なくなってしまった。
(一刻も早く、この男とアース家の娘を退けなければならない!)
ーー殿下と、サチュルヌ嬢のためにーー
「重ねて言う。サチュルヌ嬢に、近づくな」
2人がかりでエトワール子爵令息に詰めよる。
自分はともかく、体格のいいマルスはかなりの圧だろうに、エトワール子爵令息は飄々としていた。
チラリとこちらに視線を向け、
「発言をしても?」
と悪びれもなく言ってくる。
こちらが目線で頷けば、
「それは、俺やアンタが決めることじゃない」
飄々とした態度とは裏腹に、ひどく真摯な目をしてヤツは言った。
「なっ、なんだと⁉︎」
「誰と付き合うかは、本人たちが決めるべきで、外野がとやかく言うことではない。と申し上げたのですよ」
打って変わってこちらを小バカにしたような慇懃な態度である。
「貴様、何様のつもりだ⁉︎」
1つ年下であるマルスは、入学式での一件を知らない。そのため、ヤツの無礼な態度に驚いていた。今にもヤツに食ってかかりそうな勢いである。
自分も似たようなものであったが。
明らかに怒りをにじませた我々の様子に気づかないわけもないのに、相変わらずヤツは涼しい顔をしている。
「いい魔法士になれると思うよ。彼女」
「…っ!!!なにを…」
心臓をわしづかみにされたような衝撃だった。
なぜ知っているのかは分からない。けれど、ヤツは知っているのだ。
「強くて優しい、いい魔法士になると思う。訓練は必要だろうけど」
静かな、しかし、強い光を宿した目でヤツがこちらを見ている。
「な、なにを…」
「あの魔力量だ。まともに訓練できてないんだろう?そもそもあの魔力を受けていなせる魔法士なんて、いないんじゃないか?」
こんなヤツの言うことを真剣に聞いてはいけない。だが、ヤツの指摘はまごうことなき事実だった。
ーー私より、殿下よりはるかに高い魔力を持つサチュルヌ嬢。
この国に、彼女を指導・訓練することのできる魔法士はいないのだ。
サチュルヌ嬢には伝えていないが、殿下やサチュルヌ嬢の兄ヴェルソー様、そして私。各々の両親までも巻き込んで、我々は密かにサチュルヌ嬢を導くことのできる魔法士を探していた。
しかし、王と王妃、公爵夫妻と宰相夫妻の人脈を持ってしても、国内に彼女を任せられる魔法士は見つけられなかったのだ。
頭の中に警戒信号がともる。
ーーーキケンキケンキケンーーー
ーーーコノオトコハ、キケンーーー
ーーコイツらをサチュルヌ嬢に近づけてはならないーー
(ーー絶対に!!ーー)
「どこで何を知ったかは知らないが、口で言って聞かぬのなら、力ずくで退かせるまで」
そう言うと、空中に魔法陣を展開させる。威嚇の意味も込めて。隣では、マルスが剣を抜いている。訓練用のものではあるが。
「マジか」
それを見てそれほど焦った様子もなく、ヤツは頭をポリポリかいていた。
その姿にカッとなる。
(なんだ!その態度は!!)
瞬間、2つ展開させた魔法陣のうちの1つが紅く輝き、ノーヴァの足元で火球が弾けた。
ノーヴァの足元の地面は鋭くえぐれている。
「次は本気で当てる」
本気の怒気を目に込めて、ヤツを睨んだ。
ーーにもかかわらず。
「あー…マジかぁ。そうくるわけねー。どうしたもんかなー」
苦笑いしながらこちらを見ている。
「ふざけているのか⁉︎次は、本気で当てると言っている!」
「いや、それは分かってるんだけど。どうしたもんかなぁと思いまして」
バカにしているとしか思えないほどのほほんした態度で、ヤツは本当に困ったような顔をしていた。
「警告はした。貴様は、どうせやれはしないとタカをくくっているかもしれないが、多少のケガは自業自得!」
言うと同時に、2つの魔法陣が黄色と紅に輝き、電流をまとった火球がノーヴァに迫る。
そのとき、
「なにやってんのよ!!!」
という声とともに、小柄な人影がノーヴァとメルキュールの間に立ち塞がった。
「っ!ルナ!」
という声と同時に、ドゴォン!!というすさまじい音がした。
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