最強賢者、ヒヨコに転生する。~最弱種族に転生してもやっぱり最強~

深園 彩月

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23. ヒヨコ、旅立つ

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 少しずつ旅支度を整えていたある日。
 弟2号が思案顔で俺の元に訪れた。

「兄さん、少しいいかな?」

「どうした?」

「忙しいところをごめんね。ちょっと教えてほしいことがあるんだけど」

 他の子達は勉強していたり家事の手伝いをしていたり畑の様子を見たりと皆バラバラに行動している。
 俺が旅立つにあたって魔法を特訓する時間を削らなければいけなくなり、その間は自由時間になったのだ。
 自由時間だからと遊び呆けるだけではなく、きちんと自分の将来のため、家族のために行動している弟妹達。兄として誇らしい。

「兄さん、いつも獣や魔石を魔法で仕舞ってるよね?」

「異空間収納魔法のことか」

「それを教えてほしいんだ」

 異空間収納魔法は今のとこ俺しか使えない。
 この魔法はちょっと特殊で、使える者はわりとあっさり習得できるが使えない者は一生使えない。
 才能に左右される魔法なのだ。だから教えていなかった。

 だが俺がここを出ていった後、仕留めた獣を保管するのに苦労するはずだ。
 獣は全て俺の異空間収納魔法の中にある。異空間収納魔法なら時間停止して劣化しないからな。
 俺がいなくなったら獣を保管できる者が誰もいない。
 一応氷室は作っておいたが、あまり質が良くない。使用した魔石がゴブリンなどの低級魔物だから長く保存はできないだろう。

 先に述べたように才能に左右される魔法なので全員習得できるかは分からない。とりあえず手始めに弟2号に教えて、駄目なら他の子に教えるか。
 最悪一人だけでも習得できれば俺がいなくなっても食料の保管は問題ない。

「これは今まで教えた魔法みたいに努力したからって習得できるもんじゃない。もし使えなくても気に病むなよ」

「うん、わかった」


 その日から自由時間に弟2号に異空間収納魔法のコツを紐解いてあげることになった。といっても口頭で説明しづらいので実践しながらだが。

 弟2号は才能があったようで、翌日には習得できた。

 俺がいなくなった後に他の子達にも教えるように伝え、旅支度も整い、あっという間に旅立ちの日を迎えた。


「うぅ……早すぎるだろぉぉぉ……」

「あなた。子供達の前でみっともないわよ」

 号泣する父、にこやかに諌める母。

「にいに!次会うときまでにはにいによりも強くなってみせるからね!それまで誰にも負けないでね!」

「兄さんに教わったことは絶対忘れないよ。頭の中が筋肉でできてる1号兄さんに代わって僕が家族の面倒見るから、心配しないで」

「お兄ちゃんもブルーも元気でね!」

 弟1号と2号、それに妹1号の言葉に突き動かされて次々と旅立ちのエールを贈ってくれる弟妹達。

「苦労するだろうが、目一杯楽しんでこい」

「いってらっしゃいませ、フィード様。ご武運を」

 ひらひらと軽い調子で手を振るウルティア男爵と丁寧にお辞儀する執事。

 全員見送りに来てくれたひと達だ。
 こうして見ると壮観だな。40匹の小雛と鶏2羽、領主と執事って。……ん?

「母よ。なんだか増えてないか?」

 小雛40匹の後ろに20匹前後のヒヨコがいる。いつの間に増えたんだ兄弟。

「うふふ、ノンバード族は繁殖力だけが取り柄だもの~。目指せ、メルティアス家100匹!なんてね」

「…………冗談だよな?」

「あらあら、うふふ」

 笑って誤魔化された。
 俺がいつかこの村に帰って来たときに何百匹ものノンバード族に出迎えられる未来が頭を過る。

 ……うん。考えないようにしよう。
 兄弟が増えるのは喜ばしいことだ。

「荷物がないと、とても旅立つようには見えねぇな」

 パッと見は手ぶらに見えるが、荷物は全て異空間収納魔法に入れてある。

 ぽよんぽよんと元気に跳ねるブルーの隣で咳払いをひとつ。

「あー、その。皆、忙しい中見送りに来てくれてありがとう。正直、こういうときにどんなことを言えばいいのか分からない。しんみりお別れってのも性に合わないので、普通に挨拶させてくれ」

 前世では一人で黙々と作業することが多く、人との関わりなんて希薄だった。そのため別れ際になんと声をかければいいのか分からない。

 だから、

「いってきます」

 弟妹達と山へ魔法特訓に行くときや、レアポーク領にボールを迎えに行くときと同じ声のトーンで背を向けて歩きだした。

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