最強賢者、ヒヨコに転生する。~最弱種族に転生してもやっぱり最強~

深園 彩月

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46. お留守番

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「ありがとう、フィード君。色々と驚かされたが、老体には大助かりだよ。大事に使わせてもらうね」

 喜んでくれて何よりだ。

 早速魔力を流して性能確認してみたグレイルさんが「ほぉ……!これは……」と感嘆の声を漏らす。

「フィード君、これを量産することは可能かい?」

「ええ。元々販売するつもりでしたし。いずれ商会を立ち上げるつもりですが、今はそんな余裕ないのでグレイルさんの店に卸して委託販売しようかと」

「それは有り難い。しかし、商会を立ち上げる気だとは思わなかったよ。てっきり研究と生産に情熱を注ぐものとばかり……」

 グレイルさんの言う通り、当初は研究だけに没頭するつもりだった。が、しかし。そうも言っていられないのだ。

 今はグレイルさんの店の魔道具改良でそれなり以上の収入を得ているが、ずっとという訳にはいかない。

 素材採取のために自ら魔物討伐に赴くことはあるがあくまで素材採取だ。魔物の素材を売って生活する冒険者などなるつもりはない。そのまま売るくらいなら自分で加工したいのが本音。

 どこかに雇ってもらおうにもノンバード族というだけでまともに取り合ってもらえないのだ、望み薄だろう。
 となると稼ぐには自分で作った物を売るしかない。

 しかし商会を作るには色々と面倒なのだ。
 まず商業ギルドに登録しなければいけない。
 委託販売でも商業ギルドの登録は必須だが、商会設立には3人以上の推薦状と保証人が必要だ。
 推薦状は貴族や大商人などの有力者でないと駄目だし、しかも貴族なら子爵以上に限定される。そして保証人も同じく子爵以上の貴族のみ。

 なぜ男爵以下は駄目なのか、それは子爵以上の家の方がそれなりに長い歴史を持つからだ。
 長い歴史、王国に仕えている。国に忠誠を誓っている。それだけである程度は信用できる。
 歴史ある貴族とはすなわち国の上層部に信頼されている証でもあるからな。

 さてここで問題だ。
 俺の知り合いの貴族はウルティア男爵とレアポーク男爵、そしてここの領主・アネスタ辺境伯の3人だ。

 これで推薦状を3つ取れるか?
 断じて否。不可能である。

 賢者を崇拝してるアネスタ辺境伯なら喜んで推薦状を書いてくれるし、なんなら保証人にもなってくれるだろう。
 だが子爵より下の男爵2人は推薦状を書けない。
 推薦状と保証人が同じ人物だと違反になるし、子爵以上の知り合いはアネスタ辺境伯だけなので、商会設立の条件を満たせないのだ。

 支店を持つほどの凄い商人のグレイルさんも推薦状を書いてくれるかもしれないが、まだ足りない。冒険者ギルドのマスターも推薦状を書ける地位にいるのだが、それでもまだ足りない。
 人脈がないのだ。悲しいことに。

 だから当面は委託販売で収入を得よう。
 委託販売だけなら商業ギルドにランクと商品の登録するだけで済むしな。
 人脈作りはいずれまた。今すぐにやらねばならないほど切迫した状況でもないし。

「では近いうちに商業ギルドに行きますね」

「ああ、よろしく頼むよ」

 魔導クッションは委託販売する方向で話が纏まった。


      ◇   ◇   ◇


「グレイル様、忘れ物はないっすか?」

「何度聞けば気が済むんだい……」

「離れるのが寂しいんですよ」

「うう……早く帰ってきて下さいね」

「ヴォルクリン、アンリーシュまで……」

 早朝。

 俺達はグレイルさんを見送りに来ていた。

 いつぞやのオーク集団のせいで行けなかったウルティア領への行商に行くためだ。

 護衛はあのときと同じ三人組のDランクパーティー。
 魔物の群れを討伐したあとの土地は基本穏やかな様相を見せるので、おそらく魔物とはあまり遭遇しない。護衛のランクが低くても安心できるというものだ。

「ほんの7日ほど留守にするだけなのに、大袈裟だね」

「それだけグレイルさんと離れたくないんでしょう。大切にされてる証拠ですよ」

「それは分かってるんだがね……」

 飼い主に捨てられた犬のような顔で自身を囲む部下達に困り顔のグレイルさん。
 毎回こんなだと行きづらい、そう顔に書いてあった。

 見送りに来たのは俺、ブルー、レジータ、ヴォルクリン、今回初対面のアンリーシュという人間だ。

 リーバー商会アネスタ支部で活動するグレイルさん直属の部下はこの三人だけ。
 支部とはいえ、大きな商会という割りに従業員の数が少ないことに僅かばかり驚いた。

「グレイルさん。できれば家族に俺は元気でやってるって伝えておいてほしいんですが……」

「了解した。けどいいのかい?里帰りしなくて」

「盛大にお別れしたのにほんの一月足らずで里帰りとか笑えませんよ」

 グレイルさんには家族への伝言を頼んだ。
 弟妹達、元気にしてるかな。

「あの、グレイル様。そろそろ……」

 御者を務める冒険者が躊躇いがちに声をかけ、しばしの別れの時間が訪れる。
 いつまでもくよくよしていたらグレイルさんが気持ちよく行商に行けないからと彼を引き留めるのをやめた面々。
 グレイルさんいわく、自分が行商に行くときはここまでがワンセットだそうだ。

「おやすまない、もう門が開く時間だね。じゃあ行ってくるよ」

 いつもと変わらぬ朗らかな笑みを称えながら、グレイルさんはウルティア領へと馬車を走らせた。

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