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65. 全員来るらしい
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俺に気づいた受付のリス獣人が一瞬目を見開く。が、すぐに営業スマイルで誤魔化した。
「ようこそお越し下さいました賢者様。本日は商品の登録ではなく、物件探しでよろしいですか」
「はい、今日は物件を探しに来ました。……その賢者様ってのは止めて下さい」
「失礼致しました、フィード様」
ここの窓口は初めてだが、商品登録で何度もステータスカードを見せているので、そこから話が漏れたのだろう。
どう足掻いても俺が賢者であることはバレるので、情報拡散されてもスルーすることにした。
でも賢者呼びは止めて下さい。むず痒いので。
アネスタ辺境伯と違ってちゃんと名前で呼んでくれたリス獣人に内心ホッとしつつ用件を伝える。
金額は上限なし、間取り希望もなし、内装が広く街の中心から離れていることを条件に絞るといくつかの資料が出て来た。
レインに聞いた話では実家の兄弟達は喧嘩が多く、のちに魔法合戦に発展して家を大破することもあるとのこと。
魔法を使える血気盛んな子達が街中に引っ越したら瞬く間に怪獣大戦争の勃発だ。建物の破壊だけならまだしも、怪我人が出る恐れがある。それは避けたい。
なので近隣のご迷惑にならぬよう街外れに居を構えようという訳だ。
「兄さん、僕も混ぜてよ」
いくつかの資料を見ながら唸っていると、いつの間にギルドに来たのかレインがカウンターに飛び乗って俺の隣へ移動。
俺より一回り大きいレインが俺にぴったり寄り添う。
資料を見るのにそんなにくっつく必要なくね?と思ったが、外が寒いから引っ付いて暖をとってるのかな。
「レインまで来るとは思わなかった」
「兄さんを追いかけてきたの。セルザはまた値切り交渉してたみたいだね」
「知ってたのか?」
「この街で起こった出来事ならだいたい把握してるよ。ルルエル商会が闇ギルドと取引してることとか、西の酒場で闇商人の集会が定期的に行われていることとか、スラム街に連続殺人鬼が潜伏してることとか」
ちょっと待って。裏の事情に精通してるとか兄ちゃん知らないぞ?
「あんまり危険に首突っ込むなよ?」
「大丈夫。アネスタ辺境伯様に証拠と情報流してなんとかしてもらってるから」
アネスタ辺境伯と知り合いなの!?お前いつの間に!
「そのせいかな?最近事件が起こると僕に情報提供を求めてくる兵士がいるんだよね。お金貰えるからいいけど」
情報屋扱いされてる!お前ホントいつの間に!!
「……嫌なら兄ちゃんが止めようか?」
「それには及ばないよ。街の安全のためだもん。不穏分子をとっとと排除すれば、いずれここに来る家族も安心して暮らせるもんね」
ふわりと浮かべる天使の微笑み。
うちの弟が可愛すぎる……じゃなくて、なんか今背筋に悪寒が走ったんだが?この子はいったい何を目指してるんだろうか。
レインの将来が僅かに不安になりつつも再び資料に視線を滑らせると、レインも同じく資料へと目を向けた。
「んー……家族全員が住むには手狭だね」
ざっと目を通したあと、小さくため息を吐いてぽつりと溢すレインに呆気にとられる。
言葉の端々から不穏な気配を漂わせていたレインに見た目の可愛さとのギャップで目を白黒させ、次第に顔色が悪くなっていたリス獣人も目を見開いた。
「え?全員来るのか?」
「そりゃあね。だってここに来るときも誰が出稼ぎに行くかでかなり揉めたもん。家が吹っ飛んでクレーターができて母さんの雷が落ちて最終的に年長者4人に決まったけど、全員来たがってたよ。食糧確保が目的だから下の子達は論外だけど、兄さん直々に魔法を教えてもらった面子の熾烈な戦いは控えめに言っても凄かったなぁ」
なんとも実感のこもった声色でしみじみと言うレイン。
お前も熾烈な戦いに参戦してたんだな……
「大分寒くなってきたし、改良版ドラゴン温卓を届けるついでにこっちに来ないか誘ってみるつもり。引っ越しは春先になるだろうけどね」
近日中にもう一度ウルティア領に行商に行くグレイルさんに同行して必要な物資を届ける予定。同行するのはレインのみ。4人の中で収納魔法が使えるのはレインだけだからな。
実家の方には何人か収納魔法使える子がいるみたいだけど。
レインと話し合った結果、とりあえず建物込みの土地を購入すれば当面自分達が暮らす分には問題ない、家族が引っ越してくるまでに建築に着手すれば余裕で間に合うという結論に至った。
春先までにまた兄弟が増えるのを見越して、できるだけ広い土地を購入。
当然子供だけでは家を買えないので、後日時間が空いたグレイルさんに保証人になってもらった。
申し訳ないが、こればっかりはどうしようもない。だって俺達子供だもん。
初めて俺が甘えたからか、グレイルさんが俺を膝の上に乗せて終始ご機嫌だった。ギルド職員がざわついた。
なんかグレイルさん結構有名人だったみたいで、ギルドに一緒に入ったらあれよあれよという間に応接室に案内されたんだよな。対応してくれたのも職員じゃなくて商業ギルドのマスターだったし。
「グレイル様が保証人とは……はは、鬼に金棒ですな……」
ギルマスが乾いた笑いを溢しながらそんなことを言っていたが……どういう意味だろう?
グレイルさんは静かに微笑むだけで何も言わないし。
何はともあれ、家を購入できて良かった。
土地を買うというだけあってちょっと痛い出費だったが……必要経費だと思っておこう。
「ようこそお越し下さいました賢者様。本日は商品の登録ではなく、物件探しでよろしいですか」
「はい、今日は物件を探しに来ました。……その賢者様ってのは止めて下さい」
「失礼致しました、フィード様」
ここの窓口は初めてだが、商品登録で何度もステータスカードを見せているので、そこから話が漏れたのだろう。
どう足掻いても俺が賢者であることはバレるので、情報拡散されてもスルーすることにした。
でも賢者呼びは止めて下さい。むず痒いので。
アネスタ辺境伯と違ってちゃんと名前で呼んでくれたリス獣人に内心ホッとしつつ用件を伝える。
金額は上限なし、間取り希望もなし、内装が広く街の中心から離れていることを条件に絞るといくつかの資料が出て来た。
レインに聞いた話では実家の兄弟達は喧嘩が多く、のちに魔法合戦に発展して家を大破することもあるとのこと。
魔法を使える血気盛んな子達が街中に引っ越したら瞬く間に怪獣大戦争の勃発だ。建物の破壊だけならまだしも、怪我人が出る恐れがある。それは避けたい。
なので近隣のご迷惑にならぬよう街外れに居を構えようという訳だ。
「兄さん、僕も混ぜてよ」
いくつかの資料を見ながら唸っていると、いつの間にギルドに来たのかレインがカウンターに飛び乗って俺の隣へ移動。
俺より一回り大きいレインが俺にぴったり寄り添う。
資料を見るのにそんなにくっつく必要なくね?と思ったが、外が寒いから引っ付いて暖をとってるのかな。
「レインまで来るとは思わなかった」
「兄さんを追いかけてきたの。セルザはまた値切り交渉してたみたいだね」
「知ってたのか?」
「この街で起こった出来事ならだいたい把握してるよ。ルルエル商会が闇ギルドと取引してることとか、西の酒場で闇商人の集会が定期的に行われていることとか、スラム街に連続殺人鬼が潜伏してることとか」
ちょっと待って。裏の事情に精通してるとか兄ちゃん知らないぞ?
「あんまり危険に首突っ込むなよ?」
「大丈夫。アネスタ辺境伯様に証拠と情報流してなんとかしてもらってるから」
アネスタ辺境伯と知り合いなの!?お前いつの間に!
「そのせいかな?最近事件が起こると僕に情報提供を求めてくる兵士がいるんだよね。お金貰えるからいいけど」
情報屋扱いされてる!お前ホントいつの間に!!
「……嫌なら兄ちゃんが止めようか?」
「それには及ばないよ。街の安全のためだもん。不穏分子をとっとと排除すれば、いずれここに来る家族も安心して暮らせるもんね」
ふわりと浮かべる天使の微笑み。
うちの弟が可愛すぎる……じゃなくて、なんか今背筋に悪寒が走ったんだが?この子はいったい何を目指してるんだろうか。
レインの将来が僅かに不安になりつつも再び資料に視線を滑らせると、レインも同じく資料へと目を向けた。
「んー……家族全員が住むには手狭だね」
ざっと目を通したあと、小さくため息を吐いてぽつりと溢すレインに呆気にとられる。
言葉の端々から不穏な気配を漂わせていたレインに見た目の可愛さとのギャップで目を白黒させ、次第に顔色が悪くなっていたリス獣人も目を見開いた。
「え?全員来るのか?」
「そりゃあね。だってここに来るときも誰が出稼ぎに行くかでかなり揉めたもん。家が吹っ飛んでクレーターができて母さんの雷が落ちて最終的に年長者4人に決まったけど、全員来たがってたよ。食糧確保が目的だから下の子達は論外だけど、兄さん直々に魔法を教えてもらった面子の熾烈な戦いは控えめに言っても凄かったなぁ」
なんとも実感のこもった声色でしみじみと言うレイン。
お前も熾烈な戦いに参戦してたんだな……
「大分寒くなってきたし、改良版ドラゴン温卓を届けるついでにこっちに来ないか誘ってみるつもり。引っ越しは春先になるだろうけどね」
近日中にもう一度ウルティア領に行商に行くグレイルさんに同行して必要な物資を届ける予定。同行するのはレインのみ。4人の中で収納魔法が使えるのはレインだけだからな。
実家の方には何人か収納魔法使える子がいるみたいだけど。
レインと話し合った結果、とりあえず建物込みの土地を購入すれば当面自分達が暮らす分には問題ない、家族が引っ越してくるまでに建築に着手すれば余裕で間に合うという結論に至った。
春先までにまた兄弟が増えるのを見越して、できるだけ広い土地を購入。
当然子供だけでは家を買えないので、後日時間が空いたグレイルさんに保証人になってもらった。
申し訳ないが、こればっかりはどうしようもない。だって俺達子供だもん。
初めて俺が甘えたからか、グレイルさんが俺を膝の上に乗せて終始ご機嫌だった。ギルド職員がざわついた。
なんかグレイルさん結構有名人だったみたいで、ギルドに一緒に入ったらあれよあれよという間に応接室に案内されたんだよな。対応してくれたのも職員じゃなくて商業ギルドのマスターだったし。
「グレイル様が保証人とは……はは、鬼に金棒ですな……」
ギルマスが乾いた笑いを溢しながらそんなことを言っていたが……どういう意味だろう?
グレイルさんは静かに微笑むだけで何も言わないし。
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