最強賢者、ヒヨコに転生する。~最弱種族に転生してもやっぱり最強~

深園 彩月

文字の大きさ
80 / 122

79. 王都に着く前に一悶着

しおりを挟む
 アネスタを発ってから早7日。

 街に泊まるときは領主館、そうでないときは野宿。そうしてレグナムをはじめとするいくつかの街を通った。
 なんとなく予想してはいたが、やはりというか、行く先々でレグナムの門番と似たような対応をされた。
 さすがに通行料を違法に巻き上げるようなやつはいなかったけど、それでも気持ちのいい対応ではなかった。
 まぁステータスカード提示したらコロッと態度変えたけどな。

 態度が変わると言えば、街で領主館に泊まったときはちょっとした不思議現象が起きた。
 領主や使用人は俺とルファウスと、意味が分からないが何故かセレーナにもへりくだった態度を取っていたんだよ。
 逆に言えば、レルム達に対しては賢者である俺の身内だからってことで最低限の礼儀は弁えてたけど、陰口叩いたり、注意して見ないと気付けないほど些細な嫌がらせをしてたんだよ。
 レルム達は気付いてなさそう、というか気付いてもスルーしてそうだったから俺も何も言わなかった。

 だがしかし、驚いたことに翌朝には領主をはじめとする皆の態度が激変していた。
 俺とルファウスとセレーナにも匹敵するVIP待遇へと早変わりしたのだ。

 特にレインに対してが顕著だった。一介の平民と領地を持つ貴族のはずなのに、まるで裏社会を牛耳るボスと忠誠を誓った下僕のような雰囲気を醸し出していた。
 レグナムだけじゃない。泊まったところ全てだ。
 たった一晩の間に何があったというのか……
 どの街の領主も貴族流な言い回しでやたらとレインを持ち上げてたんだが。

 ……ちょっとレインさんや。開いた手帳にびっしり書かれた文章の中に物騒な単語が散りばめられてたのは見間違いかな?
 脳筋レルムに続いて腹黒レインまで行く末がかなり不安になってきた。い、いや。これも個性だ。お兄ちゃんはどんなお前達でも受け入れるぞ。

 のちに、『どんな阿呆でもすんなり覚えられるお勉強セット』と『読んだら皆良い子になる優しい物語』をそれぞれプレゼントした。


「昼過ぎには王都に着くぞ」

「わーい!都会だー!」

「ふにゃぁ、やっとだにゃ~……」

 窓の外を眺めつつルファウスが言うと、レルム達がはしゃぎだした。だがセレーナはテンション低め。遊び甲斐のある魔物が出てこなかったので退屈だったようだ。
 「着いたら起こしてにゃ~」と再び夢の世界に旅立つ黒猫。レルム達が騒がしくしてて結構うるさいのに、それでも寝れるって凄い。

「王都か……」

 流れ行く景色をぼんやり眺める。
 レルム達ほどではないが、俺も内心高揚していた。

 獣人王国と名高いエルヴィン王国、その都。
 国の都心部の周辺には垂涎ものの素材を有する魔物が沢山いる。それらを採取できると思うと心が踊る。
 嗚呼、もう冬に突入し始めているのに興奮して身体が熱い。

 皆で他愛なくおしゃべりしている最中、馬の嘶きと共に馬車ががくんっと揺れた。丸っこい雛鳥体型の俺とレルム達は危うく床にコロコロしそうになるも、どうにか踏み留まる。

「ふにゃぁ、なんなのにゃ~?」

 馬車が揺れた衝撃で頭を打ち付けたセレーナが頭を擦りながらのっそり起きた。

「と、盗賊です!」

 御者の声につられるように、急停止した馬車の周りをガラの悪い連中に取り囲まれる。人数はざっと20人弱ってところか。

「貴族の馬車とは運がいいな」

「護衛がいないなんて警備ザルすぎんだろ」

 獲物を見つけたとばかりににやにやと嫌らしい笑みを向けてくる男達。
 この馬車にはアネスタ辺境伯家の家紋が刻まれている。それで運悪く襲われたのだろう。この寒い中よくやるなぁと感心するべきか、このメンツに牙を剥いたことを憐れむべきか。

「やれやれ、面倒だな」

 俺とレルムとレインが対処することに決定。不安がって俺から離れないブルーを宥め、盗賊に襲われているまさにその最中だとは思えない緩い空気で馬車の外へ。
 なんで貴族の馬車からヒヨコが?という視線を寄越したのは数秒、すぐに爆笑の渦に飲み込まれた。
 「何かと思ったらお荷物種族じゃねぇか!」「しかもガキだぞ!」「貴族に胡麻するのが上手なんでちゅね~」と明らかに馬鹿にされている。
 久々だなぁ、こういうの。なんだか嫌悪感よりも懐かしさを覚える。

 戦闘狂なセレーナがつまらなそうに欠伸してたので他のやつらは参加しなくていいのかと聞いたら次の答えが返ってきた。

「素材にならないからー」

「対したお金にならないからー」

「遊び甲斐のないやつらにゃから~」

「過剰戦力になるとあっちが可哀想だろ」

 こらこら、もっとオブラートに包みなさい。全て事実だけど。

「くそガキどもが!」

「その言葉、後悔させてやらぁ!」

 無駄に神経を逆撫でしたせいで頭に血が上った男達が襲い掛かってきた。

「ひゃっほーい!悪いやつはやっつけちゃえー!」

 我先にとレルムが突撃。
 男達の足元を爆発させ、宙に浮いた男数人を炎の鎖で拘束する。拘束された方はあまりに一瞬の出来事で反応が遅れたが、脳の処理が追い付くよりも先に炎の鎖が全身に絡み付く。
 断末魔の悲鳴を上げながら自由落下し、男達は地面に叩きつけられた。
 「腕と足、どっちを抉り取ろうかなー」と鼻歌混じりに呟いている。馬鹿にされてちょっぴりお怒りなご様子。

「全く、馬鹿はこれだから困るよ」

 水を作り出し、それに火を加えて球状にしたものの中に男数人を閉じ込めるレイン。
 閉じ込められた男達は息ができない+全身が熱いので苦し気に悶えている。どうにか抜け出そうと必死だが、レインは温度を上げつつ水量を増やした。そして男達を熱球の中でぐるぐるシャッフル。終始笑顔、笑顔だけど、殺気が滲んでいる。……レインもお怒りだった。

「レルム、レイン。うっかり殺さないようにな」

 小雛2匹にいいように転がされたのを目の当たりにして狼狽えていた残りの奴らを纏めて動けなくする俺。
 そう難しいことではない。極少量の雷で身体を痺れさせただけだ。
 一秒にも満たない僅かな時間で地面に倒れ伏した面々。気絶させてはいない。
 奴らにとっては身体にピリッと電流が走ったと思ったらいきなり身体が言うこと聞かなくなって訳分かんねぇって感じだろう。

 20人ほどの盗賊を沈めるのに5秒もかからなかった。

「な、なんだよお前ら……!何しやがった!?」

「魔法を使っただけだが?」

 盗賊のリーダーっぽい男が吠える。
 ただ一言、事実のみを告げたら、一瞬呆けたあと真っ先に反論した。

「嘘だ!詠唱してなかったじゃねぇか!魔法には詳しくねぇが、詠唱すんのは知ってんだぞ!」

「ノンバード族って言やぁ魔力なしのクズだろーが!魔力もねぇくせに魔法だと?笑わせんな!」

「そうだそうだ!」

 リーダーっぽい男に追従して次々と吠える男達。

 この世界では魔法を使うときに詠唱するのが当たり前。詠唱も魔法名も唱えない俺達の方が異質なのだ。
 アネスタでは俺達が色々とやらかしてるので無詠唱魔法のことは知られてるけど、こいつらのこの反応の方が普通なのである。
 ボールの魔法を見てこの世界の魔法技術が遅れていると分かり、無詠唱魔法を広めようと決意したときのことを思い出す。

 ノンバード族のこと然り、他国のこと然り、問題は山積みだな。

しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...