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90. チートスライム、爆誕
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スライムと模擬戦したいというやつはいなかった。
当然だ。精鋭の騎士なんだから、最弱の魔物なんか相手するどころか視界にすら入れないだろう。
「では私が相手しよう」
ルファウスが前に出た。
「で、殿下!?」
「ルファウス殿下のお手を煩わせるくらいなら俺が……」
「あーいいのいいの。この人最近ふっくらしてきたからいい運動になるわー」
ふっくら……?体型は全く変わってないように見えるが……
「0.3キロ増えたっしょ。もー、実家の飯が旨いからって食いすぎだって」
「甘味の誘惑に勝てなかった」
え、何この犬。目測でそんな些細なことまで分かっちゃうの?ちょっと怖いんだけど。
ルファウスもまるでそれが当然のような態度だし。普通?これ普通のことなの?
「レストぉ!!殿下に対してそのような緩い口調で接するのは止めろとあれほど……っ!」
先程模擬戦をしていた狼獣人が食ってかかる。
ああ……狼って、忠誠心の塊だもんな。王族相手にレストのこの態度は我慢ならないと。
「そこまでにしとけ。殿下が気にしていらっしゃらないのだからいいだろう」
グラジオスさんが狼獣人を諌めた。
いいのか騎士団長。ここのトップがそんな緩くて。
聞いてみたところ、狼系の種族を筆頭に忠誠心の塊な種族以外は口調とか態度とかはわりと緩いらしい。
公式の場できちんとしてさえいればいいとの言葉は先代国王のもの。皆もっとフレンドリーになろうぜ!的な思考が筒抜けである。いいのか王族。国のトップがそんな緩くて。
まぁそれも半ば仕方ないことだと思うけど。
だってここは獣人王国。他国からすれば、毛嫌いする獣人がわんさかいて関わりたくもないけれど世界屈指の軍事力を誇るから無視もできない、敵対なんてもっての他、嫌々良好な関係を築かなくてはいけない厄介極まりない国だ。
自分らを快く思わない他国の連中が、進んでこの国と関係を持とうとするか?答えは否。
表向きは良好な関係だが、互いに不干渉を貫くのが暗黙の了解になっているのが実状だ。
そんなだから他国との交流はなく、他国を交えての大きな行事もなく……結果、必要以上に畏まらなくてもいい環境の出来上がりというわけだ。
おまけにこの国は何事も実力さえあれば多少のことには目を瞑る方針。そりゃこうなるわ。
「いいのか?」
気心知れたやつがブルーの相手をしてくれるのは助かるが、いいんだろうか。一応こいつ王子だし。
「私がやりたいと言っているのだから問題ない」
問題ないらしい。
「お前がやりたいなら止めないが、無理はするなよ?」
だいじょうぶだよー、とでも言うようにぽよんっと跳ねるブルー。
何か新たな挑戦をしようとしてるらしいが、それが何なのかは分からない。最弱の名は伊達ではないので、一発でもまともに攻撃をくらったらアウトだ。
一応寸止めしてくれるとのことだが、念のためいつでも結界を張れるようにしておこう。
騎士団の木剣を借りてブルーと対峙するルファウス。冷ややかな眼差しと服装がほぼ黒で統一されてるのも相まって、その姿はさながら死神のよう。
……あいつに刃物を持たせたらそういう感想しか出て来ないってどういうことだ。木剣なのに。
「はじめ!」
グラジオス団長の合図でブルー対ルファウス戦が始まった。
小手調べのつもりか、やや緩慢な動きで正面からブルーに斬りかかるルファウス。
ブルーは「やるぞー!」という感じにぷるぷるっと身震いしたものの、その場から動かない。
どうするのかとハラハラしながら見ていると、ブルーの目の前に術式が浮かんだ。みるみるうちに半透明な壁が構築され、そしてルファウスが振り下ろした剣を弾いた。
「なっ!?」
あれは……魔法!?スライムが魔法を使うなんて聞いたことないぞ!
本来魔法が使えない魔物が平然と魔法を使ったのを目の当たりにしてあんぐりと口を開けて唖然としている騎士達。グラジオス団長も似たような顔をしてたけど立ち直るのが誰よりも早かった。「私は夢でも見てるのか……?」と呆然と呟いたりしたけれど、苦汁を無理やり飲み下したような顔で直立不動の構えに。
レストはぴゅうっと口笛を吹いて「わーぉ、新発見ー」と愉快そうに目を細めて笑っている。
「いつの間に魔法を使えるようになったんだ……スライムの魔力量はルファウスとそこまで変わらなかったはず。ということは魔素か」
なんということだ……ルファウス以外でこんな身近に魔素を使えるやつがいたなんて……!
「ブルー!攻撃系の魔法は使えるか!?」
興奮気味に問うと、それに答えるように水球を作ってルファウスに向けて飛ばした。それを難なく避けるルファウス。
「防御系だけでなく攻撃系も使えるか!じゃあ属性はどうだ?」
ブルーは自信ありげにぷるんっと震えたあと、火球を浮かべ、風を巻き起こし、小ぶりな岩を飛ばし、小さな雷を落とし、淡い光を発生させ、その光を闇の中に閉じ込めた。
まさかの全属性!治癒魔法や身体強化などは分からないがそれはあとで検証するとして、これは素晴らしい発見だ!
限りある魔力ではなく無限の魔素を使っているので魔力切れを起こすことがないのはもちろんのこと、その気になれば大規模魔法も展開でき得るし、それに何より一緒に討伐に行ける!
いつもブルーだけ留守番させてしまって心苦しかったんだ。討伐に同行できるくらい実力をつけねば話にならないが……安心しろ、ブルー。俺がみっちり鍛えてやるからな。
「ふふ……ふふふふ……」
「やっべーよーフィードがぶっ壊れたー。ルファウス様なんとかしてよこのイカレヒヨコ」
「しばらく放っておけ。今のコレに下手に手を出すとぶちギレるから」
「我が騎士団に害が及ばぬよう、是非とも良い関係を築きたいものだ……相手がスライムかと思うと微妙な気分だが」
「スライムが……スライムが魔法を使った……」
「何この異常生命体……俺の知ってるブルースライムじゃない」
「つーか、あれ本当にブルースライム?魔法が使えるスライム種に進化したとかじゃねーの?」
最早模擬戦どころではなくなった雰囲気の中、魔法を使えてご満悦なブルーと、魔法検証や鍛練法などを頭に浮かべては不気味な笑いを溢す上機嫌な俺。
心なしか騎士達がドン引きしてる気がするけどそんなの知ったこっちゃない。
結局ブルー対ルファウス戦は勝敗がうやむやになり、ブルーの魔法と俺の暴走によってその日の見学会は幕を閉じた。
尚、レスト発案の王子プチダイエット計画は発案者が直々に鍛練の相手をすることで決着がついた。
「あまり年寄りを苛めてくれるな……」
「筋肉痛早く治るといいねー」
当然だ。精鋭の騎士なんだから、最弱の魔物なんか相手するどころか視界にすら入れないだろう。
「では私が相手しよう」
ルファウスが前に出た。
「で、殿下!?」
「ルファウス殿下のお手を煩わせるくらいなら俺が……」
「あーいいのいいの。この人最近ふっくらしてきたからいい運動になるわー」
ふっくら……?体型は全く変わってないように見えるが……
「0.3キロ増えたっしょ。もー、実家の飯が旨いからって食いすぎだって」
「甘味の誘惑に勝てなかった」
え、何この犬。目測でそんな些細なことまで分かっちゃうの?ちょっと怖いんだけど。
ルファウスもまるでそれが当然のような態度だし。普通?これ普通のことなの?
「レストぉ!!殿下に対してそのような緩い口調で接するのは止めろとあれほど……っ!」
先程模擬戦をしていた狼獣人が食ってかかる。
ああ……狼って、忠誠心の塊だもんな。王族相手にレストのこの態度は我慢ならないと。
「そこまでにしとけ。殿下が気にしていらっしゃらないのだからいいだろう」
グラジオスさんが狼獣人を諌めた。
いいのか騎士団長。ここのトップがそんな緩くて。
聞いてみたところ、狼系の種族を筆頭に忠誠心の塊な種族以外は口調とか態度とかはわりと緩いらしい。
公式の場できちんとしてさえいればいいとの言葉は先代国王のもの。皆もっとフレンドリーになろうぜ!的な思考が筒抜けである。いいのか王族。国のトップがそんな緩くて。
まぁそれも半ば仕方ないことだと思うけど。
だってここは獣人王国。他国からすれば、毛嫌いする獣人がわんさかいて関わりたくもないけれど世界屈指の軍事力を誇るから無視もできない、敵対なんてもっての他、嫌々良好な関係を築かなくてはいけない厄介極まりない国だ。
自分らを快く思わない他国の連中が、進んでこの国と関係を持とうとするか?答えは否。
表向きは良好な関係だが、互いに不干渉を貫くのが暗黙の了解になっているのが実状だ。
そんなだから他国との交流はなく、他国を交えての大きな行事もなく……結果、必要以上に畏まらなくてもいい環境の出来上がりというわけだ。
おまけにこの国は何事も実力さえあれば多少のことには目を瞑る方針。そりゃこうなるわ。
「いいのか?」
気心知れたやつがブルーの相手をしてくれるのは助かるが、いいんだろうか。一応こいつ王子だし。
「私がやりたいと言っているのだから問題ない」
問題ないらしい。
「お前がやりたいなら止めないが、無理はするなよ?」
だいじょうぶだよー、とでも言うようにぽよんっと跳ねるブルー。
何か新たな挑戦をしようとしてるらしいが、それが何なのかは分からない。最弱の名は伊達ではないので、一発でもまともに攻撃をくらったらアウトだ。
一応寸止めしてくれるとのことだが、念のためいつでも結界を張れるようにしておこう。
騎士団の木剣を借りてブルーと対峙するルファウス。冷ややかな眼差しと服装がほぼ黒で統一されてるのも相まって、その姿はさながら死神のよう。
……あいつに刃物を持たせたらそういう感想しか出て来ないってどういうことだ。木剣なのに。
「はじめ!」
グラジオス団長の合図でブルー対ルファウス戦が始まった。
小手調べのつもりか、やや緩慢な動きで正面からブルーに斬りかかるルファウス。
ブルーは「やるぞー!」という感じにぷるぷるっと身震いしたものの、その場から動かない。
どうするのかとハラハラしながら見ていると、ブルーの目の前に術式が浮かんだ。みるみるうちに半透明な壁が構築され、そしてルファウスが振り下ろした剣を弾いた。
「なっ!?」
あれは……魔法!?スライムが魔法を使うなんて聞いたことないぞ!
本来魔法が使えない魔物が平然と魔法を使ったのを目の当たりにしてあんぐりと口を開けて唖然としている騎士達。グラジオス団長も似たような顔をしてたけど立ち直るのが誰よりも早かった。「私は夢でも見てるのか……?」と呆然と呟いたりしたけれど、苦汁を無理やり飲み下したような顔で直立不動の構えに。
レストはぴゅうっと口笛を吹いて「わーぉ、新発見ー」と愉快そうに目を細めて笑っている。
「いつの間に魔法を使えるようになったんだ……スライムの魔力量はルファウスとそこまで変わらなかったはず。ということは魔素か」
なんということだ……ルファウス以外でこんな身近に魔素を使えるやつがいたなんて……!
「ブルー!攻撃系の魔法は使えるか!?」
興奮気味に問うと、それに答えるように水球を作ってルファウスに向けて飛ばした。それを難なく避けるルファウス。
「防御系だけでなく攻撃系も使えるか!じゃあ属性はどうだ?」
ブルーは自信ありげにぷるんっと震えたあと、火球を浮かべ、風を巻き起こし、小ぶりな岩を飛ばし、小さな雷を落とし、淡い光を発生させ、その光を闇の中に閉じ込めた。
まさかの全属性!治癒魔法や身体強化などは分からないがそれはあとで検証するとして、これは素晴らしい発見だ!
限りある魔力ではなく無限の魔素を使っているので魔力切れを起こすことがないのはもちろんのこと、その気になれば大規模魔法も展開でき得るし、それに何より一緒に討伐に行ける!
いつもブルーだけ留守番させてしまって心苦しかったんだ。討伐に同行できるくらい実力をつけねば話にならないが……安心しろ、ブルー。俺がみっちり鍛えてやるからな。
「ふふ……ふふふふ……」
「やっべーよーフィードがぶっ壊れたー。ルファウス様なんとかしてよこのイカレヒヨコ」
「しばらく放っておけ。今のコレに下手に手を出すとぶちギレるから」
「我が騎士団に害が及ばぬよう、是非とも良い関係を築きたいものだ……相手がスライムかと思うと微妙な気分だが」
「スライムが……スライムが魔法を使った……」
「何この異常生命体……俺の知ってるブルースライムじゃない」
「つーか、あれ本当にブルースライム?魔法が使えるスライム種に進化したとかじゃねーの?」
最早模擬戦どころではなくなった雰囲気の中、魔法を使えてご満悦なブルーと、魔法検証や鍛練法などを頭に浮かべては不気味な笑いを溢す上機嫌な俺。
心なしか騎士達がドン引きしてる気がするけどそんなの知ったこっちゃない。
結局ブルー対ルファウス戦は勝敗がうやむやになり、ブルーの魔法と俺の暴走によってその日の見学会は幕を閉じた。
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