23 / 46
第一部・第二章:出会いと再会は突然に
23
しおりを挟む
「お前はどこのクラスだ?すぐにでも行っていいか?」
「良い訳あるか!なんで来るんだよ!?」
「生活を覗けば何かお前の特異体質につながるヒントを得られるかと思って」
「特異体質じゃない!俺はいたって普通の人間だ!!それに第一、編入してきたばかりで自分のクラスまだ知らないんだよ!」
理事長が教えてくれなかったから分からず終いだったんだよ!
「そうか……わかり次第直ちに僕に知らせてくれ、いつもここで修行してるから」
「なにその異常な執着心……てか、いつも修行してる?授業は?」
「諸々の事情でサボってる」
ぴしゃりと言い放たれた言葉に、あのときの理事長の困った顔が浮かぶ。
……こいつだったのか。
いつも授業サボってる問題児って。
「……なんで修行してんの?」
こみ上げてくる怒りに似たよくわからない感情を抑えつつ聞いた。
どんな事情かは知らないし、出会ったばっかで詮索するのもアレだから深くは突っ込まないけどさ。授業サボってまでこいつは何がしたいんだ?
俺の言葉が南雲の耳に届いたとたん、スゥッと瞳から光が消えた。さっきまであんなに興奮してたのに、急にここまで豹変するとちょっとびっくりするな。
その瞳に光は宿っておらず、でもどこか悲しんでいるように感じたのは俺の気のせいなのかな。
やがて南雲はゆっくり口を開いた。
「強くならなきゃいけないから」
ならなきゃいけない……?
なりたい、じゃなくて?
顔を見上げてまっすぐ見つめれば、固い決意を思わせる熱のこもった漆黒の瞳と視線が合わさった。
「僕には力が足りない。なんとしてでも強くならなくちゃいけないんだ」
少し焦った声。余程切羽詰まってるということか。
焦った末に授業を放棄し、こんな誰も来なさそうな辺鄙な場所で1人術の練習をしていたってところか?
それなら頷けなくもない。
…………が。
「理由がなんであれ、授業を放棄するのは良くないだろ」
出会い頭から強烈なキャラを見せつけてきたあの理事長が困り顔を見せるなんて、よっぽどのことだろう。いや、まだこの学園のことも理事長のこともよく知らない俺が言える立場ではないのだが。
「……真面目なんだな、君は」
「そんなことない。だけど、さっき理事長がお前が授業に出ないって困った顔してたからほっとけないんだ」
「ふぅん、会ったばかりの人間をほっとけないなんて、お人好しなんだな。ともかく僕は時間を有効活用したいから授業なんかには出ない」
どうやら授業に出る気はサラサラないらしい。何故そこまで………
なおも食い下がる俺を見てふぅ、と一息ついて話し出す。
「そもそも、この学園に入学したのだって僕の意思じゃない。周りの大人達が勝手に決めたこと。僕の生活態度に口出ししないことを条件に入学してやったんだ、自由まで奪われたくない」
その瞳には悲痛な思いが滲んでいて。
俺はそれ以上説得する勇気を持てなかった。
「良い訳あるか!なんで来るんだよ!?」
「生活を覗けば何かお前の特異体質につながるヒントを得られるかと思って」
「特異体質じゃない!俺はいたって普通の人間だ!!それに第一、編入してきたばかりで自分のクラスまだ知らないんだよ!」
理事長が教えてくれなかったから分からず終いだったんだよ!
「そうか……わかり次第直ちに僕に知らせてくれ、いつもここで修行してるから」
「なにその異常な執着心……てか、いつも修行してる?授業は?」
「諸々の事情でサボってる」
ぴしゃりと言い放たれた言葉に、あのときの理事長の困った顔が浮かぶ。
……こいつだったのか。
いつも授業サボってる問題児って。
「……なんで修行してんの?」
こみ上げてくる怒りに似たよくわからない感情を抑えつつ聞いた。
どんな事情かは知らないし、出会ったばっかで詮索するのもアレだから深くは突っ込まないけどさ。授業サボってまでこいつは何がしたいんだ?
俺の言葉が南雲の耳に届いたとたん、スゥッと瞳から光が消えた。さっきまであんなに興奮してたのに、急にここまで豹変するとちょっとびっくりするな。
その瞳に光は宿っておらず、でもどこか悲しんでいるように感じたのは俺の気のせいなのかな。
やがて南雲はゆっくり口を開いた。
「強くならなきゃいけないから」
ならなきゃいけない……?
なりたい、じゃなくて?
顔を見上げてまっすぐ見つめれば、固い決意を思わせる熱のこもった漆黒の瞳と視線が合わさった。
「僕には力が足りない。なんとしてでも強くならなくちゃいけないんだ」
少し焦った声。余程切羽詰まってるということか。
焦った末に授業を放棄し、こんな誰も来なさそうな辺鄙な場所で1人術の練習をしていたってところか?
それなら頷けなくもない。
…………が。
「理由がなんであれ、授業を放棄するのは良くないだろ」
出会い頭から強烈なキャラを見せつけてきたあの理事長が困り顔を見せるなんて、よっぽどのことだろう。いや、まだこの学園のことも理事長のこともよく知らない俺が言える立場ではないのだが。
「……真面目なんだな、君は」
「そんなことない。だけど、さっき理事長がお前が授業に出ないって困った顔してたからほっとけないんだ」
「ふぅん、会ったばかりの人間をほっとけないなんて、お人好しなんだな。ともかく僕は時間を有効活用したいから授業なんかには出ない」
どうやら授業に出る気はサラサラないらしい。何故そこまで………
なおも食い下がる俺を見てふぅ、と一息ついて話し出す。
「そもそも、この学園に入学したのだって僕の意思じゃない。周りの大人達が勝手に決めたこと。僕の生活態度に口出ししないことを条件に入学してやったんだ、自由まで奪われたくない」
その瞳には悲痛な思いが滲んでいて。
俺はそれ以上説得する勇気を持てなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる