神様と友達な彼と最強くん

深園 彩月

文字の大きさ
29 / 46
第一部・第三章:これが日常とか拷問だろ!

29

しおりを挟む
 使ってたカップを台所に置き、部屋をあとにする。

 扉に鍵をかけ、すぐ横にあるエレベーターに乗り1階のボタンを押す。

「お金、ちゃんと働いて返すから」

 壁に寄りかかってぼーっとしてる南雲にそう告げれば、これまたしれっとすごいことを言い出した。

「別に返さなくていい。金なら腐るほどたくさんあるからな」

 平然と、あたかも当たり前のように言い放たれた。

「えぇ?どゆこと?家のお金じゃないの?」

 自分でも知らずに間抜けな声とアホ面で聞いてしまっていた。

 すると俺の反応をどう受け取ったのか、一瞬眉をひそめた。

「……ああ、勘違いしないでくれよ。確かに僕の所有する財産の中には実家から送られた金も僅かばかりあるが、7割ほどは僕が自分で稼いだものだ」

「えええぇぇぇぇっ!!?」

 南雲の言葉にはただただ驚くばかりだった。

 陰陽師って稼げる職業なの!?つーかそんなに稼いだの!?実家から送られた金より額が高いってどうなの!?

 ポーン…

「どうした柳?早く降りないと扉閉まるぞ」

 1階に着いて扉が開いたにも関わらずフリーズ状態な俺にかけられた言葉に我にかえり、エレベーターの外に出ていた南雲を慌てて追いかける。

 カウンターの女性に簡単に説明をして出入り口まで二人並んで歩く。

 学校以外の外出はカウンターの人に一言断りを入れてかなきゃいけないらしい。覚えておこう。

 男子寮から出て、女子寮へと続く道を少し歩けばすぐ横にそれなりに大きい敷居の売店が女子寮と男子寮に挟まれてるかたちでマンションに近い外観をしていた。

 4階建ての店の中に入ろうとしたそのとき、足元がぐらついた。

「なんだ?地面が揺れてる……?」

 しかしその揺れは数秒ほどでおさまり、その後の変化は見られなかった。

「また地震か。今朝だけだと思ったのだが……」

「今朝?揺れてなかったよ?」

「何を言う。7時30分頃に今くらいのやや大きい揺れがあっただろう。気付かなかったのか?」

 え、知らない。7時30分頃っていったらちょうど白狐と嵐武様と一緒に人間界に降りてたときだもん。

「あ、あー……そのときは妖怪に襲われててそんなん気にしてる余裕なかったっていうか……」

 だがそれを言う訳にはいかない。

 嵐武様にも白狐にも俺が神界で育ったことやその他諸々を他人に言うなって言われてるもん。

「え?妖怪に襲われてた?その話もっと詳しく教えてくれないか」

 だがしかし、下手に誤魔化して疑われるということにはならなかったから良いが俺の嘘話に見事に食いついてきた。

 話がそれたのにホッとしたのも束の間、冷や汗が背中を伝う。

 どうすれば良いかと頭をフル回転させていると、タイミング良く俺の腹がすごい音を立てて鳴った。

「寝起きはお腹が空くもんだよな!早いとこ何か買って胃に入れたいなあ!さあ早く入ろう!」

 南雲の背中をグイグイ押して店内に入る。

 幸いなことに南雲は追求してこなかったためそのまま買い物へ。

 安めの衣服やら食材やらを買ったあとに運ぶのに苦労するミニテーブルや座布団、衣服を収納するクローゼット等を買った。

 支払い完了した直後にレジの人からこちらで運びましょうか?って言われたから家具だけお願いしてお店を出た。

「そんな安いものばかりで良いのか?もっと良質なものもあったのに」

「最低限で充分だよ。それに、南雲の懐を軽くしたくないし」

「気にするなと言ってるのに」

「俺が気になるの!」

 男子寮に帰る道中、こんな会話がくり広げられていた。かれこれもう15分くらいかな。なんで短い距離でそんな時間くってるんだって?それはな。

「ところで柳」

 南雲が俺より数メートル先で立ち止まり、こちらを振り向く。

「数歩進んで休憩する、を繰り返すくらいならさっきの店員に家具と一緒にお願いした方が良かったんじゃないか?」

 そう!意外にも重い荷物を両手に抱えてるもんだから、少し歩いただけで疲れちゃって荷物下に置いて休憩してたんだよね。

 神界ではあんまり重い荷物運ぶ作業しなかったからかな、俺男なのに力ねぇな。

 悲しいぜ!!非力すぎて泣けてくるわ!!くっそ、ぜってぇ男前になってやる。そうだ筋トレ始めよう。マッチョ目指そう。

 とか涙目になりながら考えてるうちに寮についてた。

 南雲にも手伝おうか?って心なしか心配そうに言ってくれたけど断った。だってただでさえ全額負担させちゃってんのにその上荷物も押し付けるとかまずできない。

 自分の荷物はできるだけ自分で運ばないとね。

 それから約二時間後、やることがないという南雲にも手伝ってもらって部屋の模様変えは終わった。一言で言うなら小綺麗でまとまってる部屋、って感じになった。

「家具の配置はこれで合ってるか?」

「合ってるとかはないだろ。自分が置きたいところに置けば良いんだから」

 無難にまとめることができれば俺的にはそれで良いや。

「じゃあ買ってきた弁当でも食べようか。僕も夜は食べてないからな、一緒に食べよう」

「ん、そうしよう」

 お金出してくれたことと手伝ってくれたことの礼……と思ったけど、安っぽすぎるからもうひとつ礼をしようかな。

 温めればすぐ食べれる弁当を電子レンジに入れて温めてる間に南雲に聞いてみた。

「お礼は何が良い?」

「永遠の友達でいれればそれで良い」

 目をランランと輝かせて言う南雲。なんだよ、そんなにぼっち卒業したいのかよ。しょうがない、俺でよければ……って、良くねぇぇぇぇぇ!!!

 白狐との約束守れなくなるじゃん!

 だからと言って友達になりたいって言ってくれてるのに断るのも気が引けるし、最良な策はないのか!?

 南雲に見られないように壁に向かって百面相してる俺。

「……というのは単なる口実なんだがな」

「ほえ?」

「本当の目的は別にある」

 意外な告白に、鳩に豆鉄砲くらった顔で呆けてる俺をよそにそのまま続ける。

「最初は本当にただの研究対象としか思ってなかったんだが、今は違う。柳、実を言うと、君がアドバイスをくれたときから考えてたんだ」

 アドバイス?何か言ったか俺……ああ、言ったわ。結界のことで生意気にも言っちまってたわ。

「生意気言ってごめんなー。術が使えないどころか力すらない人間にアドバイスなんかしてほしくないよなぁ」

「いや、柳の指摘は正しかった。むしろ助かったよ、アドバイスしてくれて」

 苦笑いしつつ謝ったらそんな言葉がかえってきた。俺は弾かれるように南雲の顔を凝視する。

「あの時柳は僕がつくった結界を『分厚くて余計な力が入ってるから薄く尚且つ強度を高めろ』と指摘してくれた。仕事を終えてからすぐに試しに薄くするよう心がけたのだがこれがなかなか難しくてな。だが少々時間を費やしてようやく薄く結界を張ることができて、柳の言葉を理解した」

 一拍おいて再び口を開く南雲。その瞳は真っ直ぐ俺に向けられて。

「こめる力を調節したら、いつもより負担が少なかったんだ。おかげで予定より多くの依頼をこなせた。柳のアドバイスがなかったらそうはならなかっただろう」

 とてつもなく真剣な表情で言ってるところ申し訳ないけど……

 ものっっっっっすごく嫌な予感。

「研究対象とは思わない。良きアドバイザーとなってこれからも僕に色々指摘してくれるとうれしい」

 わあ、滅茶苦茶キラキラしてるぅ!!

 たかが一言アドバイスしただけでこんなことになるなんて……言わなきゃ良かったな。今更だけど。

「えぇっと、研究対象として見られなくなったのは俺も嬉しいんだけど、力もない俺にそんな大役務まるかどうか……」

「力はなくとも的確なアドバイスができる。それだけで充分素質はあるし僕としても是非頼みたい。そういった理由も含めて友人になりたいと言っている」

「えぇ、でもぉ、その……」

 口をまごまごさせて挙動不審になっていると南雲が不愉快そうに口をへの字にさせて言った。

「なんだ、さっきは友達と言ったら快く了承してくれたのに……」

「そんなことなっ……」

 否定しようとしてふと数十分前を思い起こす。

 あ、本当だ。経緯はなんであれ結果だけ見れぱ了承してることになるわ。

「了承……したな」

 ぽつりと呟くと南雲は納得顔で満足そうに力強く頷いた。

「てな訳で、改めてこれからよろしく」

「ウンヨロシクー」

 さながら友情の握手とでも称するべきかな?南雲が俺の右手をガッチリ両手で掴んで、やりきった!みたいな清々しさを思わせる笑顔を見せる。ちなみに俺は脱け殻のような陰の薄い笑みを浮かべてる。

 どうしよう。

 白狐との約束、本気で守れそうにない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

イジメられっ子世に憚る。

satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...