34 / 46
第一部・第三章:これが日常とか拷問だろ!
34
しおりを挟む
「なっ!?この速さについて来ただと!?」
驚愕の色を見せる涙狐。
遅いと言ってもそこそこ出来る涙狐なのだろう。だから、余計に焦りが見える。
その言葉を最期に、涙狐の命は儚く散った。
―――――――――――――――
「これだけあれば充分だろ」
息絶えた涙狐の身体から血液を採取する。
涙狐の血液は調合したらかなり効果のある薬になる。そのため、できるだけ多くの血を採取することが義務付けられている。
だから涙狐の討伐、後に血液採取の依頼が来た時は極力傷をつけず、血を垂れ流して質を悪くしないようにする必要がある。
そしてその依頼に適した術を使える者が依頼をこなすことで、より良い質の血液を多く採取できるんだ。
その適した術を使える者というのに俺も含まれる。
「……何度使っても良い気はしないな、この術は…」
自分でも分かるほど悲しみが含まれた苦々しい顔で言い放つ。
俺がさっき放った酷黒刃という術は、簡単に言えば感覚を麻痺させる術だ。
感覚を麻痺させ、死に至らしめる残酷な術。
瞳が合わさったときに術を放つことで最初に視力を奪い、力を使えないようにする。
その瞬間に浮遊していた2枚の呪符が涙狐の身体を斬り刻む。
だが、見た目は斬撃の跡はどこにもない。
跡はなくても、涙狐本人には鋭い痛みが走っている。
呪符が斬り刻む部位には跡がないけど、まるで本当に斬られたかのような痛みが残る。そのせいで痛覚が異常に麻痺し、本来より酷い痛みが残るらしい。
変わったことに、斬られたところは痛むだけでなく本当に斬られている。
心臓を斬り刻めば息の根を止めれるし、いつもそこを狙う。
……血は出てないのに斬られる。
斬られたのに痛みしかない。
なのに、本当に斬られている。
それがわからずに死んでいく涙狐達。
己の死を理解できずに朽ちていくなんて、残酷だ。
「悪いな。これが俺の仕事なんだ」
採取し終わった涙狐の血液が入ったビンを数個カバンの中に入れて次の依頼を受けようと移動する際、そう言った。
別れ際はいつもこうだ。
相手は妖怪。害悪の象徴だ。だから俺が顔を歪める意味はない。
……だけど……。
今の俺の顔は歪んでいる。
ただ、その表情が悲しみなのか哀れみなのか、はたまた違う感情なのかは自分でも分からなかった。
……いつまでもこんなところで道草くってる暇はないんだし、気持ちを切り替えて次の依頼をしなきゃな。
俺は涙狐討伐の依頼書をカバンの中に突っ込むと2枚目の依頼書に目を通した。これもまたあまり使いたくない術を使わなきゃ達成できない依頼だったが、腕時計を見たらけっこう時間が経過していたから早めに終わらせなくては。
どの依頼も今いるS地区のものだからすぐに終わるだろうけど、帰る時間のことも考えたら少し急いで依頼を遂行しないと門限に間に合わない可能性もある。
罰則くらうのは御免だ。
という訳で急ぎ足で依頼書に書かれている妖怪を探す。
涙狐の遺体を土中に埋めるのを忘れずに。
その後もトラブル等はなく、順調に依頼を達成していったことで無事時間通りに学園に帰ることができると思い、通常は分かりにくい学園への道を歩いている道中、何か強い気を感じた。
「……なんだ?」
今出たばっかりのS地区から、感じたことのない強い妖気を感じた。
さっきまではなかった妖気だ。
明らかに突然現れた異様なものに好奇心からか、警戒しながらも俺の足は自然とさっきまでいた場所に向かっていた。
なんなんだ?この妖気は……
今まで相対した妖怪のそれとは明らかに違う。
空気が軋む幻聴が耳に入るほど禍々しい妖気。
好奇心も確かにあるが、禍々しい妖気を放つ異形の者は陰陽師として見過ごす訳にいかない。
物音を立てずに足早に向かう。
やがて感じる妖気が近くにあることを確信した。
ちらりと伺える人影から放たれる妖気が俺が感じていた禍々しいそれと一致したからだ。
人影を黙視した瞬間、隠れるように身体を屈める。
人影はこちらに気づいていないはずだ。
相手がどんなやつかが分からない以上、こちらから手出しはできない。だからこのまま相手がどんな行動に出るか見張る体勢だ。
殺気をかなり抑えて人影を凝視する。
何故学園の近くのこの森にいきなり現れたのか。
どうやって降り立ったのか。
何者なのか。
妖怪なんだからまともに話ができるかどうか怪しいものだが、できれば知りたい。
この森の妖怪はどれだけ討伐しても一向に減っていかないから不思議だ。
今朝のようなよくある地震のせいで妖怪のいる世界から降り立ってる、という説もあるが、実のところはどうなのか。
等と考えていたら、人影は振り向く素振りを見せ、ゆっくりこちらに近付いてきた。
まさか……人が、俺がいるってバレたのか?
気配は押し殺していた。それに加え、ギリギリ目を凝らせば見えるか否かという距離があった。
バレる確率は低い。……なのに。
その間にも人影は真っ直ぐ俺に向かって歩いている。
木に隠れて人影のいる方に顔を向けると徐々に人影の容姿が見えてきた。
どこか冷酷さを思わせる深い青色の短髪。
何も映していないかのような切れ長の漆黒の瞳。
透き通るような不自然なまでに白い肌。
きらびやかな黒い着物を纏う、凛とした佇まいの独りの男が、そこにいた。
「……誰だ」
刺すような冷たい声が森の中を駆ける。
妖怪ごときに感情を揺さぶられることなんてなかったのに、声を聞いた途端ひどく動揺した。
まるであの妖怪に見つかったら躊躇いもなく殺される、そんな恐怖があったからだ。
「…………出てこないなら、出てこさせるまでだ」
妖気から殺気へと変貌した刹那。
辺り一面の草木という緑が眩い閃光で吹っ飛んだ。
「……っぐ………!!!」
俺の身体もいとも簡単に吹き飛ばされ、暫しの間気絶してしまった。
――――――――――――――――――
「うっ………」
少しの間気絶していたが、ようやく目を覚ました。……だが、全身に迸る焼けるような痛みは一体……?
「あら、気がついたかしら?」
視界が霞みボーっとする中かけられた優しくて、でもどこか冷たさや寂しさを感じる女の声が上から振ってきた。
「主人がごめんなさいねぇ。きちんと叱っておくから、悪く思わないでね」
どうやら仰向けに寝かされて看病されていたらしい。女の太ももが俺の枕になっていたようだ。
主人……?まさか、あのときの妖怪か?
「さっきの、光は……」
「主人の術は強力だから、きっと君の身体もダメージがあったのね。周りの草木だけを消すつもりだったみたいだけど……巻き込んでごめんね」
周りの草木を、消す?
痛みを気にせず身体を起こす。
「なんだ、これ……」
目の前の光景に呆然としてしまった。
「やっぱり、昔と変わらず自然は脆いわねぇ」
語尾を伸ばして可愛く言うがそれに似合わない台詞が女の口から出た。
…………そこに広がっていたのは、焼け焦げて真っ黒に染まった自然だった。
驚愕の色を見せる涙狐。
遅いと言ってもそこそこ出来る涙狐なのだろう。だから、余計に焦りが見える。
その言葉を最期に、涙狐の命は儚く散った。
―――――――――――――――
「これだけあれば充分だろ」
息絶えた涙狐の身体から血液を採取する。
涙狐の血液は調合したらかなり効果のある薬になる。そのため、できるだけ多くの血を採取することが義務付けられている。
だから涙狐の討伐、後に血液採取の依頼が来た時は極力傷をつけず、血を垂れ流して質を悪くしないようにする必要がある。
そしてその依頼に適した術を使える者が依頼をこなすことで、より良い質の血液を多く採取できるんだ。
その適した術を使える者というのに俺も含まれる。
「……何度使っても良い気はしないな、この術は…」
自分でも分かるほど悲しみが含まれた苦々しい顔で言い放つ。
俺がさっき放った酷黒刃という術は、簡単に言えば感覚を麻痺させる術だ。
感覚を麻痺させ、死に至らしめる残酷な術。
瞳が合わさったときに術を放つことで最初に視力を奪い、力を使えないようにする。
その瞬間に浮遊していた2枚の呪符が涙狐の身体を斬り刻む。
だが、見た目は斬撃の跡はどこにもない。
跡はなくても、涙狐本人には鋭い痛みが走っている。
呪符が斬り刻む部位には跡がないけど、まるで本当に斬られたかのような痛みが残る。そのせいで痛覚が異常に麻痺し、本来より酷い痛みが残るらしい。
変わったことに、斬られたところは痛むだけでなく本当に斬られている。
心臓を斬り刻めば息の根を止めれるし、いつもそこを狙う。
……血は出てないのに斬られる。
斬られたのに痛みしかない。
なのに、本当に斬られている。
それがわからずに死んでいく涙狐達。
己の死を理解できずに朽ちていくなんて、残酷だ。
「悪いな。これが俺の仕事なんだ」
採取し終わった涙狐の血液が入ったビンを数個カバンの中に入れて次の依頼を受けようと移動する際、そう言った。
別れ際はいつもこうだ。
相手は妖怪。害悪の象徴だ。だから俺が顔を歪める意味はない。
……だけど……。
今の俺の顔は歪んでいる。
ただ、その表情が悲しみなのか哀れみなのか、はたまた違う感情なのかは自分でも分からなかった。
……いつまでもこんなところで道草くってる暇はないんだし、気持ちを切り替えて次の依頼をしなきゃな。
俺は涙狐討伐の依頼書をカバンの中に突っ込むと2枚目の依頼書に目を通した。これもまたあまり使いたくない術を使わなきゃ達成できない依頼だったが、腕時計を見たらけっこう時間が経過していたから早めに終わらせなくては。
どの依頼も今いるS地区のものだからすぐに終わるだろうけど、帰る時間のことも考えたら少し急いで依頼を遂行しないと門限に間に合わない可能性もある。
罰則くらうのは御免だ。
という訳で急ぎ足で依頼書に書かれている妖怪を探す。
涙狐の遺体を土中に埋めるのを忘れずに。
その後もトラブル等はなく、順調に依頼を達成していったことで無事時間通りに学園に帰ることができると思い、通常は分かりにくい学園への道を歩いている道中、何か強い気を感じた。
「……なんだ?」
今出たばっかりのS地区から、感じたことのない強い妖気を感じた。
さっきまではなかった妖気だ。
明らかに突然現れた異様なものに好奇心からか、警戒しながらも俺の足は自然とさっきまでいた場所に向かっていた。
なんなんだ?この妖気は……
今まで相対した妖怪のそれとは明らかに違う。
空気が軋む幻聴が耳に入るほど禍々しい妖気。
好奇心も確かにあるが、禍々しい妖気を放つ異形の者は陰陽師として見過ごす訳にいかない。
物音を立てずに足早に向かう。
やがて感じる妖気が近くにあることを確信した。
ちらりと伺える人影から放たれる妖気が俺が感じていた禍々しいそれと一致したからだ。
人影を黙視した瞬間、隠れるように身体を屈める。
人影はこちらに気づいていないはずだ。
相手がどんなやつかが分からない以上、こちらから手出しはできない。だからこのまま相手がどんな行動に出るか見張る体勢だ。
殺気をかなり抑えて人影を凝視する。
何故学園の近くのこの森にいきなり現れたのか。
どうやって降り立ったのか。
何者なのか。
妖怪なんだからまともに話ができるかどうか怪しいものだが、できれば知りたい。
この森の妖怪はどれだけ討伐しても一向に減っていかないから不思議だ。
今朝のようなよくある地震のせいで妖怪のいる世界から降り立ってる、という説もあるが、実のところはどうなのか。
等と考えていたら、人影は振り向く素振りを見せ、ゆっくりこちらに近付いてきた。
まさか……人が、俺がいるってバレたのか?
気配は押し殺していた。それに加え、ギリギリ目を凝らせば見えるか否かという距離があった。
バレる確率は低い。……なのに。
その間にも人影は真っ直ぐ俺に向かって歩いている。
木に隠れて人影のいる方に顔を向けると徐々に人影の容姿が見えてきた。
どこか冷酷さを思わせる深い青色の短髪。
何も映していないかのような切れ長の漆黒の瞳。
透き通るような不自然なまでに白い肌。
きらびやかな黒い着物を纏う、凛とした佇まいの独りの男が、そこにいた。
「……誰だ」
刺すような冷たい声が森の中を駆ける。
妖怪ごときに感情を揺さぶられることなんてなかったのに、声を聞いた途端ひどく動揺した。
まるであの妖怪に見つかったら躊躇いもなく殺される、そんな恐怖があったからだ。
「…………出てこないなら、出てこさせるまでだ」
妖気から殺気へと変貌した刹那。
辺り一面の草木という緑が眩い閃光で吹っ飛んだ。
「……っぐ………!!!」
俺の身体もいとも簡単に吹き飛ばされ、暫しの間気絶してしまった。
――――――――――――――――――
「うっ………」
少しの間気絶していたが、ようやく目を覚ました。……だが、全身に迸る焼けるような痛みは一体……?
「あら、気がついたかしら?」
視界が霞みボーっとする中かけられた優しくて、でもどこか冷たさや寂しさを感じる女の声が上から振ってきた。
「主人がごめんなさいねぇ。きちんと叱っておくから、悪く思わないでね」
どうやら仰向けに寝かされて看病されていたらしい。女の太ももが俺の枕になっていたようだ。
主人……?まさか、あのときの妖怪か?
「さっきの、光は……」
「主人の術は強力だから、きっと君の身体もダメージがあったのね。周りの草木だけを消すつもりだったみたいだけど……巻き込んでごめんね」
周りの草木を、消す?
痛みを気にせず身体を起こす。
「なんだ、これ……」
目の前の光景に呆然としてしまった。
「やっぱり、昔と変わらず自然は脆いわねぇ」
語尾を伸ばして可愛く言うがそれに似合わない台詞が女の口から出た。
…………そこに広がっていたのは、焼け焦げて真っ黒に染まった自然だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる