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第一部・第三章:これが日常とか拷問だろ!

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「なっ……んで、嘘だと……っ」

「主人が言ってたの。有象無象の中にずば抜けて強い力を持つ人間がいるって。間違いなくソウだわ」

 ずば抜けて力が強いやつ……まさか。

「知ってるわね?その顔は」

 俺の首に爪を食い込ませる。かなり痛い。

「……知ってる。が、名前と一致しない」

「一致しない?」

「俺の知ってるやつで力の強いやつは南雲 清流という名前だ。ソウという名前ではない」

 きっぱり言い切った。

 妖怪相手に正直に言うのはなんか癪だったが、このままでは自分の命が危うくなるために白状してしまった。

 誰だって、自分の命が危険に晒されたらそうするものだ。

 自分も例外なくその人間の一人だと理解した瞬間、ひどくもどかしくなった。

「ふぅん……今度は嘘じゃないみたいね」

 ほんの少しだけ手の力を緩めてくれたおかげで息がしやすくなった。少しむせたが問題ない。

「でも、そうなの……違ったの。残念ね。やっと再会できると思ったのに……」

 首から手を離し、少し時間が経ったときにポツリとあからさまに残念そうに言葉を紡ぐ女。

 と、そこで、今まで空気と化していた男が口を開き、またもや謎発言をした。

「……特別力が強い訳ではないが、不思議な力を感じる」

「え?あなた、どういうこと?」

「……まさか、な」

「ちょっとぉ!置いてきぼりにしないでぇ~!」

 頬を膨らまして男についていく女。

 ……ちょっと待て。そっちは……

 俺は首をおさえたまま走りだし、二人の前に立ちはだかる。

「ここから先には行かせない」

 この先には学園がある。

 一般の生徒もいる学園に、危険因子である妖怪を行かせることなどできない。

 何よりイオリが危険になる事態にはなってほしくない。

 しかし俺は迂闊にも忘れていた。

 この男が先程ここS地区を焼け焦げにしたほどの凄腕の妖怪だということを。

 妖怪二人は俺をじっと見つめ、男は冷酷な鋭い瞳を向けたまま微笑を浮かべる。女はまるで逃さないとばかりににんまりと口角を上げる。

「ーーーーーーーーーっっ!!!」

 その後すぐに学園側に念話で応援要請をだすなんて思ってなかった。


 それほど圧倒的な差があったんだ。

 俺と、目の前にいる化け物二人は。


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