38 / 46
第一部・第三章:これが日常とか拷問だろ!
38
しおりを挟む
「誰だその女……いや、妖怪は」
眉間にシワを寄せ、瞬時に見抜く南雲。
妖怪らしき姿をしていないのに瞬時に見抜くなんて……なんか、初めて南雲のこと凄いって思ったな。
「あらあら、もうバレちゃった。そこに転がってる人間も思ったけど、どうして異形の者だと分かったの?力を垂れ流してる訳でもないのに」
「雰囲気が人間のそれと異なるからな」
「まあ……やっぱり私達のレベルともなると隠しきれない部分があるわねぇやっぱり。ねえ、あなた?」
南雲が服のポケットから素早く呪符を取り出し、構える。瞬きするだけの僅かな時間で即行動に出た南雲に続いて木々の中から異様な空気を纏う一人の男が出てきて、女の側に向かって歩いていく。
「……そうだな。強者を目前にすれば弱者は畏縮するのが当然だ。……例外もいるがな」
女の側で足を止め、南雲と俺を一瞬見やる。
待って!南雲は分かるけどなんで俺まで見るの!?
俺に視線を合わせたままゆっくり口を開く。
「少々特殊な力を持ってるみたいだが察するに、貴様は陰陽師ではないな。何故俺達に畏縮しない?」
無言の威圧にビクリとするが、それだけだ。
何故畏縮しないのか。
それは、今までずっと神界という神聖な場所で生きてて、幼い頃から神様達の威圧を充てられていたからなんだと思う。
やっぱり神様と人間ってのは違うんだろうなー。今はもうすっかり慣れたから良いけど、昔は嵐武様の威圧に充てられただけでしょっちゅう熱出してたし。
神様ってのは何もしてなくても人間や妖怪に威圧感を感じさせちゃうんだーとか言ってたし、仕方ないことだけど。
「こ、恐いとは思ってるよ」
だがしかし。畏縮しない理由は言えない。
嵐武様直々に口止めされてるかんね!
ついでに言うと最上の神様からも釘刺されてるからね!
「……まあ良い。それよりも」
男は俺から視線を外す。追求されなくて良かったと思った次の瞬間、驚きの声をあげてしまう。
「ソウという男を探してる。心当たりがあれば大人しく吐け」
「…………え?」
数回瞬きして彼らを凝視する。
「なんで俺のこと知ってるの?」
驚きのあまり思ったことを口にしたもんだから、南雲も男も女も俺に注目する。
「あ、いやぁ、その……人違いの可能性大なんだけど、俺の名前もソウだからびっくりして……」
口が勝手に言い訳を唱える。
本当にびっくりした。
一瞬俺のことを言ってるのかと思ったけど、妖怪に探されるようなことした記憶ないし、そもそもソウって名前もたいして珍しくないし、同姓同名の俺じゃない誰かだろうと思い至った。……のだが。
思い至ったのが僅かに遅かった。
女が男に目配せして合図をしたとき男は少し考えこんだ後、首を横に振った。それは二人だけの会話で、俺と南雲には何を会話しているのか分からない。
しばらく見つめあう二人。ようやく首を動かして俺の方を向く女の顔は静かに悲しみに呉れていた。
「……あなたもソウっていう名前なのねぇ。でも残念だわ。私達が探してるのはあなたじゃない。もっと特別な強力な力を持つ子なの」
「妖怪に特別も何もあるか。俺の知る限りは柳 爽以外のソウという人物は知らない。知ってても教える気はないがな」
呪符を持つ手に力が入ってるのが遠目でも分かる。南雲の眼光は、戦に身を投じる戦神を思わせる鋭いものだった。
その鋭い瞳には憎しみが込められているようにも感じた。
「うふふ……やっぱり、青臭いと言えど陰陽師ね。私達に隙を見せない、与えない。その心得は年齢にしてはよくできてるわ。けどね」
女は言い終わるのと同時に穏やかな表情はそのままに南雲を見据えたまま一歩前に進む。
たったそれだけの動作で一歩進んだだけのはずがいつの間にか南雲の目の前に接近していて。
次の瞬間、怒気を含めた真顔が南雲の瞳に映った。
「そんなちっぽけな警戒体勢で、私達を退けられるとでも思って?」
勢いよく回し蹴りを放たれ、南雲の身体は思いっきり吹っ飛ばされた。後ろに聳え立っている木々が南雲の身体がぶち当たると倒れていく。
急な展開に目を白黒させている俺をよそに、女は南雲に微笑みかけた。その微笑みは妖しく、それでいて美しいものだった。
「人間ごときが私達を退けようなんて、無理な話なのにねぇ。実に滑稽で面白いわ」
眉間にシワを寄せ、瞬時に見抜く南雲。
妖怪らしき姿をしていないのに瞬時に見抜くなんて……なんか、初めて南雲のこと凄いって思ったな。
「あらあら、もうバレちゃった。そこに転がってる人間も思ったけど、どうして異形の者だと分かったの?力を垂れ流してる訳でもないのに」
「雰囲気が人間のそれと異なるからな」
「まあ……やっぱり私達のレベルともなると隠しきれない部分があるわねぇやっぱり。ねえ、あなた?」
南雲が服のポケットから素早く呪符を取り出し、構える。瞬きするだけの僅かな時間で即行動に出た南雲に続いて木々の中から異様な空気を纏う一人の男が出てきて、女の側に向かって歩いていく。
「……そうだな。強者を目前にすれば弱者は畏縮するのが当然だ。……例外もいるがな」
女の側で足を止め、南雲と俺を一瞬見やる。
待って!南雲は分かるけどなんで俺まで見るの!?
俺に視線を合わせたままゆっくり口を開く。
「少々特殊な力を持ってるみたいだが察するに、貴様は陰陽師ではないな。何故俺達に畏縮しない?」
無言の威圧にビクリとするが、それだけだ。
何故畏縮しないのか。
それは、今までずっと神界という神聖な場所で生きてて、幼い頃から神様達の威圧を充てられていたからなんだと思う。
やっぱり神様と人間ってのは違うんだろうなー。今はもうすっかり慣れたから良いけど、昔は嵐武様の威圧に充てられただけでしょっちゅう熱出してたし。
神様ってのは何もしてなくても人間や妖怪に威圧感を感じさせちゃうんだーとか言ってたし、仕方ないことだけど。
「こ、恐いとは思ってるよ」
だがしかし。畏縮しない理由は言えない。
嵐武様直々に口止めされてるかんね!
ついでに言うと最上の神様からも釘刺されてるからね!
「……まあ良い。それよりも」
男は俺から視線を外す。追求されなくて良かったと思った次の瞬間、驚きの声をあげてしまう。
「ソウという男を探してる。心当たりがあれば大人しく吐け」
「…………え?」
数回瞬きして彼らを凝視する。
「なんで俺のこと知ってるの?」
驚きのあまり思ったことを口にしたもんだから、南雲も男も女も俺に注目する。
「あ、いやぁ、その……人違いの可能性大なんだけど、俺の名前もソウだからびっくりして……」
口が勝手に言い訳を唱える。
本当にびっくりした。
一瞬俺のことを言ってるのかと思ったけど、妖怪に探されるようなことした記憶ないし、そもそもソウって名前もたいして珍しくないし、同姓同名の俺じゃない誰かだろうと思い至った。……のだが。
思い至ったのが僅かに遅かった。
女が男に目配せして合図をしたとき男は少し考えこんだ後、首を横に振った。それは二人だけの会話で、俺と南雲には何を会話しているのか分からない。
しばらく見つめあう二人。ようやく首を動かして俺の方を向く女の顔は静かに悲しみに呉れていた。
「……あなたもソウっていう名前なのねぇ。でも残念だわ。私達が探してるのはあなたじゃない。もっと特別な強力な力を持つ子なの」
「妖怪に特別も何もあるか。俺の知る限りは柳 爽以外のソウという人物は知らない。知ってても教える気はないがな」
呪符を持つ手に力が入ってるのが遠目でも分かる。南雲の眼光は、戦に身を投じる戦神を思わせる鋭いものだった。
その鋭い瞳には憎しみが込められているようにも感じた。
「うふふ……やっぱり、青臭いと言えど陰陽師ね。私達に隙を見せない、与えない。その心得は年齢にしてはよくできてるわ。けどね」
女は言い終わるのと同時に穏やかな表情はそのままに南雲を見据えたまま一歩前に進む。
たったそれだけの動作で一歩進んだだけのはずがいつの間にか南雲の目の前に接近していて。
次の瞬間、怒気を含めた真顔が南雲の瞳に映った。
「そんなちっぽけな警戒体勢で、私達を退けられるとでも思って?」
勢いよく回し蹴りを放たれ、南雲の身体は思いっきり吹っ飛ばされた。後ろに聳え立っている木々が南雲の身体がぶち当たると倒れていく。
急な展開に目を白黒させている俺をよそに、女は南雲に微笑みかけた。その微笑みは妖しく、それでいて美しいものだった。
「人間ごときが私達を退けようなんて、無理な話なのにねぇ。実に滑稽で面白いわ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる