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【R18】Last kissはあなたと 〜 10年越しの恋の行方〜
『寒の夜、あったか酒企画2015』後編 ★
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「舞子さん、シナモンのいい匂いがしますよ」
後ろから舞子さんを抱きしめつつ首筋に顔を埋めると、ほんのりとシナモンの香りがしていた。何度か抱いているうちに気がついたのだが、彼女はこの部分が非常に弱い。ほんの少し舌をはわせただけで濡れてきてしまうらしく、今も軽く吸っただけで、胎内におさまっている俺をきつく締めつけてきた。
「他のところも同じ匂いがするのかな」
「本当に隆太ってば、最近エロすぎ!」
「仕方ないでしょ、舞子さん相手だとおさまる気配がないんだから」
そう返事をしてからゆっくりと腰を動かす。感じている時の舞子さんは、普段とは打って変わって子猫のように従順で可愛い声をあげる。それこそ子猫のような声。こんな可愛く乱れる様子を、他の誰とも知れない男にも見せていたのかと思うと、何ともいえない気持ちになってくる。そんな突然沸いてきた暗い感情を吐き出すかのように、彼女のことを容赦なく突き上げた。
「やっ、隆太、激しい……!」
「可愛い顔する舞子さんが悪いんです」
「そんな急にっ、待ってたらっ」
そこからしばらくは、いつもの週末と同じでひたすら繋がってお互いをむさぼりあった。まあ正しくは、俺が一方的に舞子さんを、美味しくいただいたと言った方が正しいんだが。何度目かの絶頂を迎えた彼女は、そのまま意識を手放してしまい、俺はそんな彼女を見下ろして、ちょっとした征服感というか妙な達成感を覚えながら、事後の処理をし、ぐったりとしている体を抱きしめて眠りについた。
+++
「もうっ、ああいうのは禁止って言ってるじゃない!」
そんなわけで、舞子さんは朝からご立腹だ。気を失った後は、ちゃんと綺麗にしてあげたじゃないですかと答えれば、そういう問題じゃないと言われて、枕で叩きのめされた。いつもなら起き上がれないことが多い舞子さんなのだが、今日は朝からやけに元気だ。もしかして体力がついてきたとか?
「仕方がないでしょ、舞子さんのあんな可愛い顔を至近距離で見たら、誰だって我慢できなくなりますよ」
「だいたいね、そんな言い訳が私に通用すると思ってるの? ちゃんと理由を言いなさい。何であんなに急に態度が変わったのか」
「態度を変えた覚えは無いですけど。しいて言えば、舞子さんの顔が近すぎる背面座位のせい?」
何食わぬ顔をしてシレッと答えれば、彼女の目が吊り上がる。
「ほんっとに隆太ってば、エロオヤジ化してる!!」
「俺だって三十すぎですから」
「それはアラフォーな私への挑戦状?」
「まさか。舞子さんは可愛いですよ。特にベッドの中では本当に、、、ブッ」
今日は枕が武器として大活躍だ。そのうち千切れて中味が飛び出るかもしれない。
「それ結構高かった枕なんで、大事に使ってもらえると助かるんですが。俺、舞子さんみたいな銀行員さんと違って、しがないバーテンなので」
「なにがしがないバーテンよ!! 最近ではレグネンスのスカイラウンジに呼ばれているくせに。知ってるんですからね、あそこはかなりお給料が良いってこと」
なんでそんなことを知っているのかなんて聞くのは、きっと野暮なんだろうなということで、そこはスルー。
「あっちは、マスターの顔を立てるために行っているだけの週一程度のバイトですよ。その時給と正社員の給料を一緒にしないでください」
もともとレグネンスホテルのフレンチレストランから、ソムリエとしての腕を見込まれて声をかけてもらっていた。だが、ここの売りであるオリジナルのカクテルを作るバーテンがなかなか育たない以上、俺はこの店から離れるつもりはなかった。
そんな中、マスターと古くからの知り合いで、同じホテル内のバーで働いているバーテンが、バイトがてらにたまに立たないかとマスターを通して声をかけてきたのだ。俺としてはその誘いも断るつもりでいたのだが、マスターがこういう個人経営のバーとは違う環境を知るのも良い勉強になるから、是非行ってきなさいと勧めてくれたので、今は勉強がてらに週に一度か二度、そちらに顔を出すようになっていた。
こちらの給料は据え置きで、そこそこ時給の高いバイト代が入るという、考えてみれば俺得な感じであるんだが、やはり自分はホテルのような高級な場所ではなく、今のように街にある店の方が合っていると感じているので、そのうち断りを入れようと思っている。
「隆太目当てで、綺麗な女性客が来ているって話を聞いたけど」
「そうなんですか? カウンターは照明を落としてあるので、客の顔なんて見えませんよ。ああ、たまに騒がしい白い顔がカウンターに何人か並んで座ってるけど、もしかしてあれのことなのかな」
「酷いこと言ってる~」
俺の言葉に、ちょっとむくれていた舞子さんが思わず噴き出した。
「だって俺は、マスターの店で舞子さんにカクテルを作っている時が一番楽しいですからね。週に一度のバイト先での客の顔なんて、いちいち見てませんよ。ところで舞子さん、今日の昼飯、何にします? その様子だと、今日は外食でも行けそうじゃないですか」
「寒い日は鍋よ鍋! 外食より家のコタツで鍋をするの!」
「昼間から?」
「そうよ。とにかく温かいものがいいわ、おでんでも良いかな」
「おでんですか、たしかに寒い時はうまいですよね」
「それはそうと隆太、美味しい日本酒をもらったって聞いたけど? それはいつ味見させてくれるの?」
「またマスターから聞き出したんですか? まったく、聞き出し上手なのは相変わらずですね」
店に日本酒を納入してくれている蔵元が、お歳暮代わりにと届けてくれた日本酒。酒好きの中では有名な銘柄らしく、なかなか手に入らない逸品だとか。そのままで飲んでくれても良いし、オリジナルカクテルに使ってくれても良いよという、社長直々のメッセージ付きでいただいたものだ。年が明けてから舞子さんと一緒に飲もうと思い、未だに未開封のまま、キッチンの戸棚の中で眠っている。せっかく驚かせようと思っていたのに、先手を打たれたか、残念。
「いつ飲ませてくれるのかなって、楽しみにしてるんだけどな」
「一応は年明けしてからって思ってたんですけどね。じゃあ、今夜それを出しますよ」
「やった♪」
「舞子さん、俺の家に来るのって、もしかして酒が目的なんじゃ?」
「そうとも言う、飲ませてもらってないけど、色々と珍しいお酒を揃えているらしいって、マスターから聞いてるし」
「やっぱり……」
やれやれ。別にそれは晩酌するためのものではなく、オリジナルカクテルの研究用に色々と買ってきたものなんだが。まあ仕方がないか、この舞子さんの酒好きのせいで、俺と彼女は出会えたのだから。
「ねえ、お昼はどうするの?」
「昼飯ですか? そうですねえ……まずは舞子さんがまだ元気そうなので、そっちをいただいちゃいますかね。昼飯はその後でってことで」
「え?!」
「今朝はまだ余力があるみたいですから」
「いや、ほら、朝ご飯食べない?」
「食べますよ、舞子さんを。舞子さんも俺のこと食ってくれて良いですからね、遠慮なくどうぞ」
そういうわけで結局、彼女はベッドの住人に逆戻りということになった。もちろん夕飯の買い出しも用意も、俺が一人でしたのは言うまでもない。
後ろから舞子さんを抱きしめつつ首筋に顔を埋めると、ほんのりとシナモンの香りがしていた。何度か抱いているうちに気がついたのだが、彼女はこの部分が非常に弱い。ほんの少し舌をはわせただけで濡れてきてしまうらしく、今も軽く吸っただけで、胎内におさまっている俺をきつく締めつけてきた。
「他のところも同じ匂いがするのかな」
「本当に隆太ってば、最近エロすぎ!」
「仕方ないでしょ、舞子さん相手だとおさまる気配がないんだから」
そう返事をしてからゆっくりと腰を動かす。感じている時の舞子さんは、普段とは打って変わって子猫のように従順で可愛い声をあげる。それこそ子猫のような声。こんな可愛く乱れる様子を、他の誰とも知れない男にも見せていたのかと思うと、何ともいえない気持ちになってくる。そんな突然沸いてきた暗い感情を吐き出すかのように、彼女のことを容赦なく突き上げた。
「やっ、隆太、激しい……!」
「可愛い顔する舞子さんが悪いんです」
「そんな急にっ、待ってたらっ」
そこからしばらくは、いつもの週末と同じでひたすら繋がってお互いをむさぼりあった。まあ正しくは、俺が一方的に舞子さんを、美味しくいただいたと言った方が正しいんだが。何度目かの絶頂を迎えた彼女は、そのまま意識を手放してしまい、俺はそんな彼女を見下ろして、ちょっとした征服感というか妙な達成感を覚えながら、事後の処理をし、ぐったりとしている体を抱きしめて眠りについた。
+++
「もうっ、ああいうのは禁止って言ってるじゃない!」
そんなわけで、舞子さんは朝からご立腹だ。気を失った後は、ちゃんと綺麗にしてあげたじゃないですかと答えれば、そういう問題じゃないと言われて、枕で叩きのめされた。いつもなら起き上がれないことが多い舞子さんなのだが、今日は朝からやけに元気だ。もしかして体力がついてきたとか?
「仕方がないでしょ、舞子さんのあんな可愛い顔を至近距離で見たら、誰だって我慢できなくなりますよ」
「だいたいね、そんな言い訳が私に通用すると思ってるの? ちゃんと理由を言いなさい。何であんなに急に態度が変わったのか」
「態度を変えた覚えは無いですけど。しいて言えば、舞子さんの顔が近すぎる背面座位のせい?」
何食わぬ顔をしてシレッと答えれば、彼女の目が吊り上がる。
「ほんっとに隆太ってば、エロオヤジ化してる!!」
「俺だって三十すぎですから」
「それはアラフォーな私への挑戦状?」
「まさか。舞子さんは可愛いですよ。特にベッドの中では本当に、、、ブッ」
今日は枕が武器として大活躍だ。そのうち千切れて中味が飛び出るかもしれない。
「それ結構高かった枕なんで、大事に使ってもらえると助かるんですが。俺、舞子さんみたいな銀行員さんと違って、しがないバーテンなので」
「なにがしがないバーテンよ!! 最近ではレグネンスのスカイラウンジに呼ばれているくせに。知ってるんですからね、あそこはかなりお給料が良いってこと」
なんでそんなことを知っているのかなんて聞くのは、きっと野暮なんだろうなということで、そこはスルー。
「あっちは、マスターの顔を立てるために行っているだけの週一程度のバイトですよ。その時給と正社員の給料を一緒にしないでください」
もともとレグネンスホテルのフレンチレストランから、ソムリエとしての腕を見込まれて声をかけてもらっていた。だが、ここの売りであるオリジナルのカクテルを作るバーテンがなかなか育たない以上、俺はこの店から離れるつもりはなかった。
そんな中、マスターと古くからの知り合いで、同じホテル内のバーで働いているバーテンが、バイトがてらにたまに立たないかとマスターを通して声をかけてきたのだ。俺としてはその誘いも断るつもりでいたのだが、マスターがこういう個人経営のバーとは違う環境を知るのも良い勉強になるから、是非行ってきなさいと勧めてくれたので、今は勉強がてらに週に一度か二度、そちらに顔を出すようになっていた。
こちらの給料は据え置きで、そこそこ時給の高いバイト代が入るという、考えてみれば俺得な感じであるんだが、やはり自分はホテルのような高級な場所ではなく、今のように街にある店の方が合っていると感じているので、そのうち断りを入れようと思っている。
「隆太目当てで、綺麗な女性客が来ているって話を聞いたけど」
「そうなんですか? カウンターは照明を落としてあるので、客の顔なんて見えませんよ。ああ、たまに騒がしい白い顔がカウンターに何人か並んで座ってるけど、もしかしてあれのことなのかな」
「酷いこと言ってる~」
俺の言葉に、ちょっとむくれていた舞子さんが思わず噴き出した。
「だって俺は、マスターの店で舞子さんにカクテルを作っている時が一番楽しいですからね。週に一度のバイト先での客の顔なんて、いちいち見てませんよ。ところで舞子さん、今日の昼飯、何にします? その様子だと、今日は外食でも行けそうじゃないですか」
「寒い日は鍋よ鍋! 外食より家のコタツで鍋をするの!」
「昼間から?」
「そうよ。とにかく温かいものがいいわ、おでんでも良いかな」
「おでんですか、たしかに寒い時はうまいですよね」
「それはそうと隆太、美味しい日本酒をもらったって聞いたけど? それはいつ味見させてくれるの?」
「またマスターから聞き出したんですか? まったく、聞き出し上手なのは相変わらずですね」
店に日本酒を納入してくれている蔵元が、お歳暮代わりにと届けてくれた日本酒。酒好きの中では有名な銘柄らしく、なかなか手に入らない逸品だとか。そのままで飲んでくれても良いし、オリジナルカクテルに使ってくれても良いよという、社長直々のメッセージ付きでいただいたものだ。年が明けてから舞子さんと一緒に飲もうと思い、未だに未開封のまま、キッチンの戸棚の中で眠っている。せっかく驚かせようと思っていたのに、先手を打たれたか、残念。
「いつ飲ませてくれるのかなって、楽しみにしてるんだけどな」
「一応は年明けしてからって思ってたんですけどね。じゃあ、今夜それを出しますよ」
「やった♪」
「舞子さん、俺の家に来るのって、もしかして酒が目的なんじゃ?」
「そうとも言う、飲ませてもらってないけど、色々と珍しいお酒を揃えているらしいって、マスターから聞いてるし」
「やっぱり……」
やれやれ。別にそれは晩酌するためのものではなく、オリジナルカクテルの研究用に色々と買ってきたものなんだが。まあ仕方がないか、この舞子さんの酒好きのせいで、俺と彼女は出会えたのだから。
「ねえ、お昼はどうするの?」
「昼飯ですか? そうですねえ……まずは舞子さんがまだ元気そうなので、そっちをいただいちゃいますかね。昼飯はその後でってことで」
「え?!」
「今朝はまだ余力があるみたいですから」
「いや、ほら、朝ご飯食べない?」
「食べますよ、舞子さんを。舞子さんも俺のこと食ってくれて良いですからね、遠慮なくどうぞ」
そういうわけで結局、彼女はベッドの住人に逆戻りということになった。もちろん夕飯の買い出しも用意も、俺が一人でしたのは言うまでもない。
応援ありがとうございます!
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捺都ちゃんと柏木さんの続きが読みたいですー(*^^*)
ありがとうございます( ^ ^ ♪
がんばりますー!!