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異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?
第一話
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「……なあ、これって夢やんな」
いつものように嫁ちゃんのおにぎりを手にエプロンに出た俺は、目の前の光景に固まった。
「そうだと思いますけど」
「集団で同じ夢を見るって俺達すごくないか?」
「班長、驚くのはそこなん?」
「ん? まずはそこだろ」
マイペースな青井の横に立っている隊長も、俺達と同様に固まっている。いつも冷静沈着な隊長にしては珍しいことだ。
「すごいな、これ。どういうことなんだろう」
そう言いながら班長は、俺達が固まった原因に向かって歩き出した。
「ちょ、班長! 危ないで! 噛まれたらどないすんねん!」
「噛む気ならとっくに噛まれてるだろ。だから大丈夫だって。それに、よく見るとなかなか可愛いじゃないか」
「班長の可愛い範囲、広すぎる……」
俺の横に立っていた葛城君があきれたようにつぶやく。
「葛城君もそこなん? もっと突っ込むべきところ、あるやん?」
「突っ込みは影山さんに任せます」
「なんでやねん!」
そう言い返してから、もう一度目の前の存在に目を向けた。いつもならここは松島基地で、ブルー仕様のT-4が並んでいるはずなのだ。だが今日は違う。
「なんで7機ともドラゴンやねん。しかも青いやん、ブルー仕様やん、なにげに芸こまかいやん。しかもここ、大草原やん、基地どこいったん」
そうなのだ。俺達が立っているのは何故か大草原。そして目の前に並んでいるのはドラゴン。しかも置物でも彫刻でもない生きているドラゴンだ。……そもそも想像上の生き物に、生きてるとか死んでるとかあるんか? まあ動いてるから生きてるんやろうけど。
「こんなん日本に生息してるなんて聞いたことないで」
「俺も聞いたことないです。すごいですね、さすが夢!」
「これ、夢やんな?」
「だと思いますけど」
俺達の困惑をよそに、そいつらは退屈そうに羽を動かしたり首を上下に動かしたりしている。そのうちの一頭(て数えるんか?!)が派手なクシャミをした。クシャミをした途端、その鼻から何か出た。
「火!! あいつ、鼻から鼻水やのうて火を出しよったで!!」
「すごいな、本当にファンタジーだ。影山さんの五番機君、火を吐くんですね。俺の六番機君も同じなのかな」
「……いややわ。絶対飛びたないわ……つかプリタクどないすんねん」
「なんだかんだ言いながらも影山さん、飛ぶ気じゃないですか」
葛城が笑う。
「あんなんと一緒に飛んでみい。うっかりしたらコンガリ君やで。絶対に飛びたないわ」
「おにぎりが焼きおにぎりだな!」
「班長、笑ってる場合ちゃうし」
俺以外はすっかり夢の設定になじんできている。なんでそんなに順応力高いんや。
「まったく、これ、誰の夢やねん。家で寝る前にファンタジー映画みたんは誰や?!」
何故か隊長が変な咳をした。まさか、隊長の夢?!
「なに見たんだよ、沖田」
「いや、俺ではなく娘が見てた……」
まさかの流れ弾的トバッチリ。いや、隊長のお嬢さんは悪うない。悪いんは夢を見た隊長や。
「隊長、早う起きてください」
「無理だ」
「即答とか」
「沖田って爆睡タイプなんだよ。起きる時はさっさと起きるんだけどな」
「なんで班長そんなこと知っとんねん」
「そりゃ付き合いが長いし」
納得したようなそうでないような……。
「とにかくどないすんねん、これ」
「まあ夢が覚めるまでは、普段通りにするしかないんじゃないのか?」
「普段通りて、どう普段通りすんねんな……」
「そりゃ普段通りに訓練だろ」
キーパー達に指示を出す青井の背中を見ながらぼやく。だが俺以外は早々に気持ちを切り替えたようで、なぜか普通に飛ぶ準備を始めた。
「無茶いうわ……」
「しかたないだろ。沖田が起きるまではこのままなんだから」
「隊長~~」
「無理だ」
再び即答されてガックリする。
「ああ影山」
「なんやねん」
「おにぎり食ったか? さっさと食えよ。今日はファーストから大変だぞ」
「考えたないわ~~」
ヒヒヒッと笑う青井の顔を見ながらため息をついた。
「……あ」
そして大変なことに気がついた。
「おにぎり、これ食べてもうたらもう無いやん。ファースト以降はどないすんねん」
「え、夢なんだから法則無視でおにぎりぐらい出せるだろ」
「わいの夢ちゃうから無理やろ」
青井はそりゃそうだとうなづくと隊長に目を向ける。
「ここは沖田の夢だったんだよな。だったら沖田、影山のおにぎりぐらい出せるよな?」
「無理だ」
「お前の夢なんだから、それぐらい出せよ」
「無茶言うな」
青井の無茶振りに隊長がドン引きしている。そんな二人の様子を見て葛城が笑った。
「班長、すっかりなじんでますね、夢の世界に」
「班長やったらほんまに異世界に飛ばされても平気そうやわ……」
とにかく夢だろうが異世界だろうが、嫁ちゃんのおにぎりを食べへん限りは絶対に飛ばへんからな!
いつものように嫁ちゃんのおにぎりを手にエプロンに出た俺は、目の前の光景に固まった。
「そうだと思いますけど」
「集団で同じ夢を見るって俺達すごくないか?」
「班長、驚くのはそこなん?」
「ん? まずはそこだろ」
マイペースな青井の横に立っている隊長も、俺達と同様に固まっている。いつも冷静沈着な隊長にしては珍しいことだ。
「すごいな、これ。どういうことなんだろう」
そう言いながら班長は、俺達が固まった原因に向かって歩き出した。
「ちょ、班長! 危ないで! 噛まれたらどないすんねん!」
「噛む気ならとっくに噛まれてるだろ。だから大丈夫だって。それに、よく見るとなかなか可愛いじゃないか」
「班長の可愛い範囲、広すぎる……」
俺の横に立っていた葛城君があきれたようにつぶやく。
「葛城君もそこなん? もっと突っ込むべきところ、あるやん?」
「突っ込みは影山さんに任せます」
「なんでやねん!」
そう言い返してから、もう一度目の前の存在に目を向けた。いつもならここは松島基地で、ブルー仕様のT-4が並んでいるはずなのだ。だが今日は違う。
「なんで7機ともドラゴンやねん。しかも青いやん、ブルー仕様やん、なにげに芸こまかいやん。しかもここ、大草原やん、基地どこいったん」
そうなのだ。俺達が立っているのは何故か大草原。そして目の前に並んでいるのはドラゴン。しかも置物でも彫刻でもない生きているドラゴンだ。……そもそも想像上の生き物に、生きてるとか死んでるとかあるんか? まあ動いてるから生きてるんやろうけど。
「こんなん日本に生息してるなんて聞いたことないで」
「俺も聞いたことないです。すごいですね、さすが夢!」
「これ、夢やんな?」
「だと思いますけど」
俺達の困惑をよそに、そいつらは退屈そうに羽を動かしたり首を上下に動かしたりしている。そのうちの一頭(て数えるんか?!)が派手なクシャミをした。クシャミをした途端、その鼻から何か出た。
「火!! あいつ、鼻から鼻水やのうて火を出しよったで!!」
「すごいな、本当にファンタジーだ。影山さんの五番機君、火を吐くんですね。俺の六番機君も同じなのかな」
「……いややわ。絶対飛びたないわ……つかプリタクどないすんねん」
「なんだかんだ言いながらも影山さん、飛ぶ気じゃないですか」
葛城が笑う。
「あんなんと一緒に飛んでみい。うっかりしたらコンガリ君やで。絶対に飛びたないわ」
「おにぎりが焼きおにぎりだな!」
「班長、笑ってる場合ちゃうし」
俺以外はすっかり夢の設定になじんできている。なんでそんなに順応力高いんや。
「まったく、これ、誰の夢やねん。家で寝る前にファンタジー映画みたんは誰や?!」
何故か隊長が変な咳をした。まさか、隊長の夢?!
「なに見たんだよ、沖田」
「いや、俺ではなく娘が見てた……」
まさかの流れ弾的トバッチリ。いや、隊長のお嬢さんは悪うない。悪いんは夢を見た隊長や。
「隊長、早う起きてください」
「無理だ」
「即答とか」
「沖田って爆睡タイプなんだよ。起きる時はさっさと起きるんだけどな」
「なんで班長そんなこと知っとんねん」
「そりゃ付き合いが長いし」
納得したようなそうでないような……。
「とにかくどないすんねん、これ」
「まあ夢が覚めるまでは、普段通りにするしかないんじゃないのか?」
「普段通りて、どう普段通りすんねんな……」
「そりゃ普段通りに訓練だろ」
キーパー達に指示を出す青井の背中を見ながらぼやく。だが俺以外は早々に気持ちを切り替えたようで、なぜか普通に飛ぶ準備を始めた。
「無茶いうわ……」
「しかたないだろ。沖田が起きるまではこのままなんだから」
「隊長~~」
「無理だ」
再び即答されてガックリする。
「ああ影山」
「なんやねん」
「おにぎり食ったか? さっさと食えよ。今日はファーストから大変だぞ」
「考えたないわ~~」
ヒヒヒッと笑う青井の顔を見ながらため息をついた。
「……あ」
そして大変なことに気がついた。
「おにぎり、これ食べてもうたらもう無いやん。ファースト以降はどないすんねん」
「え、夢なんだから法則無視でおにぎりぐらい出せるだろ」
「わいの夢ちゃうから無理やろ」
青井はそりゃそうだとうなづくと隊長に目を向ける。
「ここは沖田の夢だったんだよな。だったら沖田、影山のおにぎりぐらい出せるよな?」
「無理だ」
「お前の夢なんだから、それぐらい出せよ」
「無茶言うな」
青井の無茶振りに隊長がドン引きしている。そんな二人の様子を見て葛城が笑った。
「班長、すっかりなじんでますね、夢の世界に」
「班長やったらほんまに異世界に飛ばされても平気そうやわ……」
とにかく夢だろうが異世界だろうが、嫁ちゃんのおにぎりを食べへん限りは絶対に飛ばへんからな!
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