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異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?
第九話
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「今夜は田植えを総出でするから飛行訓練は無しだ」
朝のブリーフィング終了直後、青井がそう宣言した。この夢が始まった当初、米作りは葛城が自分達でと申し出ていたんだが、飛行訓練が優先とされたため、現在は総括班長の青井が主導で指揮をとっている。その班長からのお達しだ。誰も逆らえるわけがない。
「拒否権はない。沖田、お前も田植えに参加だぞ。逃げたら承知しないからな」
「人の夢に踏み込んできておいて逃げたら承知しないとか、一体どういうことなんだ」
クギを刺された隊長がため息まじりにつぶやく。夢を見る余地もないほどに爆睡すれば良いのでは?と思わないでもないが、そうなったらそうなったで次の日が大変なことになりそうだ。なんだかんだ言いながらも青井の無茶ぶりに付き合っている隊長は、いろんな意味ですごいと思う。
「飛びたがりのドラゴン達がおとなしゅうしてたらええんやけどな」
「そこは俺が責任をもっておとなしくさせるさ」
「班長が言うとシャレにならんから怖いわ」
一体どんな秘策を考えているのやら。もしかしてドラゴン版マタタビなんてのを見つけてきたとか?
「俺の夢の中で勝手に暴れるな」
「だったら沖田がおとなしくさせるのか?」
「無理だ」
「だろ? だったら俺しかいないじゃないか」
やはりドラゴン版マタタビか?
「ああ、話が横道にそれたな。それでなんだけど、植える米の苗を選定するために、白米の試食会をすることにした。今日の昼は必ずブリーフィングルームに集まるように。昼飯もそこで食べることになるからそのつもりで」
「話がどんどん大きゅうなっとるで。完全に夢からはみ出しとるやん」
「ですね~~」
「俺に許可なく試食会をすることを決めるな」
隊長が不満げに言うが青井も負けていない。
「お前のせいだろ? どの米か決められないって言うから、しかたなく試食会をすることにしたんじゃないか」
「俺はパイロットであって米の評論家じゃない」
「最近は評論家とは言わずにソムリエって言うらしいぞ」
ヒヒヒッと青井が悪い顔をした。
「試食する米はどこで用意するん?」
「今日の担当の給養小隊に極秘で頼んだ」
「さすが班長」
「葛城、そこで青井をほめるな。青井、妙な交換条件を出していないだろうな」
青井の顔がさらに人の悪い笑みを浮かべる。
「袖の下を渡さなきゃ極秘で進められるわけないだろ? だからちゃんと渡したさ。楽しい夢への招待券をね」
「やっぱり……」
その言葉に隊長がガックリと肩をおとした。
「でもどうして極秘なんですか?」
葛城が首をかしげる。
「こんな楽しい夢が基地司令とか偉い連中に伝わったら、せっかくの夢に現実が入り込んで台無しだろ? だから極秘あつかいなのさ」
「なるほど。納得できました。極秘大賛成です」
「だろ?」
「今ので納得なんや……」
俺がそう言うと、葛城も青井と同じ悪い顔をしてみせた。
「偉い人が一緒だったら楽しめないじゃないですか」
「自分のオヤジさんだったらメチャクチャ楽しみそうやけどな」
「イヤですよ。夢の中でまで父親の馬鹿笑いを聞かされるのは。だから隊長以上の偉い人は禁止です」
そういうわけで、極秘の白米試食が行われることになった。
+++
そして昼。
「けっこうな量ですね」
それぞれ品種が書かれたメモと一緒に、握り寿司のシャリ程度の小さなおにぎりが並んでいる。小さくても種類が多いから、全部食べたらかなりの量だ。これでも事前にかなり候補をしぼったというのだから、日本のブランド米おそるべしやで。
「こんなん食べたら、嫁ちゃんおにぎりを入れる胃袋の空きスペースがなくなるで」
「今日ぐらいおにぎり無しで飛んだらどうですか」
「あんな坂崎。嫁ちゃんのおにぎりは特別やねん。その特別な嫁ちゃんのおにぎりが食べられへんなら、わいは絶対に飛ばへんからな」
「まったくも~~、影山先輩もたいがいメンドくさいわ~~」
「やかましいわ」
俺と坂崎の言い合いを見た青井が思案顔になった。
「だったら、沖田と影山以外で最終候補を2つまでしぼるのはどうだ? そして最後は二人でどちらかを選ぶ。これなら、影山も嫁さんのおにぎりが食べられなくなることもないだろ?」
「それならかまへんで。おかず食べながら待っとるわ」
「最後は隊長の沖田に選んでもらおうと思ってたんだけどな。まあそこはしかたがない。二人で仲良く選んでくれ」
そして試食会が始まった。普段は米の味なんて気にしたこともないが、横一列に並んで食べ比べてみると味も食感も色々と違うらしい。
「これ、カレーに合いそうですよ」
「だったら海自カレー用の田んぼでも作るか?」
「やめろ、これ以上、人を増やすな」
「これ、焼肉にタレをつけてワンバンさせたらメチャクチャ合いそうです」
「だったら陸自肉料理用の~」
「だから却下だと言っている」
「これは親子丼に~」
「親子丼がうまいのは陸海空どこだっけ?」
「だから人を増やす前提で米を選ぶな」
「ここは小松の爆音米っしょ!」
「ドラゴンで爆音でますかねえ」
「お前たち、空自由来の米ならいくら増やして良いと考えてないか?」
これ以上あれこれ選んでいたら半分以上の候補が残りそうな勢いだったので、最終的に隊長権限で松島の米を植えることになった。
ただ、田んぼ班の様子からして、絶対に隊長に内緒で増やしそうやったけどな。
朝のブリーフィング終了直後、青井がそう宣言した。この夢が始まった当初、米作りは葛城が自分達でと申し出ていたんだが、飛行訓練が優先とされたため、現在は総括班長の青井が主導で指揮をとっている。その班長からのお達しだ。誰も逆らえるわけがない。
「拒否権はない。沖田、お前も田植えに参加だぞ。逃げたら承知しないからな」
「人の夢に踏み込んできておいて逃げたら承知しないとか、一体どういうことなんだ」
クギを刺された隊長がため息まじりにつぶやく。夢を見る余地もないほどに爆睡すれば良いのでは?と思わないでもないが、そうなったらそうなったで次の日が大変なことになりそうだ。なんだかんだ言いながらも青井の無茶ぶりに付き合っている隊長は、いろんな意味ですごいと思う。
「飛びたがりのドラゴン達がおとなしゅうしてたらええんやけどな」
「そこは俺が責任をもっておとなしくさせるさ」
「班長が言うとシャレにならんから怖いわ」
一体どんな秘策を考えているのやら。もしかしてドラゴン版マタタビなんてのを見つけてきたとか?
「俺の夢の中で勝手に暴れるな」
「だったら沖田がおとなしくさせるのか?」
「無理だ」
「だろ? だったら俺しかいないじゃないか」
やはりドラゴン版マタタビか?
「ああ、話が横道にそれたな。それでなんだけど、植える米の苗を選定するために、白米の試食会をすることにした。今日の昼は必ずブリーフィングルームに集まるように。昼飯もそこで食べることになるからそのつもりで」
「話がどんどん大きゅうなっとるで。完全に夢からはみ出しとるやん」
「ですね~~」
「俺に許可なく試食会をすることを決めるな」
隊長が不満げに言うが青井も負けていない。
「お前のせいだろ? どの米か決められないって言うから、しかたなく試食会をすることにしたんじゃないか」
「俺はパイロットであって米の評論家じゃない」
「最近は評論家とは言わずにソムリエって言うらしいぞ」
ヒヒヒッと青井が悪い顔をした。
「試食する米はどこで用意するん?」
「今日の担当の給養小隊に極秘で頼んだ」
「さすが班長」
「葛城、そこで青井をほめるな。青井、妙な交換条件を出していないだろうな」
青井の顔がさらに人の悪い笑みを浮かべる。
「袖の下を渡さなきゃ極秘で進められるわけないだろ? だからちゃんと渡したさ。楽しい夢への招待券をね」
「やっぱり……」
その言葉に隊長がガックリと肩をおとした。
「でもどうして極秘なんですか?」
葛城が首をかしげる。
「こんな楽しい夢が基地司令とか偉い連中に伝わったら、せっかくの夢に現実が入り込んで台無しだろ? だから極秘あつかいなのさ」
「なるほど。納得できました。極秘大賛成です」
「だろ?」
「今ので納得なんや……」
俺がそう言うと、葛城も青井と同じ悪い顔をしてみせた。
「偉い人が一緒だったら楽しめないじゃないですか」
「自分のオヤジさんだったらメチャクチャ楽しみそうやけどな」
「イヤですよ。夢の中でまで父親の馬鹿笑いを聞かされるのは。だから隊長以上の偉い人は禁止です」
そういうわけで、極秘の白米試食が行われることになった。
+++
そして昼。
「けっこうな量ですね」
それぞれ品種が書かれたメモと一緒に、握り寿司のシャリ程度の小さなおにぎりが並んでいる。小さくても種類が多いから、全部食べたらかなりの量だ。これでも事前にかなり候補をしぼったというのだから、日本のブランド米おそるべしやで。
「こんなん食べたら、嫁ちゃんおにぎりを入れる胃袋の空きスペースがなくなるで」
「今日ぐらいおにぎり無しで飛んだらどうですか」
「あんな坂崎。嫁ちゃんのおにぎりは特別やねん。その特別な嫁ちゃんのおにぎりが食べられへんなら、わいは絶対に飛ばへんからな」
「まったくも~~、影山先輩もたいがいメンドくさいわ~~」
「やかましいわ」
俺と坂崎の言い合いを見た青井が思案顔になった。
「だったら、沖田と影山以外で最終候補を2つまでしぼるのはどうだ? そして最後は二人でどちらかを選ぶ。これなら、影山も嫁さんのおにぎりが食べられなくなることもないだろ?」
「それならかまへんで。おかず食べながら待っとるわ」
「最後は隊長の沖田に選んでもらおうと思ってたんだけどな。まあそこはしかたがない。二人で仲良く選んでくれ」
そして試食会が始まった。普段は米の味なんて気にしたこともないが、横一列に並んで食べ比べてみると味も食感も色々と違うらしい。
「これ、カレーに合いそうですよ」
「だったら海自カレー用の田んぼでも作るか?」
「やめろ、これ以上、人を増やすな」
「これ、焼肉にタレをつけてワンバンさせたらメチャクチャ合いそうです」
「だったら陸自肉料理用の~」
「だから却下だと言っている」
「これは親子丼に~」
「親子丼がうまいのは陸海空どこだっけ?」
「だから人を増やす前提で米を選ぶな」
「ここは小松の爆音米っしょ!」
「ドラゴンで爆音でますかねえ」
「お前たち、空自由来の米ならいくら増やして良いと考えてないか?」
これ以上あれこれ選んでいたら半分以上の候補が残りそうな勢いだったので、最終的に隊長権限で松島の米を植えることになった。
ただ、田んぼ班の様子からして、絶対に隊長に内緒で増やしそうやったけどな。
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