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A Midsummer Night's Dream

月に觴を濫べる

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改めてここまで何が起こったのか、まとめて文字化してみる。
俺自身、理解が追いついていない。

これはどこにでもいる会社員のほのぼの日記である。

始めにクソッタレな同僚やら上司とやら自分含めて「嫌な奴ら」に辟易してた一日の最後。
睡眠薬飲んで、ぼんやり眺めてた呟きに、知り合い思いとコメントした。

残念ながらコメント先は、知り合いどころか親世代に有名だった身持ち崩したエキセントリックな音楽家のアカウントだった、と。

で、更に、毎度繰り返されるクソッタレな一日の中でも本気で最低なクソッタレなそんなある日の午前2時に真素面なのに深夜のノリでその音楽家のファンクラブに入ってしまったと、さ。

そして、せっかくだからとその音楽家についてファンクラブ入った後に興味本位でその経歴を調べたら、なんとなく今の自分と重なって見えてしまった。

というのが今までの話。
えらく短くものを長々と書いただけである。

ここまでも、もうすでに「わ、訳がわからん!」なのだが、ここからはさらに本当に理解不可能な混迷極まる話なんだ。

俺の意思がある意味、ない。
俺が自主的に決めた感じがしない。

見えない糸が絡みついて操られるように、ただ翻弄されて。まるで魂のない機械人形のように。それが、俺の本質だったとでもいうように。俺の世界が終わる青空まで、踊れとでもいうのか?

HPなどを確認すると、どうもその音楽家は活動再開している。
この疫病下でもコンサートをしていたらしい。

さすが説諭で傲慢さを指摘されたエキセントリックな方だ。常人ならやらない。ましてやエンタメ。「世論」ってやつがあるからまず避けるだろ。誰か止めてやれよ。

「音楽家」のファンクラブのサイトに最終公演とチャリティーコンサートの告知が書いてあった。

記載によれば、どうもプラチナチケットらしく一日で完売したらしい。
そりゃそうだ。いくらなんでも人数制限もあるし、まじで信者しか行かなきゃプラチナチケット化するだろとしか思えない。

そんな最近の苛立ち含めて、身の上話ってやつを近所の喫茶店で店主に愚痴っていた。

嫌なことがあると大体、ここに逃げ込む。温かな避難先。
ストレスフリーな職場ではない俺には「大切な場所」。

なんと店主はその音楽家を知っていた。当たり前か。俺ですら知っていたのだから。ただ、活動していたことは知らなかった。だろうな。

薬物で捕まっているは、疫病下だ。常識ってなんだろ?
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