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A Midsummer Night's Dream

人の成すことには潮時がある

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Das Neujahrskonzert に向かって走るかのように、空っぽだった電車は進む。

こんな日に限って1時間に一本しかない電車はすぐに来た。
わざわざ時間なぞ調べなかったのに、更にムカついてくる。

段々と混み合ってくる電車の中で、一体どこで自分は間違えたのか、ぼんやり車窓を眺めながら考えていた。

もちろん仕事はしてきた。プロ意識もあるし、知識は惜しみなく後輩達に渡してきた。

疫病下でもコミュニケーションを気軽に取れるように雑談チャットも管理運用してきた。

そう、それはそれは機械人形のように。模範囚を装った。反省したかのように。

ただ、どうしてもやはり我慢できないことがあり、歯車が狂い始める。

俺は新しく入って来た係長が気に入らなかった。
同い年なのに、彼方は昇進昇格試験がない。

製品の知識もなければ、国家資格持ちですらないのに。

それでも会社が決めたこと。
俺の仕事量の20%ぐらいに、育ってきた若手を渡した。

だが、俺の前から企画され、俺が計画したことを実行するだけで手一杯。

若手のスケジュールすら把握出来ていなくて危うく仕事を落としかけるは、開発者に全部訊けばいいと思って、ろくに技術も調べずに開発に「教えてください」と言って、連勤中の開発者にブチギレられる始末だった。

確かに「いい人」ではあるんだろう。
俺よりずっと、気性は穏やかだ。

俺のように確かに熱意と情熱と行動力でできた「殺傷能力のある弾丸」ではない。

「いい人」。

だが、仕事はプロの集まりであり、会社にとって、いい人であるかどうかはどれだけ会社に貢献したか、でしかないという俺とは決定的に考え方が合わなかった。

残酷な事実として、この適当な無計画な夢しか語らない係長を課長や部長は好んでいたのは、わかっていた。

何故なら、俺はプロ意識とは、はっきりと「できない」ことは「できない」というものだと思っているし、だから、常に現実しか言わない。

夢を語っても飯は食えない。
社長か、期初計画ぐらいだろう。夢を語るのは。そう判断していたし、それは今も変わらない。

そのいい人は、自部署では好かれていた。「誰が言ったかではない、何を言ったかでしか判断しない。判断基準はメーカーである以上、お客様であり開発だ」と明言している俺よりも。

だから、調子に乗った後輩が労働組合とかに俺を告発した。
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