勇者は世界を平和にする!

幸崎 亮

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さあ平和の時間だ! はじめよう!

エリア1/ 山奥のサンダルフ村

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 俺はサンダルフって村に着いた。
 移動手段? 勇者は飛べる! 問題ない!

 村は思った通り、魔物どもに襲われている。とてもひどありさまだ!
 男は血を流して倒れ、女子供は逃げ惑っている! これぞまさに地獄絵図!
 おのれ魔物め! 許せん!


「おお! 勇者どの! どうかワシらの村をお救いくだされ……!」

 さっそく村長らしき老人が出てきた。

 うぬぬ……! ジジイが出迎えかッ! 不合格ッ!
 しかし俺は勇者! 誰にだって気さくに対応するぞ!


「もちろんだ。俺は勇者だからな! ただし、報酬として村の宝をいただこう!」

「はあっ? なんですと! あの宝だけは渡せませぬ……!」

 なんてケチくさい老人だ! これだから〝よそ者〟嫌いな村はかん!
 あれは平和的活動に必須なアイテムだ! 手に入れないと世界は終わる!

「おい、じいさん! そんなことを言ってる場合か!」

「なりませぬ……。なりませぬ……。あの宝は村の……」

 老人は、ふるふると首を横に振り続けている。

 ええい! もうらちがあかぬッ!
 このジジイが出し渋っている間にも、若い村娘がどんどん犠牲になっているではないかッ! すでに魔物どもの手で、とても言えない行為が始まっている!


「もういい! 宝は裁判を通し、平和的に入手する!」

「だめですじゃ! 宝を渡すならば滅んだほうが……」

平和的解決ピースフルフィスト――ッ!」

 俺は勇者の交渉術・平和的解決ピースフルフィストを発動し、平和的な握手こぶしによって邪魔者ジジイを神の元へ招待した!
 モタモタしていては世界が滅んでしまう! 平和活動は一刻を争うのだ!


 門番を倒した俺は村へ踏み入り、魔物どもをにらみつける!
 さあ平和の時間だ! はじめよう!

平和的制圧ピースフルノヴァ――ッ!」

 ……戦いは一瞬だった。

 俺は右手をかかげ、勇者の奥義・平和的制圧ピースフルノヴァを解き放った!
 天空より燃え上がる業火が村に舞い降り、すべてを等しく焼き尽くす!

「グオオオオ――ッ!」

「ゴェェェ――ッ!」

「きゃあああっ!」

 これは強すぎるがゆえ、自ら使用を禁じた奥義!
 魔物どもは次々に叫び声をあげ、すべてが灰と化してゆく。

 そして、村も全焼だ。おのれ魔物め!


 ――いや、すべての元凶はあの老人!

 奴こそが、村の滅びを画策かくさくした魔王の手先に違いない!
 その証拠に、奴は平和活動を妨害した挙句あげく、『滅んだほうがいい』などと口走っていた!

 だが結果的に、このエリアは平和になった! 悪しき老人と呪われた村は消え、あわれな村人は神の元へ召され、魔物どもは倒されたのだ! 前向きポジティブにいこう!

 ◇ ◇ ◇

 俺は焼け跡に落ちていた〝盾〟を、極めて平和的に手に入れる。

 これこそが村の宝! 聖なる盾〝ユグドシルト〟だ!

 もちろん勇者の盾なので傷ひとつ付いていないぞ!
 それを左腕に装備し、俺は平和になった村をあとにした。

 そう! 世界が勇者を待っている限り、まだ俺の戦いは続くのだ――!



 エリア1:サンダルフ村 【平和完了!】
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