その手は離したはずだったのに

MOMO-tank

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第3話

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「本当にミラ様はエヴァンス小公爵様に愛されていらっしゃいますわね」

「まぁ、ご覧になって。
今も、ミラ様を見つめていますわ」

今夜は結婚後初めての夜会だ。
周りは次期公爵夫人となる私に近づきたいのか、いつの間にか女性陣に囲まれてしまった。

「ミラ様、エヴァンス小公爵様がお手を振っていらっしゃるわ」

「あら・・・・・・」

夫人の目線の先を見れば、確かにマークお兄様が手を上げて微笑んでいた。
軽く手を上げ返すと、お兄様はこちらに向かって来た。

「ミラ、向こうで少し涼もうか。
君の好きなシャンパンも見かけたよ」

「そうですわね」

「まぁ、お熱いですこと」

「羨ましいですわ」

「では、失礼」

素早くエスコートされて女性陣から少し離れると、お兄様は笑い出した。

「遠くから見ても、ミラの引き攣った顔がわかったよ」

「まだ、ああいった事に慣れなくて。
一応、笑顔を貼り付けていたつもりだったんですけど」

「う~ん、見る人が見れば分かるかな」

「・・・・・・そうですか。まだまだですわね」

「大丈夫。徐々に慣れていけば良いよ。
そういえば、母上がミラは優秀だとべた褒めしていたよ」

「お義母様はお優しいですから」

給仕からシャンパンをもらい、お兄様は微笑みながら私に渡してくれる。

「明日から、2週間隣国へ行くけど大丈夫かい?」

「ええ。お義母様に色々と教わることもありますし、後は孤児院で子ども達に刺繍を教えたりといったところでしょうか」

「あまり無理しないようにね」

お兄様は王太子殿下の側近として忙しくしている。
王城に泊まり込む日も何度かあった。

でも、それ以外でお屋敷に帰る日はいつも食事を共にとり、庭でお茶を飲み、私の大好きなマカロンを忘れずに準備してくれる。

目が合えば抱きしめて口づけをして・・・・・・

そして、
『ミラ、愛してる』
愛おしそうに何度もそう言って、私を優しく抱いてくれる。


「ミラ、踊ろうか」

空いたグラスを下げると、お兄様は手を差し伸べてきた。
ブルーの瞳は優しく私を見つめている。

「はい、マーク様」

私は、一度は離したはずのその手に、そっと自分の手を重ねた。





4年後


「また見てるのかい?」

「ええ、だってものすごく綺麗なんですもの」

4年前に隣国へ行ったお兄様からもらったブルーダイヤモンドの指輪は、私の2番目の宝物だ。

お兄様の瞳の色のその宝石は、私達の大切な娘ロージーの瞳の色でもあった。
1番の宝物、ロージーの。

ロージーは2年前に誕生した私達の娘で、ブロンドヘアにブルーの瞳はお兄様にそっくりだ。
ふっくらした真っ白の肌にバラ色の頬を持つロージーは天使のように愛らしい。

どこへ行ってもみんなを虜にして、実家であるスタンリー伯爵家へ帰ればお姫様の扱いだ。
12歳になった弟のチャーリーに懐いているロージーはチャーリーから離れずに、脚にしがみついては弟を困らせている。


「じゃあ、今度はもっと徳大サイズのブルーダイヤモンドを見つけて、愛しの妻に贈るとしよう」

私が笑うと、お兄様は少し熱を帯びた瞳でじっと見つめて、唇を重ねてくる。

「・・・・・・ミラ」

「マーク様・・・・・・」

「今度は、君に似た宝物が欲しい・・・・・・」

重なった唇は次第に濃厚なものへと変わっていき、私達は愛し合った。






その日は、急にお茶会が中止となりお屋敷でのんびり過ごしていた。

「かあしゃま、どーこ?」

ロージーが飽きずに何度も繰り返す隠れんぼが始まった。
本人は隠れているつもりでいるらしいが、カーテンの下から体がまる見えになっている。

「ロージー、どこ?」

「あら?ロージーがいなくなったわ」

探すふりをしていると、見つからないのが嬉しくてキャッキャしながらジャンプをしてカーテンが揺れている。

「ジャーン」

嬉しそうにカーテンを開けて、天使が抱きついてくる。

いつもなら、この後はきまって抱っこを強請るのに、この時は違った。

窓側を向いている私は気づかなかったが、ロージーが何かに反応して急に走り出した。

「にぃに!」

「ロージー、急に走ると危ないわ!」

慌ててロージーを追いかけようと立ち上がり、振り返ると・・・・・・


「ロージー!また遊びに来たよ!」



そこに居たのは・・・・・・

マークお兄様に生き写しの、

金髪碧眼の少年だった。






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