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第2話
「奥様は、いいの?」
「今夜は来ない」
「だからって、悪い人ね」
「そうだね、君の前だと理性を失ってしまう」
・・・これは、決定的な不貞現場、よね。
ローガンが副隊長だった騎士時代には、何度か見たことある光景だった。
でも、結婚してから実際に見るのは初めてだ。
ローガンは、何か話そうとする女性の唇に人差し指を優しく当てると、「黙って」と言い、見つめ合った。
しばらくすると二人の顔が近づいて、唇が重なった。
やがて口づけは激しいへと変わり、ローガンの女性を抱く手つきもいやらしいものへ変わっていく。
「・・・ん~っ・・・んっ、んっ」
声を上げようと暴れるダンの口を押さえる手に少しだけ力を入れる。
二人の唇が離れた時に、女性の顔が目に入った。
この人は・・・
「今夜も君を抱きたい」
ローガンが女性を見つめてそう告げた一瞬、気を取られた私はダンに口元を押さえていた手を払われた。
「旦那様!奥様が!」
ダンの想像以上の大声が回廊と庭園に響き渡ったと同時に、二人が振り返る。
驚愕したローガンと目が合った気がした。
「ダン、手荒なことしてごめんね」
私はダンの体を開放すると、高さのある華奢な靴を脱いで投げ捨て、逆方向の庭園へ走った。
「ジャスミン!待ってくれ!」
遠くから私を呼ぶローガンの声が聞こえたが、無視して私はスピードを上げて走り続けた。
『今夜も君を抱きたい』
か・・・。
『今夜も』
・・・ってことは、何度目かってことか。
あの女性は、舞台女優のカサンドラ・コックス。
ひと月前に私が彼女の舞台を観たいと言って、ローガンが入手困難のチケットを取ってくれた。
舞台終了後に彼女に花束を渡して、サインを貰った。
サインは今も寝室に飾っている。
あの時、すでに親密な関係だったのかな。
気がつけば涙が溢れていた。
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