職場では怖いと噂の旦那さまに溺愛されてます♡

おもち

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《過去 / 高校編》やきもち

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ダーリンと出会ってから、毎日がすごく楽しい。
入学した日からダーリンはいつも僕を「ハニー」と呼んで、優しくて、甘やかしてくれて、本当に大切にしてくれる。僕もダーリンが大好きで、この関係がずっと続けばいいと心から願っていた。

でも、ダーリンは僕にとっての王子様で、世界で一番魅力的な存在だけれど、それは僕だけが知っていることじゃなかった。
ダーリンは背が高くて、顔も良くて、頭も良くて、運動神経も抜群。入学してすぐに学校中の注目の的になっていた。廊下を歩けば女子生徒たちの黄色い声が聞こえ、教室にいると休み時間ごとに誰かがダーリンを訪ねてくる。

最初は「やっぱりすごいなぁ、ダーリンは」と、どこか他人事のように思っていた。ダーリンがみんなに人気があるのは当然だから。




初めて目の前でダーリンが告白されたのは、入学して一か月も経たない頃だった。放課後の教室で、二人で他愛もない話をしていると廊下から一人の女子生徒がダーリンに呼びかけた。
ダーリンは僕に優しく「ちょっと待ってて」と言いながら立ち上がると、彼女の元へと足を運ぶ。

「あなたのことが好きです!付き合ってください!」

ダーリンが彼女の前に立つと、彼女はダーリンに真っ直ぐに気持ちを伝える。
その時、僕の胸の奥に、得体の知れないもやもやとした感情が生まれた。まるで胸の中に冷たい水がじんわりと広がっていくような感覚だった。




それからも、ダーリンへの告白は毎日のように続いた。朝には下駄箱に手紙が入っていたり、昼休みには別のクラスの女子が呼びに来たり、放課後には校門で待ち伏せされていることもあった。
ダーリンは全ての告白を断っているようだったけれど、そのたびに僕のもやもやは募るばかりだった。

いつも僕がダーリンの隣にいるのに、ダーリンがこれだけ告白されるということは、ダーリンは僕には相応しくないのかもしれない。僕には彼しかいないのに。
もちろん、ダーリンが僕のことを大切にしてくれているのは肌で感じている。でも、このもやもやをどうしたらいいのか、さっぱり分からなかった。




ある日の放課後。また一人、ダーリンに告白する生徒がいた。その生徒はダーリンがハッキリと断っても「諦めません!絶対振り向かせます!」と言い放ち、走り去っていった。その様子を見て、僕は俯いて何も言えずにいた。

すると、ダーリンが僕の顔を覗き込むように声をかけてくれる。ダーリンはどこまで優しいんだろうか。

「ハニー、どうしたの。顔色悪いよ?」

心配そうなダーリンの声に、胸のもやもやがさらに大きくなる。でもこの感情をどう説明したらいいのか僕には分からなかった。

「……ダーリンは、モテるね」

精一杯絞り出した僕の言葉に、ダーリンは困ったように眉を顰めて微笑んだ。

「俺はハニーしか見てないよ。…でも、気になるよね」

ダーリンは僕の言葉に優しく頷き、僕の頭をそっと撫でた。その大きな手に包まれると確かに安心する。でも、同時にこのもやもやが、ダーリンの優しさに付け込んでいるような気がして、さらに胸が締め付けられた。ダーリンは悪くない。ダーリンはいつも僕を一番に考えてくれている。なのに、僕は、どうして。

「どうしたらハニーの不安がなくなるかな?」

ダーリンの心配そうな顔を見ていると、僕の中にあったもやもやが、言葉にならない感情として溢れ出しそうになる。

「僕、その…」

言葉を探していると、ダーリンが僕の手をそっと握った。温かくて、大きな、大好きな手。

「もしかして、ハニーは俺が他の誰かに取られちゃうって心配してる?」

ダーリンの真っ直ぐな問いかけに、僕は思わず目を見開いた。図星だった。こんな気持ちを抱えていることを知られたくなくて、ずっと隠していたのに。
僕は何も言えずに俯いた。ダーリンがどれだけ僕を大事にしてくれているか分かっているのに、こんなみっともない嫉妬心をダーリンに知られてしまった。

「嬉しい。そんなに俺のことが好きだなんて知らなかった。想像以上ですごく嬉しい!」
「そんな…僕は、ダーリンのこと、ずっとずっと大好きですよ……!」
「俺も大好きだよ。本当にハニーしか見えてない。ハニーが俺のことを好きでいてくれるようにね?」

ダーリンの言葉に頬が熱くなる。そんな僕を見てダーリンは満面の笑みを浮かべながら、ゆっくりと顔を近づけた。そのままダーリンの柔らかい唇が僕の唇に触れる。
繰り返される啄むようなキスの合間に、小さなため息が漏れた。

「ん、……んっ……♡」

ダーリンの温かさに包まれると、自分の中にあるもやもやが少し溶けていくような感覚があった。
それでもまだ足りなくて、もっと近くに感じたくて。

「もっと……もっとキスして……♡」

僕がねだると、ダーリンは優しく笑って頷いた。
それから今度は深く口づけてくる。唇が触れ合うだけでなく舌先が少しだけ差し込まれる。薄目を開けると、ダーリンの目が優しく微笑んでいるのが見えた。

「んん……っ…!」

それでも物足りなくて、僕の方から口を開けて舌を伸ばし、ダーリンの唇をぺろっと舐める。

「……可愛い…♡もっと欲しい?」

ダーリンの囁きに小さく頷けば、今度はダーリンが僕の頬に手を添えて、舌を伸ばし、口腔内を探るように動き始めた。

「んっ……ふぁ……っ…♡」

互いの舌が絡み合い、熱が高まっていく胸の奥底にあった不安や嫉妬が、ダーリンの温もりと甘いキスで溶かされていくようだった。

「ね、ダーリン…」
「ん?」
「もっと、ダーリンがほしい。嫉妬する隙なんてないぐらい、ダーリンに愛されたい…♡」
「ッ~~……マジで、マジで我慢できなくなるよ?」
「うれしい」

ダーリンは目を細めながら、僕を胸元に引き寄せる。

「もう逃がしてあげないからね。俺の全部を捧げるから、ハニーもそれに応えてよ…?♡」

耳元に囁かれたその声は甘くて熱くて、胸の奥に優しく染み渡る。

いつかまた不安になることはあるかもしれない。ダーリンは完璧な存在だから。けれど、その度にダーリンは僕をどれだけ愛しているのかを伝えてくれるはずだ。

だからもう大丈夫。

僕は世界で一番幸せな「ハニー」なんだ。

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