1 / 1
「普通」になりたい僕の妨害因子
しおりを挟む
人間は異性に恋をする。
恋をして、付き合って、結婚して、子供を産んで。
どこかで順序が逆になったとしても、その相手は異性であることを前提とされる。
もしも、同性相手に恋愛感情を持ってしまった場合、それはイレギュラーとして取り扱われる。
僕は、「普通」から外れることが嫌いだ。嫌いというか、恐れている。
目立ちたくないし、不要な悩みを持ちたくはないし、誰かに迷惑を掛けたくない。
だから、常に平均平凡を貫いてきた。
テストの点数は平均点より少し上、運動は可もなく不可もなく、特技はないけど苦手なこともない。
将来設計だって、「ごくごく普通のサラリーマンになって、一般女性と付き合って、結婚して、子供は2人で…」って、ずっと考えていたんだ。
なのに、
「なんでかなー…」
テレビを点けっぱなしにしたまま、すよすよとリビングのソファに眠る男を見つめる。
何だか憎たらしくて、ソファの下に座り込み、人差し指で頬をつつくも反応はない。
よくこんなところで大爆睡できるな、と思いながら、頬をつつく手を今度は自分の右頬に添えて、ソファに頬杖をついた。
どこをどう見たって、目の前の男は女の子のようにか弱そうな体でも、可愛い顔つきでもない。
何なら、自分より大柄で、同じ大学の同期の間では男前だと呼び声も高い。
どこかのキャリアウーマンなお笑い芸人が、この世界に男は35億いると言っていた。
なら、女性だって同じように、この世界には大体35億いるのだろう。
街を歩けば、たくさんの女性がいて、大学生活を過ごしていれば、それなりに女性と会話をする。
それなのに、なんで、どうして。
思わず溜息を吐くと、前方からくぐもった声が聞こえる。
「どうした?お前お得意の考え事か?」
僕の襟首を乱雑に撫でながら、寝起きの声で問う。
「真面目に物事を捉えて考えることができるのが、僕の専売特許なんで」
やれやれと言いたげな口調にムッとして、機嫌を悪くしたことを隠さないまま言葉を返す。
僕が顔を横へ逸らすと、それとは反対に、僕に向き合おうと仰向きに寝ていた体をゆっくりと横向きにする。
「で、今度は何を考えてんだ?」
「わざわざ言うようなことじゃない」
「言えよ。お前は頻繁にこうして聞いてやらないと、意味の分からない思考回路で、とんでもない終着地点にたどり着く」
ぞんざいな言い方に、それが恋人に対する態度かと睨みつける。
しかし、全然意に介されず、噛み殺すこともしないで、ソファに寝そべったままの男は盛大に欠伸を漏らす。
こんな状態で真面目な話をしても無駄だと、その場から離れようとしたとき、左腕を掴まれてソファへと引きずり込まれる。
「どうせ下らない事を考えてたんだろ」
上半身だけ相手に覆いかぶさる体勢に、すぐに起き上がろうとするも、背中に回された腕がそうはさせないと邪魔をする。
「下らないことって、僕は真剣にどうあるべきかを」
「どうあるべきって、そんなのは、考えたって上手くいかないことのが多いんだよ」
抗うべく力の限りソファを押していた両腕は限界を迎える。
力比べに白旗を振り、観念して寝そべる体に自分の体重を預けた。
満足したのか、ぽんぽんと、またもや雑な手つきで背中を叩かれる。
しかし、雑とは言えど、それに痛みや大きな衝撃はなく、その手はいつも自分に心地よい振動を与えてくれる。
「自分のしたいようにすりゃいい。お前のしたいことなら、俺も手助けしてやるさ」
その声は決して真面目なトーンではなく、むしろ今にもこのまま僕を腕に閉じ込めたまま、寝入ってしまいそうな声だった。
男で、乱雑で、不真面目で。
自分の理想として描いていた恋人像とは、全く遠くかけ離れている。
それなのに、なんで、どうして。
小さな寝息が聞こえて、目を閉じる。
温かい体温に微睡みながら、軽く服の裾をギュッと掴んだ。
こいつじゃなきゃ、ダメなんだろう。
恋をして、付き合って、結婚して、子供を産んで。
どこかで順序が逆になったとしても、その相手は異性であることを前提とされる。
もしも、同性相手に恋愛感情を持ってしまった場合、それはイレギュラーとして取り扱われる。
僕は、「普通」から外れることが嫌いだ。嫌いというか、恐れている。
目立ちたくないし、不要な悩みを持ちたくはないし、誰かに迷惑を掛けたくない。
だから、常に平均平凡を貫いてきた。
テストの点数は平均点より少し上、運動は可もなく不可もなく、特技はないけど苦手なこともない。
将来設計だって、「ごくごく普通のサラリーマンになって、一般女性と付き合って、結婚して、子供は2人で…」って、ずっと考えていたんだ。
なのに、
「なんでかなー…」
テレビを点けっぱなしにしたまま、すよすよとリビングのソファに眠る男を見つめる。
何だか憎たらしくて、ソファの下に座り込み、人差し指で頬をつつくも反応はない。
よくこんなところで大爆睡できるな、と思いながら、頬をつつく手を今度は自分の右頬に添えて、ソファに頬杖をついた。
どこをどう見たって、目の前の男は女の子のようにか弱そうな体でも、可愛い顔つきでもない。
何なら、自分より大柄で、同じ大学の同期の間では男前だと呼び声も高い。
どこかのキャリアウーマンなお笑い芸人が、この世界に男は35億いると言っていた。
なら、女性だって同じように、この世界には大体35億いるのだろう。
街を歩けば、たくさんの女性がいて、大学生活を過ごしていれば、それなりに女性と会話をする。
それなのに、なんで、どうして。
思わず溜息を吐くと、前方からくぐもった声が聞こえる。
「どうした?お前お得意の考え事か?」
僕の襟首を乱雑に撫でながら、寝起きの声で問う。
「真面目に物事を捉えて考えることができるのが、僕の専売特許なんで」
やれやれと言いたげな口調にムッとして、機嫌を悪くしたことを隠さないまま言葉を返す。
僕が顔を横へ逸らすと、それとは反対に、僕に向き合おうと仰向きに寝ていた体をゆっくりと横向きにする。
「で、今度は何を考えてんだ?」
「わざわざ言うようなことじゃない」
「言えよ。お前は頻繁にこうして聞いてやらないと、意味の分からない思考回路で、とんでもない終着地点にたどり着く」
ぞんざいな言い方に、それが恋人に対する態度かと睨みつける。
しかし、全然意に介されず、噛み殺すこともしないで、ソファに寝そべったままの男は盛大に欠伸を漏らす。
こんな状態で真面目な話をしても無駄だと、その場から離れようとしたとき、左腕を掴まれてソファへと引きずり込まれる。
「どうせ下らない事を考えてたんだろ」
上半身だけ相手に覆いかぶさる体勢に、すぐに起き上がろうとするも、背中に回された腕がそうはさせないと邪魔をする。
「下らないことって、僕は真剣にどうあるべきかを」
「どうあるべきって、そんなのは、考えたって上手くいかないことのが多いんだよ」
抗うべく力の限りソファを押していた両腕は限界を迎える。
力比べに白旗を振り、観念して寝そべる体に自分の体重を預けた。
満足したのか、ぽんぽんと、またもや雑な手つきで背中を叩かれる。
しかし、雑とは言えど、それに痛みや大きな衝撃はなく、その手はいつも自分に心地よい振動を与えてくれる。
「自分のしたいようにすりゃいい。お前のしたいことなら、俺も手助けしてやるさ」
その声は決して真面目なトーンではなく、むしろ今にもこのまま僕を腕に閉じ込めたまま、寝入ってしまいそうな声だった。
男で、乱雑で、不真面目で。
自分の理想として描いていた恋人像とは、全く遠くかけ離れている。
それなのに、なんで、どうして。
小さな寝息が聞こえて、目を閉じる。
温かい体温に微睡みながら、軽く服の裾をギュッと掴んだ。
こいつじゃなきゃ、ダメなんだろう。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる