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三階角部屋のアサヒナセンパイの自室に入る前に、ちらりとドアのプレートを確認したが、どうやら同室者はいないらしい。
『朝比奈柊馬』。
ようやく朝比奈先輩の漢字ネームを知ることがきて少し嬉しい。何度か耳にはしていたけど、どういう漢字で書くのかな、と疑問に思っていたから。
それにしても、オレはいつになったら下ろしてもらえるんだろうか……。
「よっと」
「わっ!?」
いきなりベッドの上に放り投げられた。
ふわふわだから別にどこも痛くないけど、こんな下ろし方ってあり!?
そして朝比奈先輩は何故か足を固定するようにオレの上に腰を下ろすと、いきなりシャツを脱ぎ始めた。
「へ?」
何故わざわざ人の上に座って着替え始めるのだろうか……。
うわぁ、こんな筋肉ムキムキの人雑誌やテレビ以外で初めて見た。なんかスゴイ! ってか綺麗!
まるで漫画みたいだ。一昨日も思ったけど、ホントに同じ高校生か?
って、現実逃避してる場合じゃない。
着替えるんだと思っていたけど、朝比奈先輩は服を着る気配がない。
それどころか、今度はオレの制服に手をかけてきて……
って、なんで―――!?
「ちょちょちょ、ちょっと朝比奈先輩!? 何すんですか!! 何でオレまで脱がせようと!?」
「え? 服着たままするのが好きなのか?」
「なな、なにをですかぁ!?」
「いや……何ってセックス」
「は?」
今、なんと?
オレの人生において、過去にも未来にも一番関わりのない単語が聴こえたような気がしたんですけど……。
「だからァ、要するにオマエは『先日は助けてくれてありがとうございます、身体でお礼させてください!』って言いたかったんだろ?」
「いやちょっ……えぇ?」
なんかこの人盛大に勘違いしてる!!
生きてる世界線が違いすぎるんですけど――!!??
「何でいきなりカマトトぶってんのか知んねぇけど、1年でそんな髪色にしてるくらいだから男の扱いなんざ朝飯前だろ? まー俺も普段はこんな簡単に手ェ出さねえンだけど、その顔でお願いされたらなぁ~、男として据え膳食わぬはなんとやら」
「す、据え膳って……あの、違います!」
なんでオレの方がお願いしたことになってるんだよ!!
むしろ勘違いしてることを恥だと思えよ!!
「あーもう黙れって、雰囲気出ねェ……授業初日から遅刻したくねぇだろ」
「ンっ!?」
そのとき、オレには周りの景色がすべてスローモーションみたいに見えて、そこで初めて朝比奈先輩の顔もまじまじと見た。
きりっとした太くて整った眉に、大きくも小さくもない切れ長の瞳。鼻筋は通っていて、口唇は薄い。
ただただ怖いという印象が強くて気付かなかったけど、黙っていれば――というか、普通にモテそうなイケメンの部類なのでは……?
そしてオレの口唇は生温くて柔らかいもので塞がれていた。
結構前から。
えっと……オレは今、俗に言うキスをされている……?
状況を理解するまでに数秒――数十秒? かかっていて、抵抗しなければと思ったときには既に朝比奈先輩の顔は少し離れていた。
「は……?」
「いやホンットに可愛いなオマエの顔! スゲー俺好みなんだけど。なのになんでヤリマンなんだよ! 残念すぎるだろ!」
突然眉間に皺を寄せて、苦しそうな表情で何を言いだすかと思えば。
恋愛って何それおいしいの? レベルの童貞処女のオレに向かって、こともあろうに『ヤリマン』?
それって普通は女性に向けて使う言葉では……。
いや女性に対しても言っていいわけないんだけど。
あれー? もしや朝比奈先輩ってオレのこと女だって勘違いしてる感じ?
「あの、実はオレ男なんです……」
「それは分かってンよ?」
分かってるんかい。
「じゃあなんでオレのことヤリマ……ゴホンッ! とか、そんなふうに言うんですか? 初対面の人間に対して失礼すぎるんじゃ」
「はァ? 図星だからっていきなりキレてんじゃねーよ。オマエのツラはまっっじで好みだけどな、俺はヤリマンは大嫌いなんだよ! ゴミカス共にチヤホヤされてるからって調子ン乗ってんじゃねーぞ」
だから、人のことをヤリマンヤリマンと―――
オレの中で、何かがブチッと切れた音がした。
「だから誰がヤリマンだよッッ!! こちとら生まれて15年間恋人どころか友達だっていたことねーわ! ふざけんなよ!! 人のファーストキスを奪ったあげく一昨日のアレをチヤホヤされてただぁ!? 本気でそう思ってんなら眼科行け眼科ッッ!! それか脳みそCTスキャンされてこいッッ!!」
はあッ……はあッ……
――あれ? 口で言っただけなのに、何故か手も痛いぞ……?
「……てめぇ今、俺様の顔を殴りやがったな……?」
「!?!?」
なんとオレは、ブチ切れて啖呵を切ると同時に、朝比奈先輩の頬を平手打ちしていたらしい。
あんな恐ろしい、笑いながら人を殴る悪魔のような人に……。
あー。オレ死んだ。完璧に死んだ。
享年15歳か。短い人生だったな……。
お父さんお母さん、半ば無理矢理遠い高校に行ってごめんなさい。
すず、死ぬ前にオレと友達になってくれてありがとう。
さようなら……。
『朝比奈柊馬』。
ようやく朝比奈先輩の漢字ネームを知ることがきて少し嬉しい。何度か耳にはしていたけど、どういう漢字で書くのかな、と疑問に思っていたから。
それにしても、オレはいつになったら下ろしてもらえるんだろうか……。
「よっと」
「わっ!?」
いきなりベッドの上に放り投げられた。
ふわふわだから別にどこも痛くないけど、こんな下ろし方ってあり!?
そして朝比奈先輩は何故か足を固定するようにオレの上に腰を下ろすと、いきなりシャツを脱ぎ始めた。
「へ?」
何故わざわざ人の上に座って着替え始めるのだろうか……。
うわぁ、こんな筋肉ムキムキの人雑誌やテレビ以外で初めて見た。なんかスゴイ! ってか綺麗!
まるで漫画みたいだ。一昨日も思ったけど、ホントに同じ高校生か?
って、現実逃避してる場合じゃない。
着替えるんだと思っていたけど、朝比奈先輩は服を着る気配がない。
それどころか、今度はオレの制服に手をかけてきて……
って、なんで―――!?
「ちょちょちょ、ちょっと朝比奈先輩!? 何すんですか!! 何でオレまで脱がせようと!?」
「え? 服着たままするのが好きなのか?」
「なな、なにをですかぁ!?」
「いや……何ってセックス」
「は?」
今、なんと?
オレの人生において、過去にも未来にも一番関わりのない単語が聴こえたような気がしたんですけど……。
「だからァ、要するにオマエは『先日は助けてくれてありがとうございます、身体でお礼させてください!』って言いたかったんだろ?」
「いやちょっ……えぇ?」
なんかこの人盛大に勘違いしてる!!
生きてる世界線が違いすぎるんですけど――!!??
「何でいきなりカマトトぶってんのか知んねぇけど、1年でそんな髪色にしてるくらいだから男の扱いなんざ朝飯前だろ? まー俺も普段はこんな簡単に手ェ出さねえンだけど、その顔でお願いされたらなぁ~、男として据え膳食わぬはなんとやら」
「す、据え膳って……あの、違います!」
なんでオレの方がお願いしたことになってるんだよ!!
むしろ勘違いしてることを恥だと思えよ!!
「あーもう黙れって、雰囲気出ねェ……授業初日から遅刻したくねぇだろ」
「ンっ!?」
そのとき、オレには周りの景色がすべてスローモーションみたいに見えて、そこで初めて朝比奈先輩の顔もまじまじと見た。
きりっとした太くて整った眉に、大きくも小さくもない切れ長の瞳。鼻筋は通っていて、口唇は薄い。
ただただ怖いという印象が強くて気付かなかったけど、黙っていれば――というか、普通にモテそうなイケメンの部類なのでは……?
そしてオレの口唇は生温くて柔らかいもので塞がれていた。
結構前から。
えっと……オレは今、俗に言うキスをされている……?
状況を理解するまでに数秒――数十秒? かかっていて、抵抗しなければと思ったときには既に朝比奈先輩の顔は少し離れていた。
「は……?」
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突然眉間に皺を寄せて、苦しそうな表情で何を言いだすかと思えば。
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あれー? もしや朝比奈先輩ってオレのこと女だって勘違いしてる感じ?
「あの、実はオレ男なんです……」
「それは分かってンよ?」
分かってるんかい。
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「はァ? 図星だからっていきなりキレてんじゃねーよ。オマエのツラはまっっじで好みだけどな、俺はヤリマンは大嫌いなんだよ! ゴミカス共にチヤホヤされてるからって調子ン乗ってんじゃねーぞ」
だから、人のことをヤリマンヤリマンと―――
オレの中で、何かがブチッと切れた音がした。
「だから誰がヤリマンだよッッ!! こちとら生まれて15年間恋人どころか友達だっていたことねーわ! ふざけんなよ!! 人のファーストキスを奪ったあげく一昨日のアレをチヤホヤされてただぁ!? 本気でそう思ってんなら眼科行け眼科ッッ!! それか脳みそCTスキャンされてこいッッ!!」
はあッ……はあッ……
――あれ? 口で言っただけなのに、何故か手も痛いぞ……?
「……てめぇ今、俺様の顔を殴りやがったな……?」
「!?!?」
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あんな恐ろしい、笑いながら人を殴る悪魔のような人に……。
あー。オレ死んだ。完璧に死んだ。
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