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〃
「……マジでヤリマンじゃねぇのか?」
「へ?」
仏のように穏やかに目を瞑り、殺されるのを今か今かと待っていたオレの上に降ってきたのは―――暴力ではなく意外な言葉で、その内容もかなり想定外のものだった。
思わずぱちっと目を開けてしまうくらい。
当然目の前にいる朝比奈先輩と至近距離で目が合ったが、彼はもう恐ろしいまでの怒気はまき散らしておらず、心なしかオレに対して少し怯むような態度を見せた。
「だからァ、今まで恋人も友達もいないってのはマジなのかよ。その―――セフレとかも」
「いるわけないでしょ、コミュ障なめんなよ……」
なんとなく強気な態度で答えた。
一度死を覚悟した人間は強い。
「えーとオマエ……なんて名前だったっけな。サガノメグミ?」
「サイガノゾミです」
惜しい!
どっちにしろ女みたいな名前の印象を持っていたことは分かった。
「斉賀……ノゾミか」
「はい」
「えっと……とんでもない誤解して、最低なこと言って悪かったな」
……!
朝比奈先輩って、ごめんなさいが言える人だったのか。
こういう不良? の人達は謝罪のしゃの字も知らないと勝手に思ってた。
これもオレの勝手な偏見だったってことか。
「オレの方こそ、殴ったりしてごめんなさい」
「別にいいぜ、蚊が止まったのかと思ったし」
「……」
そりゃあそうでしょうよ。
こんな細腕に殴られたところでね……(でもさっきの態度はとても蚊を相手にしたような感じじゃなかったけど!)
「つーかオマエ凄ェな。この俺に一発くれたこともだけど、ヘタすりゃ10倍返しされるかもしんねェってのにあんな冷静でいられるなんて並の神経じゃねェよ」
「いや、それはデスネ……」
死を覚悟していただけです。
言うか迷っていたら、突然頭を撫でられた。
わしゃしゃーって、動物にするみたいに。
思わず顔を上げて朝比奈先輩を見たら、何故か満足げな――優しい笑顔をオレに向けていた。
目が合った途端、心臓が震えたような気がした。
「同じ寮生だし、これからもよろしくな。何か分かんねェことがあったら何でも聞けよ」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします……!」
朝比奈先輩は笑うとわりと童顔で、少しだけ顔をのぞかせる八重歯が可愛い、と思った。
「でもオマエさ、ヤりたくねぇならこんな簡単に着いてきたらダメじゃねェか! 相手が俺でよかったけど普通ならとっくに犯されてンぞ? 男子校ってのはホモのスクツなんだからよぉ」
「スクツじゃなくて巣窟では……ていうかアナタに担がれてきたんですけど……」
「まあまあ、細けェことは気にすんなよ」
「……」
しばし、沈黙が訪れた。
えっとそもそもオレは、なんでここに来たんだっけ? (無理矢理担がれてきたのは置いといて)
あ、そうだ。ちゃんとお礼を言うんだった。
「あの。食堂でも言ったんですけど本当に助けてくださってありがとうございました。あのとき朝比奈先輩が来てくれなかったら、ほんとに今頃どうなっていたことやら……」
考えただけで恐ろしい。
というか、あの三人組はどうなったんだろう。
「あーまあ、俺のナワバリでおイタしようとしてたのがあいつらの運の尽きだったな。気にすんなよ」
「朝比奈先輩の縄張りってどこからどこまでなんですか?」
オレは今日から、朝比奈先輩の縄張り以外のところには近づかないようにしよう。
君子危うきに近寄らず――
「この学校の敷地全部だな!」
「……」
広すぎッッ!!
再度訪れる沈黙。
もうこの際だからあの希望を言ってしまうか。もう言える好機は無さそうだし……。
「あの、朝比奈先輩。オレを舎弟にしてくれませんか!?」
「は?」
後半の勢いが強すぎて、ちょっと引かれてしまった。
でも、オレは諦めない!
諦めたらそこで試合終了だから!!
「お、オレみたいな弱い奴が舎弟だなんて恥ずかしいかもしれないですけど、オレは朝比奈先輩みたいに強くてカッコイイ男になりたいんです! どうかお願いします!」
「……」
ちらりと朝比奈先輩の顔を伺うと、満更でもない顔をしている。
これはもう一押しってところか。
「俺が強くてカッコイイのはその通りだけどよ、舎弟って」
「だめですか? なら子分でもいいです」
意味は一緒だけど!
すると突然朝比奈先輩が身を乗り出してきて、オレの頭というか顔? をガシッと掴んできた。
そして、キスをする寸前まではいかないけどギリギリまで顔を寄せてきて、こう囁いた。
「希、教室に行ったら誰でもいいから俺の噂をなんか一つでも聞かしてもらえ。絶対に何か一つは知ってる奴がいるから。もしそれを聞いてもお前の気が変わらなかったら――」
「舎弟にしてくれるんですか?」
「ンンッ、とりあえず放課後に生徒会室に来い。いいか、気が変わらなかったらだぞ。無理強いはしねぇからな」
「はい……」
またわしゃしゃ、って頭を撫でられた。
なんだか誤魔化されたような気がしないでもないけど、頭を撫でられるのは別に嫌じゃなかった。
相手が朝比奈先輩だからかもしれない。
「へ?」
仏のように穏やかに目を瞑り、殺されるのを今か今かと待っていたオレの上に降ってきたのは―――暴力ではなく意外な言葉で、その内容もかなり想定外のものだった。
思わずぱちっと目を開けてしまうくらい。
当然目の前にいる朝比奈先輩と至近距離で目が合ったが、彼はもう恐ろしいまでの怒気はまき散らしておらず、心なしかオレに対して少し怯むような態度を見せた。
「だからァ、今まで恋人も友達もいないってのはマジなのかよ。その―――セフレとかも」
「いるわけないでしょ、コミュ障なめんなよ……」
なんとなく強気な態度で答えた。
一度死を覚悟した人間は強い。
「えーとオマエ……なんて名前だったっけな。サガノメグミ?」
「サイガノゾミです」
惜しい!
どっちにしろ女みたいな名前の印象を持っていたことは分かった。
「斉賀……ノゾミか」
「はい」
「えっと……とんでもない誤解して、最低なこと言って悪かったな」
……!
朝比奈先輩って、ごめんなさいが言える人だったのか。
こういう不良? の人達は謝罪のしゃの字も知らないと勝手に思ってた。
これもオレの勝手な偏見だったってことか。
「オレの方こそ、殴ったりしてごめんなさい」
「別にいいぜ、蚊が止まったのかと思ったし」
「……」
そりゃあそうでしょうよ。
こんな細腕に殴られたところでね……(でもさっきの態度はとても蚊を相手にしたような感じじゃなかったけど!)
「つーかオマエ凄ェな。この俺に一発くれたこともだけど、ヘタすりゃ10倍返しされるかもしんねェってのにあんな冷静でいられるなんて並の神経じゃねェよ」
「いや、それはデスネ……」
死を覚悟していただけです。
言うか迷っていたら、突然頭を撫でられた。
わしゃしゃーって、動物にするみたいに。
思わず顔を上げて朝比奈先輩を見たら、何故か満足げな――優しい笑顔をオレに向けていた。
目が合った途端、心臓が震えたような気がした。
「同じ寮生だし、これからもよろしくな。何か分かんねェことがあったら何でも聞けよ」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします……!」
朝比奈先輩は笑うとわりと童顔で、少しだけ顔をのぞかせる八重歯が可愛い、と思った。
「でもオマエさ、ヤりたくねぇならこんな簡単に着いてきたらダメじゃねェか! 相手が俺でよかったけど普通ならとっくに犯されてンぞ? 男子校ってのはホモのスクツなんだからよぉ」
「スクツじゃなくて巣窟では……ていうかアナタに担がれてきたんですけど……」
「まあまあ、細けェことは気にすんなよ」
「……」
しばし、沈黙が訪れた。
えっとそもそもオレは、なんでここに来たんだっけ? (無理矢理担がれてきたのは置いといて)
あ、そうだ。ちゃんとお礼を言うんだった。
「あの。食堂でも言ったんですけど本当に助けてくださってありがとうございました。あのとき朝比奈先輩が来てくれなかったら、ほんとに今頃どうなっていたことやら……」
考えただけで恐ろしい。
というか、あの三人組はどうなったんだろう。
「あーまあ、俺のナワバリでおイタしようとしてたのがあいつらの運の尽きだったな。気にすんなよ」
「朝比奈先輩の縄張りってどこからどこまでなんですか?」
オレは今日から、朝比奈先輩の縄張り以外のところには近づかないようにしよう。
君子危うきに近寄らず――
「この学校の敷地全部だな!」
「……」
広すぎッッ!!
再度訪れる沈黙。
もうこの際だからあの希望を言ってしまうか。もう言える好機は無さそうだし……。
「あの、朝比奈先輩。オレを舎弟にしてくれませんか!?」
「は?」
後半の勢いが強すぎて、ちょっと引かれてしまった。
でも、オレは諦めない!
諦めたらそこで試合終了だから!!
「お、オレみたいな弱い奴が舎弟だなんて恥ずかしいかもしれないですけど、オレは朝比奈先輩みたいに強くてカッコイイ男になりたいんです! どうかお願いします!」
「……」
ちらりと朝比奈先輩の顔を伺うと、満更でもない顔をしている。
これはもう一押しってところか。
「俺が強くてカッコイイのはその通りだけどよ、舎弟って」
「だめですか? なら子分でもいいです」
意味は一緒だけど!
すると突然朝比奈先輩が身を乗り出してきて、オレの頭というか顔? をガシッと掴んできた。
そして、キスをする寸前まではいかないけどギリギリまで顔を寄せてきて、こう囁いた。
「希、教室に行ったら誰でもいいから俺の噂をなんか一つでも聞かしてもらえ。絶対に何か一つは知ってる奴がいるから。もしそれを聞いてもお前の気が変わらなかったら――」
「舎弟にしてくれるんですか?」
「ンンッ、とりあえず放課後に生徒会室に来い。いいか、気が変わらなかったらだぞ。無理強いはしねぇからな」
「はい……」
またわしゃしゃ、って頭を撫でられた。
なんだか誤魔化されたような気がしないでもないけど、頭を撫でられるのは別に嫌じゃなかった。
相手が朝比奈先輩だからかもしれない。
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