好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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6、山田清白による斉賀希の考察

 食堂から一旦自室に戻りいそいそと登校準備をしていたぼくは、ずっとルームメイトの斉賀希君ことのんちゃんのことを考えていた。
   冷静に考えて、もしかするとあれは拉致だったのかもしれない……と。
 ただあの人はきちんと名乗ってくれたし、部屋番号だって教えてくれた。何よりのんちゃん自ら近付いて行ったし、いきなり担がれてひどく驚いてはいたけど嫌がっているようには見えなかった。
 だからぼくは呑気に『いってらっしゃい』と送り出してしまったのだ。

(他の先輩たちが言動が不穏すぎたけど、別にそんな悪いことは起きないよね……? 寮っていっても学校の敷地内だし……)

 大根農家の三男坊であるぼくは、体格のいい兄二人からよくいじめられていたため、身体の大きい年上の男性はちょっぴり苦手なのだ。(兄達とぼくはちっとも似ていない、あいつらは人間の皮を被ったゴリラだ)
 のんちゃんは顔と名前のせいで小さいころからいじめられていて、小中ともほぼ不登校だったらしい。
 ぼく的にはいい名前だと思うし、顔が原因でいじめられていたなんてにわかには信じられない。いじめていた人間の神経を疑うレベルだ。
 まあそんなこともあり、高校では心機一転イメチェンして高校デビューを試みたらしいんだけど……
 髪の色ピンクにするとか思い切りが良すぎ!! マジで!!
 入学式で初めてのんちゃんを見たときは、地元では見たことのないピンク髪に驚いて即不良認定してしまった。(今思うとごめん、のんちゃん)
 同じクラスになろうとなるまいと、絶対に近付かんとこうと決めたよね。君子危うきに近寄らず。
 それがまさかクラスメイトで、兼ルームメイトだったとは。
 そのうえのんちゃんが学年で三人程度しかいないという奇跡の奨学生だったなんて、誰が予想できた?
 いや無理だよ、予想するのは無理、マジで。
 そんなのんちゃんを遠巻きにしたのはぼくだけでなく、ほぼクラス全員……いや、学年全員? だったけど、そのあと教室で行われた自己紹介でその印象は180度変わった。
 めちゃくちゃ可愛かったんだ……顔が。
 冗談抜きで、自己紹介のときにのんちゃんが顔を上げた瞬間、クラス中がギョッとした。
 いやギョッとどころじゃない、鳩が豆鉄砲を食らったというか――とにかく言葉にならないくらい驚いた、全員。
 あんな空気の読めなさそうなド派手なピンク髪の下に、橋本〇奈ばりの美少女フェイスがくっついてるなんて、もう不良だなんだと遠巻きにしている場合じゃないよ!
 どうにかしてお友達になりたいって思うよ!! 
 人間だもの!! byすずお。
 『不良じゃないから』宣言には心中大爆笑したけど、恥ずかしそうな表情がまた可愛いかった。
 照れ屋の美少女(顔)って最強じゃない? 
 そしてぼくは、その名前に見覚えがあった。
 そう、寮の部屋のドアプレートにぼくと並んでいた名前だ。
 部屋で初めて会ったときは緊張したけど、案の定ぼくは顔も名前も覚えられていなかった。
 それもそのはずというか、教室での自己紹介を約3秒で終わらせたので、のんちゃんのみならず他の奴だってぼくのことなんか覚えていないだろう。(ぼくものんちゃん以外は顔も名前も覚えていないので構わない)
 一対一で話してみた結果……のんちゃんは不良どころかややコミュ障気味で、でもめちゃくちゃ優しくていい子だということが判明した。のんちゃんをイジメていた奴らは間違いなく全員が地獄に落ちるだろう。やったね。
 そしてぼくは再び、今朝のんちゃんを軽々と拉致していった朝比奈先輩なる人物のことを思いだすのだった。
 どうかのんちゃんが無事でありますように。
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