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〃
教室に入ると、どこで聞きつけたのかぼくの周りに顔も名前も覚えていない生徒達がわらわらと集まってきた。
みなまで言うな、お前たちの目的は分かっている。
「なあー山田って斉賀君とルームメイトなんだろ? 昨日はどうだった?」
「あいつってまじで男なの? アレ付いてた……?」
「私服はどうだった? 可愛かった!?」
ほらね。自分で直接聞けばいいものを……なんて情けない。
いやまあ、気持ちは分かるけど。
でもぼくは彼らに何も教えてやらない。
何故なら、答える価値もない質問ばかりだからだ!!
昨日はどうだったって? 楽しくおしゃべりして寝たよ! それ以外にないだろ!
まじで男なのかって? 自分で確かめろ! 犯罪者になりたければな!!
私服は可愛かったか? 可愛い子は何着ても可愛いに決まってんだよ!!
――などと言ってやりたいが、面倒なことになるのが目に見えているのでグッとこらえて、代わりにニコッと人畜無害アルカイックスマイルで言ってやった。
「直接聞いてみたらいいんじゃないかなぁ? 答えてくれると思うよ」
まあ声をかける勇気はないだろうけどな。
すると陰キャ風のメイト数人はすごすごと自分の席へと戻っていった。
今の腹黒ゼロエンスマイルでのんちゃんのみならずぼくにも多少のファンが付いたなんて、この時のぼくには知る由もなかった。
まあどうでもいいけどね。
「なあなあそう言わずに教えてくれよ山田ー、同じクラスのよしみでさ!」
陰キャは消えたけど、陽キャはまだ残ってるんだよなぁ~(クソデカ溜め息)
「じゃあ先にぼくの質問に答えてよ。朝比奈先輩ってどういうひと? 地元じゃ負け知らずの有名人?」
その名前を出した途端、クエスチョンマークを浮かべたのが二人、一瞬で蒼褪めたのが二人いた。
ぼくは地元の人間じゃないから知らないけど、その反応からするとやはり地元じゃ有名らしい。
「ねー誰か教えてよう。教えてくれたら代わりに斉賀君の部屋着のブランド教えるからさぁ~」
「へ、部屋着……ッ!?」
いや、実際はぼくものんちゃんが着てた部屋着のブランドなんか知らんよ。
多分ユニ〇ロだと思う。(適当)だがそれがいい。
すると蒼褪めていたうちのひとりがバッと勢いよく手をあげた。男ってのは本当に馬鹿な生き物だね。
「あ、朝比奈って人はなぁ……」
「うんうん」
クラスメイトの話を要約すると、こうだった。
朝比奈柊馬――それは名前を口にするのも恐ろしい、鬼か悪魔のような男。
ヤクザの大親分の孫で、小学生の頃から酒は飲むわタバコは吸うわ、その上超ヤリチンで泣かした男女は数知れず。
……ん? 男女?(この辺りからだんだんあやしくなってきた)
中学生の頃にここら一帯の高校生を含む不良をボコボコにして、一瞬でその名を轟かせたという……。
「ねー半分以上ウソでしょ? それ」
「ウソじゃないって! 一個上の先輩に聞いたんだからマジだって!」
「大体なんでそんなド不良がこんな坊ちゃん高校に生息してるのさ。――まあ百歩譲ったとして、その程度のワルってことでしょ。本気でワルそーな学校ならこの近くにもあるっぽいじゃん」
ぼくの正論に、事情を知らない二人はウンウンと頷いている。
「そ……こらへんの事情はわかんないけど、とにかくヤバいらしいんだって! それは確かだから!」
「ふぅーん……まあ火のないところに煙は立たぬって言うしね。一応信用してあげよう」
「よっしゃ! じゃあじゃあ、斉賀君の部屋着って……?」
「えーっと、じぇ……ジェラードンポッケ?」
たしかそんな感じの名前の女子の部屋着ブランドがあったような……?
実際はそんなモン着てないんだけど、一応質問に答えてくれたから妄想のご褒美ってワケ。ぼくってなんて優しいんだろう。
「ジェラードンポッケ!? なんかよくわかんねーけど可愛い気がする!!」
「おう!! なんかピンクでふわふわもこもこしてる気がする!!」
「なんとなく角刈りが思い浮かんだけど気のせいだよな!!」
絶対間違ってる気がするけど、まあ正確なブランド名を知ってる男子なんていないっしょ。
「――朝比奈って人さぁ」
近くの席からぼくらのやりとりを聞いていたらしいクラスメイトが、ぼくに聞こえるように話しかけてきた。
「生徒会の人だって俺の先輩が言ってたよ」
「へ?」
生徒会? 先程の武勇伝(笑)が真実なら、一番役員だとか生徒のお手本に向いていなさそうな人が?
「えーっ生徒会役員!? そんな人が素行が悪いワケなくねぇ?」
「いやでもホントだって! 先輩がわざわざ忠告してくれたんだぜ?」
やっぱり噂はただの噂だったのかな……。
いやでも、名前を聞いただけで蒼褪めるほど恐ろしがられるのは、やっぱりそれなりの理由があるはず。
実際に今朝ぼくも彼の姿を見たけど、周囲の人の反応は尋常じゃなかったし。
あと制服のシャツに血が付いてたし。
「おーい席につけー! ホームルームを始めるぞー」
担任の吉永先生が入ってきたのでそこで会話は途切れ、席を離れていたクラスメイト達はそれぞれ戻っていった。
すべての席が埋まっていく中で、少し離れた場所にあるのんちゃんの席は空いたままだった。
朝比奈先輩め、授業前には返すって言ってたのに……。
「あれ? 斉賀は休みなのか?」
やっぱり登校する前に朝比奈先輩の部屋まで迎えに行けばよかった。
僕の友達は今も無事でいるだろうか――。
みなまで言うな、お前たちの目的は分かっている。
「なあー山田って斉賀君とルームメイトなんだろ? 昨日はどうだった?」
「あいつってまじで男なの? アレ付いてた……?」
「私服はどうだった? 可愛かった!?」
ほらね。自分で直接聞けばいいものを……なんて情けない。
いやまあ、気持ちは分かるけど。
でもぼくは彼らに何も教えてやらない。
何故なら、答える価値もない質問ばかりだからだ!!
昨日はどうだったって? 楽しくおしゃべりして寝たよ! それ以外にないだろ!
まじで男なのかって? 自分で確かめろ! 犯罪者になりたければな!!
私服は可愛かったか? 可愛い子は何着ても可愛いに決まってんだよ!!
――などと言ってやりたいが、面倒なことになるのが目に見えているのでグッとこらえて、代わりにニコッと人畜無害アルカイックスマイルで言ってやった。
「直接聞いてみたらいいんじゃないかなぁ? 答えてくれると思うよ」
まあ声をかける勇気はないだろうけどな。
すると陰キャ風のメイト数人はすごすごと自分の席へと戻っていった。
今の腹黒ゼロエンスマイルでのんちゃんのみならずぼくにも多少のファンが付いたなんて、この時のぼくには知る由もなかった。
まあどうでもいいけどね。
「なあなあそう言わずに教えてくれよ山田ー、同じクラスのよしみでさ!」
陰キャは消えたけど、陽キャはまだ残ってるんだよなぁ~(クソデカ溜め息)
「じゃあ先にぼくの質問に答えてよ。朝比奈先輩ってどういうひと? 地元じゃ負け知らずの有名人?」
その名前を出した途端、クエスチョンマークを浮かべたのが二人、一瞬で蒼褪めたのが二人いた。
ぼくは地元の人間じゃないから知らないけど、その反応からするとやはり地元じゃ有名らしい。
「ねー誰か教えてよう。教えてくれたら代わりに斉賀君の部屋着のブランド教えるからさぁ~」
「へ、部屋着……ッ!?」
いや、実際はぼくものんちゃんが着てた部屋着のブランドなんか知らんよ。
多分ユニ〇ロだと思う。(適当)だがそれがいい。
すると蒼褪めていたうちのひとりがバッと勢いよく手をあげた。男ってのは本当に馬鹿な生き物だね。
「あ、朝比奈って人はなぁ……」
「うんうん」
クラスメイトの話を要約すると、こうだった。
朝比奈柊馬――それは名前を口にするのも恐ろしい、鬼か悪魔のような男。
ヤクザの大親分の孫で、小学生の頃から酒は飲むわタバコは吸うわ、その上超ヤリチンで泣かした男女は数知れず。
……ん? 男女?(この辺りからだんだんあやしくなってきた)
中学生の頃にここら一帯の高校生を含む不良をボコボコにして、一瞬でその名を轟かせたという……。
「ねー半分以上ウソでしょ? それ」
「ウソじゃないって! 一個上の先輩に聞いたんだからマジだって!」
「大体なんでそんなド不良がこんな坊ちゃん高校に生息してるのさ。――まあ百歩譲ったとして、その程度のワルってことでしょ。本気でワルそーな学校ならこの近くにもあるっぽいじゃん」
ぼくの正論に、事情を知らない二人はウンウンと頷いている。
「そ……こらへんの事情はわかんないけど、とにかくヤバいらしいんだって! それは確かだから!」
「ふぅーん……まあ火のないところに煙は立たぬって言うしね。一応信用してあげよう」
「よっしゃ! じゃあじゃあ、斉賀君の部屋着って……?」
「えーっと、じぇ……ジェラードンポッケ?」
たしかそんな感じの名前の女子の部屋着ブランドがあったような……?
実際はそんなモン着てないんだけど、一応質問に答えてくれたから妄想のご褒美ってワケ。ぼくってなんて優しいんだろう。
「ジェラードンポッケ!? なんかよくわかんねーけど可愛い気がする!!」
「おう!! なんかピンクでふわふわもこもこしてる気がする!!」
「なんとなく角刈りが思い浮かんだけど気のせいだよな!!」
絶対間違ってる気がするけど、まあ正確なブランド名を知ってる男子なんていないっしょ。
「――朝比奈って人さぁ」
近くの席からぼくらのやりとりを聞いていたらしいクラスメイトが、ぼくに聞こえるように話しかけてきた。
「生徒会の人だって俺の先輩が言ってたよ」
「へ?」
生徒会? 先程の武勇伝(笑)が真実なら、一番役員だとか生徒のお手本に向いていなさそうな人が?
「えーっ生徒会役員!? そんな人が素行が悪いワケなくねぇ?」
「いやでもホントだって! 先輩がわざわざ忠告してくれたんだぜ?」
やっぱり噂はただの噂だったのかな……。
いやでも、名前を聞いただけで蒼褪めるほど恐ろしがられるのは、やっぱりそれなりの理由があるはず。
実際に今朝ぼくも彼の姿を見たけど、周囲の人の反応は尋常じゃなかったし。
あと制服のシャツに血が付いてたし。
「おーい席につけー! ホームルームを始めるぞー」
担任の吉永先生が入ってきたのでそこで会話は途切れ、席を離れていたクラスメイト達はそれぞれ戻っていった。
すべての席が埋まっていく中で、少し離れた場所にあるのんちゃんの席は空いたままだった。
朝比奈先輩め、授業前には返すって言ってたのに……。
「あれ? 斉賀は休みなのか?」
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