好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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35 希、新たな悩みに直面する

 ピンポーン、と備え付きのインターホンの鳴る音でふと目が覚めた。
 起きてすぐ状況が理解できなかったが、今朝熱を出して学校を休んだことを思い出した。
 壁時計を確認すると、丁度お昼を半分過ぎた時刻だった。

「おーいノンタン、大丈夫かー!?」
「あ、朝比奈先輩……っ!?」

 オレはすぐに起き上がると玄関に行き、来訪者を出迎えた。

「なかなか出てこねぇから倒れてンのかと思ったぜ。熱は下がったか?」

 朝比奈先輩、オレを心配してわざわざ昼休みに様子見にきてくれたのか。

「えっと、測ってないので分かんないですけど、多分下がったと思います。わざわざ来て下さってありがとうございます……!」

 オレがそう言うと、朝比奈先輩はオレの額に手を当てて熱を測ってくれた。  
 大きな手の存在にドキドキする。なんだかまた熱が上がりそうだ。

「ン、大丈夫っぽいな。なんかまだ燻ってる気ィすっけど……わざわざってそりゃオマエ、俺ぁ彼氏だぞ? 来るに決まってンだろーよ」
「そ、そういうものですか」
「おう。まあ俺もコイビト見舞うとか初めてだけどなっ」

 それはつまり、今まで彼女が病になった時はわざわざお見舞いまでは来なかった、ということ……?
 嬉しいけど、なんだか過去話で少し複雑な気持ちになった。

「昼メシまだだろ? 購買で買ってきたから食えるモン食えよ」
「えっありがとうございます……! こんなに沢山?」

 朝比奈先輩は昼食らしいサンドイッチのほかに、買ってきた飲み物や菓子パンなどをダイニングテーブルにどんどん広げていった。
 しかし、あきらかに二人分以上の量だ。

「余ったらこけしっちと食えよ、俺は甘いモン苦手だから」
「はい、すずも喜ぶと思います!」

 朝比奈先輩はこんなに世話焼きで優しいのに、なんであんな最低で凶悪な噂ばかり流れてるんだろうか。
 もしかすると、今まで朝比奈先輩に手酷くやられた人たちが腹いせにワザと流しているのかもしれない。
 それとも、こんなに優しくしてもらえるのはオレだけとか?
 ……そうなら嬉しいのになぁ。

「ノンターン、そんなに見つめられたら俺様照れるー」
「ご、ごめんなさい。つい……朝比奈先輩がカッコよくて」

 オレが馬鹿正直に答えると、朝比奈先輩は『ぐぁあっ……!』と妙な声を出しながら眉間を抑え、仰け反っていた。
 なんだろう、そのよくわからないリアクションは……

「ノンタンてホンット天然小悪魔だよな……キスしていい?」
「い、いいですけど……あ、でも風邪だったら移っちゃうかも……」
「俺様は風邪引かねェから大丈夫!」

 風邪を引かないというのは、もしやあの有名な格言(?)のことを言ってるのだろうか――と考えてるうちに、あっという間に唇を奪われた。
 普段すずと過ごしているダイニングで、立ったままキスをするというのはなんだか凄く背徳的な気がして……
 たまらなくなって、朝比奈先輩にぎゅっと抱きついた。

「はあ、ノンタン可愛いなァ……このままベッドに連れ込みてェ~」
「えっ!? そ、それは昼休み終わっちゃいますよ……?」
「いや気にすンのそっち? ……悪い、つい口に出しちまったけど病人に無体働くような真似はしねェよ。ただの願望っつーかな」
「あ、朝比奈先輩は優しいですね……」

 アレやコレは根も葉もない噂だとしても、私生活がやんちゃなのは間違いなさそうなのに、こんなに大事にされるなんて思っていなかった。
 もしかしたらセフレにされて、すぐに飽きて捨てられるのでは……なんてことも考えていたのに。

「だって恋愛は惚れた方が負けだろ? ノンタンに嫌われたくねェし、優しくするだろそりゃあ」
「それなら、負けてるのはオレの方だと思うんですけど」

 だって、オレの方が絶対に朝比奈先輩のことが好きだ。
 朝比奈先輩だって、そのことには気付いているはずだけど。

「ッ、煽ってくるよなァ……さすが小悪魔」
「え!?」

 その、さっきから言われる小悪魔の意味が良く分からないんだけど。
 小悪魔って……つまり小さい悪魔だよな……?

「ノンタン、昨日いきなり俺のセフレは絶対に嫌だって言って泣いただろ。なんでそう思ったのかはわっかんねェけど、だから俺が簡単にノンタンのこと抱いちまったら絶対誤解される気がしてよぉ……」
「あ」

 そ、そういえばそんなことが……あった。
 今思えば失礼すぎる勘違いだったわけだけど……いや、今だって勘違いだったと言い切れる自信はないんだけど!
 え、朝比奈先輩そのことを気にしてるの?

「まあ俺の第一印象も最悪だったろーし、今まで適当に遊んできたことは否定できねェからさ、なんつうかちょっと反省してだな……ノンタンにちゃんと信用されるまで、極力手は出さないようにしようかな、なんて……」
「……!」
「ああ―言うんじゃなかったァァ! ンなこと言って昨日から何度も手ェ出しかけてっからな俺!! だって俺もこんなん初めてだからさァ――!!」
「は、初めて? 何が……」
「もうこれ以上は恥ぃからこの話は一旦終了な! メシ食おうぜメシ! ノンタンも腹減ったろ?」
「は、はい」

 朝比奈先輩、何が初めてなんだろう。
 めちゃくちゃ気になるけど、かなり恥ずかしがってるから無理に聞きだすことはできない。
 オレだって朝比奈先輩が嫌がることはしたくないから。
 朝比奈先輩が買ってきてくれた購買のパンはとても美味しかった。
 なんでもちょっとした有名店から仕入れているらしい。さすがは名門校……!

 そういえば気になることがあったんだった。
 今聞いても大丈夫だろうか。

「あのぅ、朝比奈先輩」
「んー? なァにィノンタン」
「朝比奈先輩はどうしてオレのこと好きになってくれたんですか?」
「んぐふッ」

 オレの質問のタイミングがかなり悪かったようで、朝比奈先輩は盛大に噴きだして噎せていた。
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