好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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36 希、清白に相談する

「のんちゃんただいまぁ。熱は下がったかーい?」
「お帰りすず、なんとか下がったみたい」

 すずが帰ってきたので、ダイニングに顔を出した。
 朝比奈先輩が来て再び上がった熱も寝ていたらまた下がったみたいで、明日の予習などをしていた。

「よかったぁ。明日は一緒に行けるといいね」
「うん。ほんとにごめん、東雲君の勧誘も一人で行かせて……大丈夫だった?」
「ふふふ、東雲君の勧誘は成功したよ! でも聞いて、ぼく朝から色んな人に狙われて大変だったんだよぉ」
「え!?」
「色々と可笑しかったんだけどね~、まあまあ座って話そうよ」

 すずは思い出し笑いをしているけど、色んな人に狙われたなんて穏やかじゃない。
 オレは二人分のお茶を用意すると、朝比奈先輩が買ってきてくれた菓子パンとともにテーブルに出した。
 すずはパンの量に驚いていたけど、予想通り喜んでくれた。

「それでぼくを襲ってきた人たちの正体は橘先輩の信者なんだけど、何故かオネエ言葉でさぁ~。覚えてらっしゃいって悪役しか言わない貴重なセリフも聞けて面白かったよ。まあちーちゃんが助けてくれなかったら笑いごとじゃなかっただろうけどね」
「ち、ちーちゃん……」

 もうあだ名で呼んでるなんて、すずがコミュ強すぎてビビる。
 それに、東雲君がそんなに強いなんて驚きだ。
 首席で入学してるし、まさに文武両道ってやつ?
 何故か東雲君の話をするたびにすずが吹き出すけど、そんなに面白い人だったのか。

「あ、のんちゃんもちーちゃんって呼んだらいいよ。ちーちゃんものんちゃんのことさ……ププッ」
「え? オレのことが何?」
「いや、その……自分で聞いた方がいいかも……」

 意味が分からないけど、オレも早く東雲君に会ってみたいと思った。
 いきなりちーちゃんと呼ぶのはハードルが高くて無理だけど……。

「ていうかごめんね、すず。オレが生徒会に推薦したせいで、そんな危険な目に遭わせちゃって……」
「え、あっ、ぼくこそごめん! 気にしないでって言っても気にするよね。気にさせるつもりはなかったんだけど、でもどうしてもオネエ戦隊のことをのんちゃんに話したかったんだ、許して! ――それにぼくは、ぼくの意志で生徒会に入るって決めたんだから、のんちゃんが謝る必要なんてないよ。大体悪いのはあいつらなんだから。生徒会に入っただけで襲ってくるなんて、マジで頭おかしいよねぇ」
「う、うん……」

 橘先輩にそんな狂気じみたファンというか、すずの言う通り信者……が付いてるなんて、つばめ先輩が心配になる。
 今のところ橘先輩のアプローチを軽くあしらってるみたいだけど、つばめ先輩は橘先輩のことをどう思ってるのかなぁ。

「ねぇねぇ、それより朝比奈先輩がお見舞いに来てくれたとかめちゃくちゃ優しくない? のんちゃん愛されてるね~!」
「う、うん。本当に優しい……よね」

 自分が恋愛初心者すぎて、朝比奈先輩をかなり困らせたことを思いだしてしまった。

「あれ? ……何かあった?」
「あ、いや大丈夫。なんでもないから」
「いやいや何でもないわけなくない? 言いたくなかったら言わなくてもいいけど、話した方が気持ちがラクになると思うな」
「……」

 すずは本当にカウンセラーになるべきかもしれない。
 オレはさっきの出来事をかいつまんで、すずに話した。

「えっと……のんちゃんは朝比奈先輩に自分のどこを好きになったのかって聞いただけなんだよね?」
「うん」
「その質問に朝比奈先輩は困っていた……と。え? ひどくない?」
「いや、オレが悪いんだ。普通そんなこと相手に聞いたりしないって……そんなこと聞かれたの初めてだって言ってたから」
「えぇ~? そうかなぁ、でも普通気にならない? まあ、ぼくも誰かと付き合ったりしたことないから詳しくは分かんないケド」

 すずもオレと同じく恋愛初心者だったみたいでちょっと嬉しい。
 オレよりはそっち方面のことに詳しそうだけど。

「それで、朝比奈先輩は好きになった理由は何も言ってくれなかったの?」
「ううん、顔が好みだからって言ってくれた」
「か、顔だけ!?」
「イヤ、小悪魔がどうとか言ってたけど……う~ん……」

 なんだかすずが眉間に皺を寄せて微妙な顔をしている。
 朝比奈先輩が悪いみたいに思われたら嫌だから、オレは必死に弁解した。

「あ、あのさすず、オレは朝比奈先輩が初恋なんだよね。でも朝比奈先輩はその……経験豊富な女の人とたくさん付き合ってきたみたいだから、そのギャップに戸惑ってるだけだと思うんだ」
「ははあ、ヤリチンの噂は伊達じゃないと……や、ごめん」
「いいんだ。それで、オレがなんで悩んでるのかっていうと……朝比奈先輩はオレと付き合ってくれたけど、このギャップに疲れてすぐにオレと付き合うのがイヤになると思うんだ。だから……」

 言いながら、じわりと涙が浮かんできた。
 それに気付いたすずが、「のんちゃん泣かないで!」と慌ててオレをよしよしと慰めてくれた。
 なんか小さい子供みたいで情けないな、オレ……。

「ぼくから見た朝比奈先輩はすごくのんちゃんのこと好きに見えるし、実際大事にされてるんだから考えすぎだと思うよ? 断言はできないけど……」
「それならいいんだけど……」

 大事にされて嬉しいけど、手を出せないことで逆にオレのことがイヤになってしまうんじゃないか、という不安もあった。
 けど、それはすずには言えなかった。

「そ、そーだ! ぼくも今日購買でパン買ったんだよ、めちゃくちゃ美味しくない? 他にも食べたいのがいっぱいあったから、正直このお土産はめちゃくちゃ嬉しい! ……晩御飯も、このパンで済ましちゃう?」
「これだけだとおやつみたいだから、インスタントスープでも作ろうか」
「うんうん、そだね」

 話題は自然と、今日の晩御飯についてになった。



「……眠れない」

 オレは日中によく寝ていたせいか、夜中の12時を過ぎてもなかなか寝付けなかった。
 眠たくならない理由は、それだけではない気がするけど……。
 朝比奈先輩はいま、何してるんだろう?
 バイトはもう終わったかな。
 この間は朝帰りで、制服のシャツに血が付いていた。
 返り血だと言っていたけど、いくら朝比奈先輩が強くても相手が刃物等を持っていたらけっこう危ないんじゃないだろうか……。
 どうしよう、想像するとますます眠れなくなってしまった。

「……」

 考えた末、オレは今から朝比奈先輩の部屋に行くことにした。
 まだ帰ってないかもしれないけど、帰ってるかもしれない。帰ってきていなかったら自分の部屋に戻るだけだ。
 もし帰ってきていて、夜中に尋ねてきたのだからと身体を求められても……恋人なんだから、構うもんか。
 オレだって、朝比奈先輩に歩み寄りたい。
 すずを起こさぬよう慎重に、音を立てずに部屋を出た。
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