好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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47 希、清原とケンカする

 清原翠人は混乱している。

「ふ、ふふざけんじゃねー、俺は騙されねェぞ……そりゃ、ちょっと距離感おかしいとは思ったけど……あの鬼と恐れられた伝説の不良、朝比奈先輩が笑顔で話してたり、昨夜も人前で堂々と抱きあったりしてたけどそれは何かの間違いで……だって朝比奈先輩がこんなのを恋人にするとか、……」

 ブツブツブツ……
 混乱している清原君を無視して、オレたちは腰を下ろして昼食を再開した。

「あいつめちゃくちゃ混乱してるねぇ、ていうかのんちゃん達、昨日人前で堂々と抱きあったりしてたの? そこんとこ詳しく聞きたいなー」
「そ、そんなことしてないよ! トーマ先輩は荷物で両手が塞がってたし、ただ……オレがその、我慢できなくてトーマ先輩の腕にしがみついただけ。でもほんの一瞬だから!」
「え、何が我慢できなかったの?」
「何って……トーマ先輩がす、好きすぎて……?」
「きゃ――!!」
「(ビクッ)」
「すず、急に甲高い声出すからハルが驚いてるよ! オレのことはもういいから今のうちに食べてしまおうよ」
「うん! でもなんか今のでお腹いっぱい、ご馳走さま」

 昨日のことがすずとハルにばれたのはちょっと恥ずかしいけど……やっぱり人前でイチャイチャするのはダメだな、と思った。たった一瞬でも。
 毎回こんなわけのわからない因縁を付けられるとかたまらないし……。
 オレは残りのパンをぎゅっと口に押し込んだ。
 でも、オレ以外にトーマ先輩の舎弟になりたがっている奴がいたなんて、正直なところ少し気にしている。
 中学時代のトーマ先輩を知ってる人は、まず近づかないと思ってたのに。
 これって独占欲ってやつかな……?
 それに、清原君はオレの知らない時代のトーマ先輩を知っているんだ。
 そう思うと、少し悔しくて胸の奥がざわざわした。

「……のんちゃん、なんで傷ついた顔してるの?」

 唐突にすずと――何も言ってないけどハルにも表情で心配されたので驚いた。

「えっ? なんでもないけど……オレ、何か顔に出てた?」
「のんちゃんほど素直な子はなかなかいないでしょ」
「(コクン)」

 そんな、ハルまで!?
 オレ、あんまり顔に出ないタイプだと思ってたのに……やっぱり自己分析間違ってるなぁ。

「斉賀希ィィ……」
「な、なに?」

 落ち着いたのか、清原君が俺たちのほうにゆっくりと近づいてきた。
 つい条件反射で返事をすると、清原君はオレの目前で不良座りをし、首を動かしながらジロジロと色んな角度からオレを睨みつけてきた。
 な、何をしているんだろうか……あ、鳩の真似かな?
 
「てめぇ俺が必殺メンチ切ってんのにキョトン顔してんじゃねーよ!」
「え!?  ご、ごめん、鳩の真似かと思って……オレはどうすればいいの?」
「は、鳩じゃねぇわぃ!! テメーも睨み返せや!!」
「わ、わかった」

 口をむんってして睨み返すと、清原君の口から『ぶほぇっ』と奇妙な音が洩れた。
 別に変顔したわけじゃないんだけど!?
 すずとハルはなんか超笑ってるし……オレもそっちの仲間に入りたい。

「て、てめぇさっきから小馬鹿にしやがって、ふざけんなよ……!!」

 清原君は顔を真っ赤にして怒っている。
 この短いやりとりの間にどこにそんな切れる要素があったんだ?
 別に小馬鹿にしてないんだけど、心外だ!
 なんかもう疲れたな……昼休みも終わりそうだし、別にケンカもしたくないし、話し合いに応じないならサクッと理事長案件にしてしまおう。

「清原君は結局オレにどうしてほしいの? トーマ先輩の舎弟になりたいなら勝手に志願すればいいじゃん、オレは関係ない」

 清原君がトーマ先輩の恋人になりたいんだったら関係あるけど、それ以外のトーマ先輩の交友関係はオレにどうこうできるものじゃない。
 さっきすずが言った通り、最初からお門違いってヤツなのだ。
 オレの態度が変わったのを見て清原君は少し怯んだ様子を見せたけど、すぐにニヤッとして言い返してきた。

「はっ、コイビト様は高みの見物ってか!? 俺はなぁ、朝比奈先輩のそばに誰かがくっついてるってのが許せねーんだよ! あの人には孤高が一番似合うんだ! だから俺は遠くから眺めるだけで満足していたのに……! あの人に憧れて同じ高校に入ったのに、なんっか目障りなピンク頭がしょっちゅう周りをウロチョロしてるから……とどのつまり、見ててムカつくからあの人の前から消えろ、斉賀希!!」

 それが、清原君の本音?
 清々しいほど自分勝手だな……!

「と、トーマ先輩に孤高が似合うとか何わけわかんないこと」
「俺はオマエが知らない朝比奈先輩を知ってんだよ! 勿論カッコイイから女はほっとかなかったけど女は別にいいんだ、先輩を更にカッコ良く見せる付属品としか認識してねぇから。でもてめーは違う、男が朝比奈先輩にくっついてるとか俺は断固認めねぇ!」
「な、何で清原君の許可がいるの?」

 悪口を言われるのは慣れていても、殴り合いは勿論口げんかもまともにやったことがないオレは、清原君の勢いと物言いにぐいぐいと押されていく。

「ていうか朝比奈先輩が本気で男と付き合うわけねーから! あの人の歴代彼女、みんなすっげー美人で巨乳のオネエサマばっかりだぜ!? 勿論中学生だけじゃなくて高校生から社会人までよりどりみどりな! そんな人がオマエみたいなちんちくりんを本気で選ぶわけねーだろ!? 書記の西園先輩ならともかくな! 勘違いしてんじゃねーよ、痛いんだよ!!」
「っ……」

 メチャクチャなことを言われてるのに、なんて言い返したらいいのか分からない。
 それは多分、オレが一番気にしていることを言われたから――……
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