好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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53 希、飾り立てられる

 次の日。

「のんちゃん、起きてるー?」
「起き、てる……」

 声とともにドアをノックされて、すずが顔を出した。

「ていうか、寝た? なんかクマできてるよぉ」
「まあ、少しは……」

 正直に言うと、今日のデートが楽しみすぎてあまり眠れなかった。
 オレは遠足とか修学旅行とか、ぼっちになりそうな学校行事は全て休んできたから、よく聞く『楽しみすぎて眠れない』というのはただの大袈裟な表現だと思っていたんだけど。
 次の日が楽しみすぎると、本当に興奮して眠れないのだと知った。
 それでも少しは寝たけど。

「朝ご飯はコンビニで何か買っていかない? てっちゃんちで食べようよ。みんなへのお土産も兼ねてさ」
「うん、そうしようか」

 オレとすずは身支度を整えると、寮を出た。
 Rhineで送られてきたマップを見ると、テツヤ君の家は本当に学校の近くで、徒歩15分くらいで着く予定だ。
 途中で無事青いコンビニもあり、朝食兼お土産を買った。

「ねぇすず、デートって5千円くらいあれば足りるかなぁ」
「足りるどころか、別にお金いらなくない?」
「えっ!?」
「(朝比奈先輩サイフいるし)――ところでのんちゃん、行きたいところを朝比奈先輩にRhineしたの?」
「ううん。思いつかなくて……でも、トーマ先輩と一緒ならどこでもいいかなぁって」

 自然にノロけてしまった。
 でもすずは嫌な顔一つせず、「ふふ、そうだよね」と優しく言ってくれた。
 いつの間にか閑静な住宅街に入り、テツヤ君の家を見つけようとしたら丁度玄関の前にハルと上妻君、一之瀬君が立っていたのですぐに分かった。
 みんな丁度に着いたみたいだ。

「三人ともおっはよう~!」
「はよーっす! 朝からテンション高ぇな山田は。さっきピンポン鳴らしたとこで、ちょっと待っててってさ」
「りょうかーい!」

 高級住宅地なのか近所のどの家も綺麗で大きくておまけにオシャレな庭も付いていて、テツヤ君もいいところの子なんだな、と実感した。
 数分後、玄関の扉が開いて中からテツヤ君が出迎えてくれた。

「はよーっすみんな、いらっしゃーい!」
「おはようテツヤ君。朝早くからごめんね、今日はよろしくお願いします」
「ていうか今更だけど、朝から大勢で押しかけてごめんね? 家の人は大丈夫?」

 すずが心配そうに聞いた。
 それ、オレもちょっと気にしてた。
 オレとすずは寮生だから親がいないことに慣れちゃってて最初気付かなかったし、上妻君たちが気にする様子もないし、テツヤ君自身がみんなを誘ってたから敢えて聞かなかったけど。

「ああ、オレんち親二人とも海外で仕事してっからこの家は大学生の姉ちゃんと二人で住んでんだ。だから気にしなくていいぜ」
「え、そうなの!? こんな広い家に二人で!?」

 上妻君たちは知っていたらしい。
 だから気にしていなかったのか。

「家の掃除と庭の管理が大変なだけで、広くても特にいいことはないぜ? おーい、姉ちゃーん!」

 テツヤ君が大声でお姉さんを呼んだ。

 ちょっ、まだ寝てたりしたら物凄く迷惑じゃないか!?
 そう思っていたけど、奥のドアから黒縁メガネを掛けた髪の長い、可愛らしい女の人がひょこっと顔を覗かせた。
 テツヤ君と結構似ている……気がする。

「いらっしゃーい。玄関で話してないでさっさとリビングに案内しなさいよ、テツ!」
「へーへー。じゃ、みんな遠慮なく上がってくれぃ」
「おじゃましまーす」
 
 みんなでぞろぞろとテツヤ君の家に上り込んだ。
 靴はちゃんと揃えて……っと。

「初めまして! テツヤの姉の佳織でーす。今日は私も協力するから。好きに着せ替えしていいのはどの子なの?」
「あ、オレ……です」

 着せ替えという単語に少し驚きつつ思わず手をあげたら、お姉さん……佳織さんが近くに来て、頭のてっぺんから足の先までじろじろと見られた。
 な、なんだろう?

「君、もしかして男の子?」
「え、はい男です……斉賀希といいます、今日はよろしくお願いします」
「へ~、これは飾り立てがいがありそうだわぁ……」

 佳織さんはニコッと笑った。
 悪戯っぽい笑顔が特にテツヤ君に似ている。
 女の子と思われていたのがちょっと心外だけど。

「じゃあ私はちょっと服を見つくろってくるから、のぞみちゃんもみんなとコーヒーでも飲んでてね。あ、これお土産? わざわざありがとうー!」
「いえ、よろしくお願いします」

 って、なんでお姉さんが服を選ぶのかな?
 テツヤ君の服を貸して貰うのでは……あ、お姉さんがセンスいいってことかな。
 そうだろう、きっと。

「お土産とかサンキューのんちん! すずちんも! じゃあコーヒー淹れるから、みんなテキトーに座っててくれよ。潤、手伝ってー」
「りょーかい」
「あ、ぼくとのんちゃんはブラックコーヒー飲めません! ごめんね!」
「そうなん? じゃあのんちんとすずちんはカフェオレな~」
「あ、ありがとう」

 コーヒーが飲めないのでどうしようと思っていたから、すずが言ってくれてホッとした。
 自分で言わなきゃいけなかったけど……。
 本当はすずがブラックコーヒーを飲めることをオレだけは知っているので、余計に申し訳ない。
 すずにお礼のアイコンタクトすると、ウインクで返してくれた。
 可愛すぎない?
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