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〃
「じゃーん、完成よっ!」
「おわあぁ! すっげえ可愛いぜ、のんちん!」
女の子の服を着せられ、ウィッグを付けられ、メイクまで。
姿見用の鏡の前まで連れて来られて、オレは自分の姿をまじまじと見た。
「ひえっ……だ、誰?」
そこにはまごうことなき女子がいた。
とても自分とは思えないけど、その正体はオレなのだ。
信じられない。女装っていうか、変装って凄い。
「うふふ。ざっくり編まれたニットが可愛いっ。フレアスカートが女の子らしいし、丈もばっちりね!」
「はぁ」
「ウィッグはズレないように固定したけど、引っ張ったりしたらダメだぜ! でもどうしても取りたかったら取っても大丈夫、のんちん可愛いからウィッグなくてもイケるぜ」
「髪色を誤魔化すためだからね」
「は、はい」
生まれて初めて装着したウィッグは、栗色に近い茶髪ボブだ。毛先だけゆるいウェーブが付いていて、これはテツヤ君が巻いてくれた。
オトコノコなのにこんなことが出来るなんて凄い。
「メイク直しはグロスくらいかな。何か食べたらトイレでささっと塗り直してね。まあティントも塗ってあるから色は落ちないと思うけど……」
「てぃ、てぃんと?」
もう何語なのかすら分からない。
「希ちゃんのパーソナルカラーがイエベ春だからメイクも新鮮で楽しかったわ~、あたしとテツヤ、ブルベ夏とイエベ秋だから今まで使ったことないシャドーも使えたし!」
「い、イエベハル? ブルベナツ? はぁ……?」
全然意味が分からないけど、人名じゃない……よな。
あとで検索して調べてみよう。
「靴は外しでスニーカーにしましょ。テツ、コンビャースの白持ってたわよね? 出してきて」
「了解。のんちんと足のサイズ同じで良かったわ~」
「う、うん」
「バッグはリュックが可愛いかな~、両手開いた方がいいでしょ?」
「そ、そうですね」
なんかもうどうにでもしてくださいって感じだ。
いや、有難いんだけど……想像以上に凄い。
鏡を見返しても、本当にオレかな? って自分で思ってしまうくらいだ。
「のんちん、さっそくすずちん達に見せに行こうぜ~!」
「え? うん……緊張するなぁ」
テツヤ君に腕を掴まれて、階段を下りた。
うわ、なんだかすごく足がスースーする!!
これは不安だ……!
「じゃ―ん!! 見さらせお前ら、のんちんが完成したぞ~!」
「ど、どうでしょう……」
めちゃくちゃハイテンションなテツヤ君に背中を押されて、オレはリビングに入った。
正直恥ずかしいけど、みんなオレを見にわざわざ朝早くに集まってくれてるんだから見せないわけにはいかないのだった。
しかし何故かリビングは不気味なほどにシィィン……と静まり返った。
みんなオレの方をめちゃくちゃ見てはいるんだけど。
え、何で誰もリアクションしてくれないんだ……?
誰か何か言ってくれないとかなり不安なんだけど!
すず!! ハル!!
「あ、あの……変、だよね、やっぱり。女装とか。でもこれにはちょっとした事情があってね、オレってバレないほうが都合いいかなって……」
何か言われる前に、自分で言うことにした。
自分じゃ可愛いって思ったけど、やっぱり他の人から見たら可愛いわけがない。
女装した男なんて不気味に決まってる。
何馬鹿な勘違いしてたんだろ、オレ。
「のんちゃん……ごめん、その、可愛すぎて言葉が出ない」
「え?」
すずの顔が真っ赤になってる。
よく見たら、他の人も同じだった。
「ヤバいヤバい! 俺これ以上斉賀を直視できねぇ!!」
「お、俺も……すまない、のんさん」
上妻君とハルは、赤面してオレから目を逸らしていた。
ど、どういう反応だ? コレ。
「斉賀、めっちゃくちゃカワイイ!! 俺の彼女にしたいくらい!」
一之瀬くんがへらっと笑いながら、褒めてくれた。
やっと普通に褒められて安心した。彼女にはならないけど。
「潤! 抜け駆けは許さねぇぞ!」
「いや、抜け駆けも何も斉賀は朝比奈先輩のカノジョ、いやカレシだろ」
これらの反応を見る限り、もしかして変じゃないってこと?
オレはすずにもう一度聞いてみた。
「すず、この格好変じゃない? 男ってバレないかな?」
「いや男には見えないよ、マジで見えない。ヤバいくらい可愛いし」
変装とはいえ、最初は女装に抵抗があったのに凄く褒められるものだから、もはや抵抗はほとんど無くなっていた。
昔から女みたいって言われるのすごくイヤだったのに、妙な気持ちだ。
トーマ先輩も、可愛いって思ってくれるといいんだけど。
それとも、女装したオレなんてイヤかな……。
「な~斉賀、写真撮っていい?」
「俺も! 親に彼女だって言っていい!?」
「いや普通にダメでしょ、それは」
「ねぇみんな、可愛いでしょー? 希ちゃん。自信作よ!」
佳織さんが片づけを終えたらしく、リビングに戻ってきた。
「「「「グッジョブです佳織さん!!」」」」
おお……四人、ハモッてる。
「ちょっと、オレも手伝ったんだけどぉ~」
「テツヤ君もありがとう」
「へへっ、うーんマジでのんちん可愛いな~! 俺も天才じゃん?」
「テツヤ君は天才っていうか、神様だよ」
「いやいやそこまで崇めてもらわんでも~」
いや本当に、拝み倒したい。
昨日の助け船からデート当日までお世話してくれて、オレは本当に感謝しているんだから。
オレが手を合わせてテツヤ君を拝んでいると――
「ねえ、ちょっとそこのぱっつんの君!」
佳織さんが、指を指してすずを指名した。
黒縁メガネの奥が、キラキラと輝いている。
「え、ぼく? 山田清白です」
「きみもなかなか可愛い顔してるわね! ついでに飾り立ててあげるから二階にいらっしゃいよ」
「えっ……」
「おっ、いいねー! すずちんもいい線行くと思ってたんだよな、俺!」
「ちょ、ちょっと待って? ぼくはただの見物人で……」
「ちょっとテツ、この子の肌ブルベ冬よ!? きゃーっ腕が鳴るわぁ!!」
まさかの展開だ。
すずまで女装――いや、変装することになろうとは。
まだ時間に余裕があったので、オレもみんなと一緒にリビングで楽しみに完成を待つことにした。
あ、ついでにさっきの『いえべはる』という単語を検索するか。
「おわあぁ! すっげえ可愛いぜ、のんちん!」
女の子の服を着せられ、ウィッグを付けられ、メイクまで。
姿見用の鏡の前まで連れて来られて、オレは自分の姿をまじまじと見た。
「ひえっ……だ、誰?」
そこにはまごうことなき女子がいた。
とても自分とは思えないけど、その正体はオレなのだ。
信じられない。女装っていうか、変装って凄い。
「うふふ。ざっくり編まれたニットが可愛いっ。フレアスカートが女の子らしいし、丈もばっちりね!」
「はぁ」
「ウィッグはズレないように固定したけど、引っ張ったりしたらダメだぜ! でもどうしても取りたかったら取っても大丈夫、のんちん可愛いからウィッグなくてもイケるぜ」
「髪色を誤魔化すためだからね」
「は、はい」
生まれて初めて装着したウィッグは、栗色に近い茶髪ボブだ。毛先だけゆるいウェーブが付いていて、これはテツヤ君が巻いてくれた。
オトコノコなのにこんなことが出来るなんて凄い。
「メイク直しはグロスくらいかな。何か食べたらトイレでささっと塗り直してね。まあティントも塗ってあるから色は落ちないと思うけど……」
「てぃ、てぃんと?」
もう何語なのかすら分からない。
「希ちゃんのパーソナルカラーがイエベ春だからメイクも新鮮で楽しかったわ~、あたしとテツヤ、ブルベ夏とイエベ秋だから今まで使ったことないシャドーも使えたし!」
「い、イエベハル? ブルベナツ? はぁ……?」
全然意味が分からないけど、人名じゃない……よな。
あとで検索して調べてみよう。
「靴は外しでスニーカーにしましょ。テツ、コンビャースの白持ってたわよね? 出してきて」
「了解。のんちんと足のサイズ同じで良かったわ~」
「う、うん」
「バッグはリュックが可愛いかな~、両手開いた方がいいでしょ?」
「そ、そうですね」
なんかもうどうにでもしてくださいって感じだ。
いや、有難いんだけど……想像以上に凄い。
鏡を見返しても、本当にオレかな? って自分で思ってしまうくらいだ。
「のんちん、さっそくすずちん達に見せに行こうぜ~!」
「え? うん……緊張するなぁ」
テツヤ君に腕を掴まれて、階段を下りた。
うわ、なんだかすごく足がスースーする!!
これは不安だ……!
「じゃ―ん!! 見さらせお前ら、のんちんが完成したぞ~!」
「ど、どうでしょう……」
めちゃくちゃハイテンションなテツヤ君に背中を押されて、オレはリビングに入った。
正直恥ずかしいけど、みんなオレを見にわざわざ朝早くに集まってくれてるんだから見せないわけにはいかないのだった。
しかし何故かリビングは不気味なほどにシィィン……と静まり返った。
みんなオレの方をめちゃくちゃ見てはいるんだけど。
え、何で誰もリアクションしてくれないんだ……?
誰か何か言ってくれないとかなり不安なんだけど!
すず!! ハル!!
「あ、あの……変、だよね、やっぱり。女装とか。でもこれにはちょっとした事情があってね、オレってバレないほうが都合いいかなって……」
何か言われる前に、自分で言うことにした。
自分じゃ可愛いって思ったけど、やっぱり他の人から見たら可愛いわけがない。
女装した男なんて不気味に決まってる。
何馬鹿な勘違いしてたんだろ、オレ。
「のんちゃん……ごめん、その、可愛すぎて言葉が出ない」
「え?」
すずの顔が真っ赤になってる。
よく見たら、他の人も同じだった。
「ヤバいヤバい! 俺これ以上斉賀を直視できねぇ!!」
「お、俺も……すまない、のんさん」
上妻君とハルは、赤面してオレから目を逸らしていた。
ど、どういう反応だ? コレ。
「斉賀、めっちゃくちゃカワイイ!! 俺の彼女にしたいくらい!」
一之瀬くんがへらっと笑いながら、褒めてくれた。
やっと普通に褒められて安心した。彼女にはならないけど。
「潤! 抜け駆けは許さねぇぞ!」
「いや、抜け駆けも何も斉賀は朝比奈先輩のカノジョ、いやカレシだろ」
これらの反応を見る限り、もしかして変じゃないってこと?
オレはすずにもう一度聞いてみた。
「すず、この格好変じゃない? 男ってバレないかな?」
「いや男には見えないよ、マジで見えない。ヤバいくらい可愛いし」
変装とはいえ、最初は女装に抵抗があったのに凄く褒められるものだから、もはや抵抗はほとんど無くなっていた。
昔から女みたいって言われるのすごくイヤだったのに、妙な気持ちだ。
トーマ先輩も、可愛いって思ってくれるといいんだけど。
それとも、女装したオレなんてイヤかな……。
「な~斉賀、写真撮っていい?」
「俺も! 親に彼女だって言っていい!?」
「いや普通にダメでしょ、それは」
「ねぇみんな、可愛いでしょー? 希ちゃん。自信作よ!」
佳織さんが片づけを終えたらしく、リビングに戻ってきた。
「「「「グッジョブです佳織さん!!」」」」
おお……四人、ハモッてる。
「ちょっと、オレも手伝ったんだけどぉ~」
「テツヤ君もありがとう」
「へへっ、うーんマジでのんちん可愛いな~! 俺も天才じゃん?」
「テツヤ君は天才っていうか、神様だよ」
「いやいやそこまで崇めてもらわんでも~」
いや本当に、拝み倒したい。
昨日の助け船からデート当日までお世話してくれて、オレは本当に感謝しているんだから。
オレが手を合わせてテツヤ君を拝んでいると――
「ねえ、ちょっとそこのぱっつんの君!」
佳織さんが、指を指してすずを指名した。
黒縁メガネの奥が、キラキラと輝いている。
「え、ぼく? 山田清白です」
「きみもなかなか可愛い顔してるわね! ついでに飾り立ててあげるから二階にいらっしゃいよ」
「えっ……」
「おっ、いいねー! すずちんもいい線行くと思ってたんだよな、俺!」
「ちょ、ちょっと待って? ぼくはただの見物人で……」
「ちょっとテツ、この子の肌ブルベ冬よ!? きゃーっ腕が鳴るわぁ!!」
まさかの展開だ。
すずまで女装――いや、変装することになろうとは。
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