好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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 音楽室に向かう途中の廊下で、透き通るような高音のとても綺麗な歌が聞こえてきた。

「声たっか! 女の人が歌ってるのかな? でも音楽で女の先生とかいたっけ……」

 ここは男子校なので、女子生徒が歌っている可能性は限りなく低い。

「ちげーよほら、さっさと来い」

 いつの間にかオレ達より先に音楽室に着いていたトーマ先輩が、来い来いとジェスチャーしていたので、オレたちは駆け足でトーマ先輩の両隣についた。
 歌ってる最中なのでドアは開けず、廊下から音楽室の中を覗き見た。
 歌っていたのは、ひばり先輩だった。
 歌っているのは外国の歌で曲名は分からないけど、ひばり先輩の歌がめちゃくちゃ上手いってことだけは素人のオレでも分かった。

 なんて美しい声なんだろう……!!
 物凄く高い声なのに耳がキンキンすることもなく、脳に直接響いてくるようだ。
 そして、それがとても心地がいい。
 ひばり先輩は白っぽい金髪をサラサラとたなびかせているから、まるで本物の天使が歌っているようにも見えた。

「……っ」

 感動して、思わず涙がこぼれそうになった。
 それはオレだけじゃなくて、すずも、周りで偶然居合わせた人たちも同様のようで、歌が終わると廊下で盛大な拍手が起きた。

「ひばり様、素晴らしすぎるっ!! 俺の歌姫、女神様!」
「うわっ!? と、藤堂先輩!?」

 隣でえらく号泣しながら拍手してる人がいるなーと思ったら、ひばり先輩のストーカー……じゃなくて、忠実な下僕の藤堂先輩だった。

「先輩にむかってうわ、とはなんだ斉賀。というかお前ら3人そろって一体何しに来てるんだ?」

 人前なのに思いっきりちーんと洟をかむ藤堂先輩に睨まれた。

「ちーっす藤堂さん、俺はこいつらの部活動見学に付き合ってるんスよ」
「まあ見てるだけですけど……」
「ははあ、ひばり様のサインが欲しいのだな? よし、やらん!! ひばり様のサインは貴重なのだ!!」

 まだ欲しがってないのに断られた。
 藤堂先輩はひばり先輩のジャーマネか何かなのか?
 廊下で騒いでいたらドアが開いて、さっきまで歌っていたひばり先輩が音楽室から出てきた。

「おまえらさっきから廊下でうっせぇ。見学なら中に入れよ、変態以外な」
「ひばり先輩! 歌、すっごく感動しました!」
「めちゃくちゃ声綺麗でしたぁ~!」
「よー、のんにすず。可愛い系新人生徒会役員じゃねえか。サンキュー!」

 興奮気味に感想を言うオレとすずに対し、ニコッと笑いかけてくれるひばり先輩。
 思わずその笑顔にキュ―ン!! として、藤堂先輩じゃないけどファンクラブがあったら思わず入ってしまいそうだった。
 テレビの中の踊れるアイドルにときめく人達の気持ちが分かった気がした。

「よぉひばり、相変わらずキレーな歌声してんなァ」
「柊馬に素直に褒められるとなんか背中がぞわぞわする……気持ち悪っ」
「褒めてやってんのに失礼な奴だなオイ!」
「ふははは! ざまァ見ろ朝比奈!!」

 トーマ先輩がひばり先輩にけなされて、何故か勝ち誇ったように笑う藤堂先輩。
 トーマ先輩の顔にうっすらと血管マークが浮いてる!
 やっぱり先輩相手でも煽られるとムカつくんだな。

「てめぇはいるだけでぞわぞわするぜ、消えろ変態!」
「ではひばり様、写真を150枚ほど撮らせて頂いたら失礼しますね」
「多すぎるわ!!」
「高速連写ですのでご安心を」
「お前の存在以外不安に思ってねぇ!!」
「ああーひばり様、怒った顔もお美しいッ!」
「ぎゃああああッ!!」

パシャッ パシャッ パシャシャシャシャシャシャ(高速連写中)

 トーマ先輩の血管マークがスッと消えた。
 うん、オレも何も見なかったことにしよう。

「んじゃ次は写真部行ってみっか? ひばりの等身大パネルとか巨大ポスターとかあるけど……藤堂さんが部長だから」
「「え、遠慮します……」」
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