好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

文字の大きさ
98 / 256

55 希、ナンパされる

 思ったより早く駅に着いたけど、トーマ先輩はまだ来ていなかった。
 うう……なんか、思った以上に緊張するぞ……。
 オレ、本当に変じゃないかな。
 みんなが褒めてくれたのは友達だからで、ホントはちょっとくらいは男に見えてるんじゃないだろうか。
 スカートの下には念のために短パンを履いているけど、下半身がスースーする。
 スカートの女の子っていつもこんな心もとない服装をしているのか……。

 他にもウィッグはずれてないか、グロスは塗りなおさなくていいか、色んなことが気になって仕方がない。
 くるんとしたウィッグの毛先を時々指で遊びながら、オレは駅の入り口付近でトーマ先輩を待って立ちつくしていた。待ち合わせの時間まで、あと7分くらい。

「おい、あの子……」
「モデルかな、可愛い……」

 心なしか色んな人の視線を感じるけど、やっぱり変なのかな?
 あ、そういえばトイレって女子トイレに入っていいんだろうか。通報されたらどうしよう……!
 考えるのに疲れて、ふとロータリーを見回したら、前から見覚えのある高身長の男の人がこっちに向かって歩いてきていた。

「あ……っ」


 あれって……ええぇええ!? 人違い!? 
 いや、でも間違いない!!

 トーマ先輩は、オレ達がふざけて想像していたボロボロの世紀末ファッション──ではなく、想像もしていないくらいオシャレ上級者だった……!!
 いつもぼさぼさの髪はワックスか何かでオシャレにセットされていて。
 佳織さんに予想されていたトゲトゲ等(スタッズというらしい)は一切付いておらず、白Tにオーバーサイズの薄手のジャケット、下は細めの黒ストレートパンツを見事に着こなし、シンプルにめちゃくちゃスタイルがいいファッションだった……。
 胸元にはチェーンのみのシルバーアクセサリーが光っててさりげなくオシャレだ。
 別に凝ってないのに、めちゃくちゃかっこいいと思った。きっとトーマ先輩のスタイルが為せる技なんだろう。
 これはズルい……! 普段のトーマ先輩から考えても、これはズルい!!
 正面から声をかけるはずだったのに、あまりのかっこよさに見惚れてしまって声をかけられなかった。
 トーマ先輩はオレに気付かなかったみたいで、オレを横切って駅の中に入ってしまった。慌てて呼びとめようとしたら――

「と、トーマせんぱぃ……」
「ねぇねぇ君一人? すっげー可愛いね!」

 いきなり知らない男の人二人組に声を掛けられた。

「えっ?」

 だ、誰だ? 何? この人たち。

「うっわーマジの美少女! 俺、美少女ってもんを初めて見たわ。キミ、もしかして芸能人とかやってる?」
「一人なら俺らと遊ばない? 楽しいとこいっぱい知ってるよ」

 これってもしかしてナンパ……? つまりはオレが男だってバレてない? 
 一瞬ホッとしてしまったのを勘違いされたのか、腕を掴まれてしまった。

「うぇっ!?」
「よし、じゃあ決まりっ、名前なんていうの?」
「あっあああの、オ……私、これから人と会うので遊べません!」
「えーデートなの? そんなのすっぽかしちゃいなよ、同じ年の彼氏と遊ぶより、俺らと遊ぶ方が絶対楽しいからさぁ~」
「それに俺らみたいなイケメンじゃないと一緒に居てもつり合わないと思うよ? どうせ彼氏ダサいんでしょ?」
「ほえっ」

 じ、自分でイケメンとか言う……!? 自己肯定感高っ!!
 びっくりして、思わずフリーズしてしまった。
 普段生徒会で綺麗&カッコイイ人達をずっと眺めているから、この人たちは着飾ってはいるけど全然普通の顔だと思う。(失礼)
 あとオレの彼氏、今日は爆イケ散らかしてます。(いつもかっこいいけど)

「あの、すいませんけどホントにダメです、手を放してください」
「いいじゃん、絶対後悔させないからさぁ」
「実はまんざらでもないんでしょ? 両手にオトコで優越感に浸れるよ。なんなら今日一日女王様扱いしてあげるからさぁ」
「い、いい加減に……」

「いい加減にしねェと、馬に蹴られて死んじまうぞ~」


 ドカッッ!!


 激しく人を蹴る音がして、オレの腕を掴んでいた男性が前のめりにズザァッと倒れた。

「!?」
「な、何すんだてめぇー!? う、デカッ……」

 男性の背中を蹴りとばしたのは、なんとトーマ先輩だった。
 声の時点で気付いてたけど、助けにきてくれたんだ……!!

「このコの彼氏が助けに来るのを待ってたけど、登場が遅ぇから俺が代わりに成敗してやんよォ。学校外だけどな」
「はぁ!?」

 もう一人が食ってかかってきたけど、トーマ先輩の長い脚で足払いをされて、その場でドスンと尻もちを着いた。
 周りで見ていた人たちから嘲笑が洩れた。今のはかなりカッコ悪い。

「カノジョ、これからデートだっつってんだろォが。これ以上そのダサい服汚されたくなかったらとっとと失せろ」
「ち、ちくしょう……!」

 ナンパ男たちは、蹴られたことよりも周りの視線に耐えきれなかったらしく、「覚えてろよ」と古典的な捨て台詞を言いながら去って行った。

「秒で忘れるっつの。人並み以上に可愛いとあーいうのに絡まれっから大変だなぁカノジョ。彼氏は何やってんだ? おっと、俺が一緒に居るところ見られたらマズイからとっとと退散するぜィ」

 そう言って踵を返したトーマ先輩の腕に、オレはすがりついた。

「あ? 悪ィけど俺も人を待ってて」
「オレですっ」
「へ?」

 まだ気付かないんだろうか?
 それはそれでショックというか……いや、変装が上手くいってるんだと喜ぶところかな……。

「トーマ先輩、オレ、希です……すいません、こんな格好で……」
「えっ……えええええ!?!?」

 今まで聞いたことの無いトーマ先輩の絶叫が駅に響いた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?