好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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 全て食べ終わると、トーマ先輩がスマートに会計を済ませ、寮の門限も近づいてきたのでぼちぼち帰ることにした。

「そういやお前らさァ、その格好で寮に帰るのか?」

 帰りの電車の中で、唐突にトーマ先輩がオレとすずに訊いた。

「はい、服を返すのは後日でいいって言ってくれてるので」
「いや、そーじゃなくて寮は女子禁制だろ。万が一誰かに見られたらどーすんだよ? お前らマジで女子にしか見えねぇから問題になるぞ」
「「……」」

 オレとすずは思わず顔を見合わせた。
 トーマ先輩の言ってることはもっともだけど、普段から校則破りまくりのトーマ先輩にそんな注意をされるとは思わなくて、つい吹き出してしまった。

「おい、何笑ってんだよ?」
「朝比奈先輩に注意されたのが可笑しいんですよ!」
「はぁ? 俺様はこう見えて執行部のエースだぞコラ。素行不良の生徒に注意の一つや二つするっつーの!」
「ちょっと聞きまして? このかた執行部のエースですってよ! おほほほ! 夜中にしょっちゅう抜け出してるのは誰に通報すればいいザマスかねぇ~」

 すずがマダムみたいな口調でオレに言った。
 オレはすずとトーマ先輩のやり取りが面白くて、くすくすと笑って言った。

「まぁまぁ、玄関からダッシュして部屋に行けば大丈夫ですよ。それに、このための変装なんですから」

 オレが『斉賀希』ってバレないことが重要なんだから、女の子が寮に侵入したと噂が立っても別に構わない。

「まーもし誰かに見られたとしても、朝比奈先輩が女の子を二人連れ込んだようにしか見えませんしね」
「たしかに……」
「ちょ、それはマズイ、マジで! 俺が浮気してるなんて噂が立ったら、ここぞとばかりにノンタンにチョッカイ出そうとするアホが続出するだろーが!」
「いませんよ、そんな奇特な人は……」

 実際、高校に入学してからオレを口説いてきた人はトーマ先輩以外存在しない。だから本気で焦ってるトーマ先輩がおかしいんだと思う。
 すると、今まで黙ってオレ達の話を聞いていたハルが言った。

「――すみません。俺は次が最寄駅なので先に降りますね。朝比奈先輩、今日はごちそうさまでした」
「おう、気を付けて帰れよチハル。今日は竹刀持ってねェんだろ?」
「大丈夫です、走って帰りますから。すずとのんさんも、今日は遊んでくれてありがとう。凄く楽しかった」

 ハルが控えめにほほ笑みながら言った。
 ハルの最寄駅ってここなのか……そういえば、電車通学なんだっけ。

「こっちこそ、朝からありがとうハル。また月曜日、学校でね」
「ちーちゃんばいばい! 楽しかったよー!」
「ああ、また月曜日に」

 ハルはいつもと変わらない表情だ。
 変わらない……と思うんだけど、なんとなく違和感に思うのはオレだけだろうか。
 車窓から手を振って、三人でハルを見送った。
 今度はオレたちの最寄駅に着いて、少し歩いた途端。

「なんかぼく、今めちゃくちゃお邪魔虫ですね!? ぼく後から帰るんで、二人先に行ってください!」

 オレとトーマ先輩に気を使っているのか、いきなりすずがそんなことを言いだしたので驚いた。

「何言ってるのすず、別に邪魔じゃないよ! 帰る方向一緒なんだから一緒に帰ろうよ」
「おう、客観的に見れば両手に花で俺が一番おいしい状況だしな」

 実際は男三人なんですけど……。
 オレとすずは真ん中でニヤニヤしているトーマ先輩をチラッと見上げて、心の中でそう突っ込んだ。
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