好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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64 夜のお誘い


 寮に着いて、すずと自分たちの部屋へ直行しようとしたら、オレだけがトーマ先輩に呼びとめられた。

「あー、あのよーノンタン、着替えたらあとで俺の部屋に遊びにこねェ?」
「えっ?」
「明日も休みだし、その……今夜はお泊りとかドウデスカ?」

 トーマ先輩、なんで語尾がカタコトなんだろう。
 でもせっかく誘ってくれてるし、特に断る理由はなかった。

「じゃあ、着替えてシャワーを浴びたら伺いますね」
「ヨッッシャ!! あ、来るときは手ブラでいいからな!」
「? 分かりました。じゃあ後で」

 もうお腹いっぱいだから、手土産はいらないってことだな。
 振り返ったら、何故かすずが大きな目を見開き、両手で口元を押さえてオレを見つめていた。
 な、なんだろうその反応は……。

「すず? 部屋に入らないの?」
「ハッッ!! ご、ごめん。なんだかぼくの方がドキドキしちゃって……ひゃああぁ、ついにこの日が……」
「なんて?」

 もちろんオレもトーマ先輩に誘われてドキドキしてるけど、何故すずの方がドキドキしてるんだろう。

「あっ気付いてない……ごめん、なんでもないや! のんちゃん先にシャワー使っていいから、早く朝比奈先輩のとこ行ったげなよ、夕飯は二人のデートをお邪魔しちゃったからさー!」
「あ、うんありがとう。別に全然邪魔じゃなかったけど……」
「ほらぁ、早く!」
「はーい……?」

 すずに追い立てられるようにして、洗面所へ向かった。
 ようやくウィッグを外せたときは心底ホッとした。今はまだ少し肌寒いからいいとしても、もし夏だったら絶対着けていられない。
 一年中カツラを着けているおじさんは、実はすごいのだ……。

 メイクはすべて普通の洗顔料で落ちるものを使ったと佳織さんが言っていたので、かなり助かった。
 専用のメイク落としなんて持ってないし……。
 熱めのシャワーを頭から浴びながら、さっきのトーマ先輩とすずのおかしな様子を思い出した。
 いったいお泊りがなんだっていうん……

「ん?」

 ちょっと待って……。実はあの三人組の不良先輩に襲われた日以来、トーマ先輩のお部屋には遊びに行ってなかったけど。
 お泊りって、その、そういう……

「ええっ……!? あ、ああぁぁ!!」

 いや、そういうこと……だよな。
 うわあ、オレ全然気付いてなくてめちゃくちゃ軽く返事をしてしまったぞ!? いや気付いたとしたらもっと反応に困ってたけど!!
 夜中にトーマ先輩の部屋へ行ったときはあまり深く考えてなかったけど、むしろ自分からナニかされに行ったも同然なんだけど、今思うと何故自分があんな大胆な行動に出たのか理解に苦しむ……。
 好きな気持ちよりも不安のほうが大きかったから、だけど。
 けど、今のオレにはあのときみたいな不安はない。
 まったくゼロってわけじゃないけど、不安に思う暇がないくらい、トーマ先輩がオレに『可愛い』とか『好き』って伝えてくれるから。
 だから、トーマ先輩がもしオレと身体の関係を持ちたいのなら、それにこたえることは全然やぶさかではないんだけど。
 オレだってお年頃だから、そういうことに興味がないわけじゃないし。
 付き合ってるんだから、キス以上のことがあってもおかしくないし。 

 トーマ先輩はオレと違って経験豊富なわけだし……。

「ていうか、男同士ってホントに出来るのかな……」

 オレはその――やり方を詳しく知ってるわけじゃないから、未知すぎて逆に怖くないのかもしれない。それってちょっと危ないかな。
 でも、こればっかりはすずに相談するわけには……。

「もういいや、なるようになれ! ていうかトーマ先輩がオレの嫌がることするわけないし!? うん! そうだ!!」

 ――ハッ

 つい無意識で大きな独り言が出てしまったが、すずには聞こえていないだろうか。(聞こえていたらかなり恥ずかしい……)

 シャワーから出て簡単に身支度を終え、すずに「じゃあ、行ってくるね……」と声をかけた。
 さっきとはオレの様子が全然違うことから察したらしいすずは、少し笑いをこらえながら「のんちゃん、がんばって!! あとで感想聞かせて!!」と激励(?)をしてくれた。
 な、なにこれ。恥ずかしすぎる。
 トーマ先輩の部屋に着き、軽くノックをしながら「トーマ先輩、希です」と呼びかけるとすぐにドアが開いた。

「よう、ノンタンいらっしゃーい。まぁ入ってくれ」
「お、お邪魔します……」

 トーマ先輩もシャワーを浴びた直後だったらしく、上半身は裸で下はパンツのみという破廉恥な出で立ちで出迎えてくれた。
 濡れた髪をタオルで拭いており、その仕草が何故かめちゃくちゃエロく見えて、オレはごくりと生唾を飲んでしまった。
 前にも思ったけど、オレはかなりのむっつりスケベらしい。
 こんな自己分析、したくなかったっ……!!

「ワリーなこんな格好で。ちょっと急ぎで家から連絡があったからよ、今まで電話してたんだなコレが」
「え、もしかして今からお仕事ですか……?」

 あからさまにがっかりとした声が出て、自分でもびっくりした。

「いンや? 向こうは来て欲しそうだったけど、基本的には学業優先でいいっつーか、俺まだ未成年だしな! あいつらは俺の同意がなけりゃ無理矢理連れ出すワケにゃいかねェのよ」
「が、学業って……」
「別に今からオベンキョウするわけじゃねえけどな」

 トーマ先輩が少し悪そうな顔でオレに笑いかけて、オレの顔はボッっと真っ赤になった。
 そんなオレを見て、トーマ先輩はすずと同じくオレが気付いたことを察したようだった。
 そしてその場で固まって動けなくなったオレに近付いてくると、顔を覗きこむようにして言った。

「今すぐ取って食おうと思ってるワケじゃねェから、そんなガチガチに緊張すんなって。とりあえずなんか飲み物入れるから、ソファーで待ってろ」
「は、はい」
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