好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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68 東雲千春の憂鬱

※しばらく千春×清白編になります。





『ちーちゃん……実はぼく、ちーちゃんのことが好きなんだ』
『本当か!? 俺もすずのことが好きだ!』
『え! じゃあぼくたちって両想いだったの?』
『すず、キスしたい……』
『いいよ、ちーちゃんなら』
『すず……!』




 ジリリリリリリリリリリ……

 
 小学生の時から愛用している古い型の目覚まし時計を片手で止めて、俺は徐々に夢の世界から覚醒した。
 ……これはマズイ。非常にマズイ。
 なんで連日、俺は親友から告白される夢を見るのだろうか。
 あまつさえ、き、キスしようなどと……

 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”――!!

 頭を抱えて布団の上でゴロンゴロンと悶絶していると、いきなりスッと部屋の出入口の襖が開けられた。

「おはよう千春……ど、どうしたの!? なかなか起きてこないから心配で見にきたんだけど、熱でもあるの!?」
「お、おばあちゃん……! なんでもない、すぐ降りるから!」
「そ、そう? じゃあ朝ご飯用意しておくからね」
「うん、ありがとう」

 脚の悪い祖母をわざわざ二階に上がらせたうえ、奇行を見せてしまった。
 そんなに目覚まし時計が鳴って時間が経ったか?
 そう思って時計を確認すると、いつも起きる時間から既に10分も過ぎていた。
 祖母が心配して様子を見に来るのも頷ける。
 俺は制服に着替え始めると、深い溜め息をついた。

 連日そういう夢を見てしまうということは……おそらく、そういうことなんだろう。本当はずっと前から気付いていた。
 俺は、同性の友達に恋をしている。

 階段を降りると、居間でお茶を飲みながら新聞を読んでいる祖父がいた。
 ちゃぶ台には俺の分の朝食が用意されている。

「おはよう、おじいちゃん」
「おう、おはよう千春。最近少し目覚めが悪いみたいだな」
「そうかな?」
「前は目覚ましが鳴る前に起きてただろ?  勉強のしすぎじゃないか?」
「……そんなことないけど」

 祖父と向かい合うようにして座り、手を合わせて頂きますと丁寧に唱えて箸を持つ。焼き鮭がとても美味しそうだ。
 祖父も祖母もおそろしく早起きなので、朝食はもう食べたらしい。
 母はしばらく出張で帰ってこないから、現在この家には俺と祖父母しかいない。
 父は俺が小学生の頃に交通事故で亡くなった。
 父の親戚はいなかったので、母は俺を連れて実家へ戻り、亡くなった父の分も現在 バリバリと働いている。いわゆるキャリアウーマンというやつだ。

「千春、高校は楽しいか? たしか役員になったんだろう」
「うん、生徒会役員。楽しいよ、友達もできたし先輩たちは優しいし」

 全員もれなく個性的だけど。
 俺はそのカテゴリに入っているとは思っていないけど……どうだろう。

「部活はどうだ? 高校でも剣道部に入ったんだろう」
「普通に頑張ってるよ。でも勉強も疎かにしてないから心配しないで」

 もし成績が下がったら、せっかく母に迷惑をかけないように奨学金で入学したのに学費を払う羽目になってしまう。
 目下の悩みは、親友に恋をしているということだけだ。

「ワシ達も千秋もそんな心配はしてないが、あまり無理をするんじゃないぞ。お前は小さい頃から何も不満を言わないから……時々心配になる」
「本当にねェ、千春だけじゃなくて千秋もだけど」

 外に洗濯物を干し終えて居間に戻ってきた祖母が、祖父に加わった。
 千秋とは俺の母のことだ。

「うーん……似たもの親子なんじゃない?」
「そんなところは似なくていい」
「きっとおじいちゃんの遺伝なんだよ」
「……成る程、一理あるな」

 満更でもない顔で納得した祖父に微笑んで、俺は朝食を急いで食べた。
 電車の時間まで、あと30分もない。

「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」

 いつも玄関の外まで見送ってくれる祖母に軽く手を振って、俺は今日も竹刀を背中に背負って登校した。
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