好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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 情けないことだが、俺は彼の捨て身の(?)色仕掛けでアッサリと陥落してしまった。
 自分がこんなに単純だったとは思わなかった。
 いや、山田君が可愛すぎるのが悪いんだ。
 自分が可愛いと分かっていてそんなことをするなんて、あまりにも腹黒すぎないか!?
 でも、そのギャップにやられた俺が言う資格はない……。

 しかしふと彼の顔を見たら、両頬が赤くなっていることに気づいた。
 俺のような赤面じゃなくて、明確に腫れている。
 俺は無意識的に、彼の頬に両手で触れていた。

『山田君、顔が腫れてる。あいつらにやられたの?』
『は、腫れてる? ……あーこれは』
『すごく痛そうだ……。まったく許せないな、あいつら』
『い、いやこれはその……』

 何故か山田君の顔がどんどん熱くなっているのに気付いて、俺は自分の今の行動を自覚した。
 お、俺は何をしてるんだ!? まるでキスでもしそうじゃないか……!!
 うっかり色仕掛けをしてきた山田君を責められないことをしてしまった。
 しかし俺みたいな陰キャにこんなことをされて赤くなるなんて、山田君は意外とウブなのかもしれない。
 童貞なのは俺も同じだが。
 山田君がすぐに話題を変えてくれたのが助かった。

『東雲君ってすごく強いんだね。剣道やってるの?』
『う、うん、小学生の頃からやってる。……変に思われるかもしれないけど、竹刀を持って相手に対峙しているときだけ何故か違う自分になれるんだ。祖父の影響で、時代劇が好きだからかな……』
『へえぇ……さっきすごくかっこよかったよ!』
『ちょっと笑ってなかった?』
『わ、笑ってないよぉ』

 かっこいいと言われたのは嬉しいが、彼が密かに笑いを堪えていたのは分かっているので突っ込んでみたら、可愛く否定された。
 同じ男なのに、仕草のひとつひとつがめちゃくちゃ可愛いと思うのは何故だ。
 そして彼は、俺と友達になりたいと言ってくれた。
 願っても居ないことで、俺はすぐに了承した。

『良かったぁ! 東雲君は下の名前が千春だから……あだ名はちーちゃんだね!』
『ち、ちーちゃん!?』

 今まで誰からも――家族からも呼ばれたことのない呼び方をされて、ひっくり返りそうなほど驚いた。

『あれ、あだ名とかイヤ? ぼく友達は愛称で呼びたい派なんだ。斉賀君は希だからのんちゃん。ぼくのことはすずでいいよ!』

 そう言われたので、俺が『よろしく、すず』と言ってみたら――

『へへっ』

 可愛らしい顔ではにかまれて、俺の脳内でブワッと花が咲き誇った。

 か、可愛い。可愛すぎる……!!
 思わず場所を忘れて抱き締めそうになったが、友達になったばかりの相手にそんなことをしたらドン引きされるのは目に見えていたので必死に耐えた。

 かわいい、可愛い、カワイイ……!!
 落ち着け、落ち着くんだ俺、平常心、平常心……!!

「あの、すず」
「うん?」
「こんな俺に、その……色々嬉しいことを言ってくれてありがとう。友達にもなってくれて。俺も斉賀君……いや、のんさんみたいに変わろうと思う」

 抱きついて撫でくりまわしたいのを必死で抑えて、俺はすずに礼を言った。
 すると何がおかしかったのか、すずの方は必死で笑いを耐えていた。
 何故!? 俺の挙動がバレた!?

 気を取り直して、抱きしめることはアレだがさっきの変な奴らからすずを守らせてほしいと(何故襲われたのか分からないが……)志願した。
 俺の取り柄は剣道しかないし。
 すずの『ただの友達』よりは少しだけ上の、騎士ナイトになりたかったんだ。いや、この場合は用心棒か。
 しかし、次のすずのトンデモ発言で、俺はまたしてもひっくり返りそうになった。

『え! ちーちゃんぼくの彼氏になってくれるの!?』

 か!?

『か、かかか、彼氏!?』

 願ってもいないというか、言葉にされて『そうか、俺はすずの彼氏になりたかったのか』と気付かされた。
 そのとき俺の脳内では天使が頭上でラッパを吹いていたり、花吹雪が舞っていたり、とにかく一瞬のうちに色んな心象風景がよぎりまくっていたのだが。

『あ、ごめん今の間違い、忘れて! でもほんとにいいの? すごく助かるよ、ぼくってかよわいからさ』

 ガックリした。
 いや、たとえ言い間違いだろうと忘れられるわけがないだろう……。
 友達になろうと言われてすぐに了承したくせに、俺はもうすずの友達になりたいとは思わなかった。
 すずを好きになってしまったからだ。
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