好きです、朝比奈先パイ。~元引きこもりの美少年、陽キャヤンキー先輩に溺愛される~

すずなりたま

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79、思い出すのは君のことばかり

 そして、あっという間に週末が来た。
 一週間経つの早すぎじゃないか?

「ど、どうしよう……」

 今なら、のんさんが着る服に困っていた気持ちが分かる。
 そこまで気合いを入れたいわけじゃないけど、一応本物の女の子との初デートだ。
 あまりおかしな格好をしていっても……

「……」

 俺の初デートはすずと、か。
 あの日、見た目だけは完全な男女カップルだった。
 手を繋いで歩いたり、アーンをしてもらったり、男の夢が詰まっていて本当に楽しかった。(すずは同じ男なのによく分かっている)
 今から別の女の子とデートをするのに、思い出すのはすずの顔ばかりだ。
 もう、先週と同じ服でいいか……。
 先週と違うのは、今日の俺は竹刀を持っていることだ。
 これが無いと上手く話せなくて地獄みたいな空気にしてしまう。

「ん? 千春、今日もどこか行くのか?」

 そっと出かけようとしたのに、居間にいた祖父に目敏く声をかけられた。
 一応祖母には出掛けると伝えていたけど。

「ちょ、ちょっと街まで」
「ほう、デートか? なかなかやるなぁ」
 
 すると、台所に続くドアの暖簾がはらりと動いて祖母まで出てきた。

「千春、お小遣いは足りてるの? ちょっと多く持って行きなさい」

 毎月のお小遣いの他に、一万円札を渡されてびっくりした。

「いいよこんなに、お小遣い貯めてるから!」
「いいから取っときなさい。貴方も高校生なんだから友達付き合いとかで色々入り用でしょ? それに相手が女の子ならこっちが多く出さないと……あら、デートなのに竹刀を持っていくの? それはちょっとよした方がいいんじゃないかしら」
「いや、これは俺の仕様だから」

 私服に竹刀を背負うなんてカッコ悪いことは自覚している。
 でも相手がすずやのんさん――その他の心を許した人たちじゃないから、コレがないと俺はどうしたって上手く話せない。

「千春、まだ竹刀がないとダメなのか?」
「う、うん……ごめんなさい」
「いや、謝ることはない」
「気をつけてね、千春。今日は遅くなるの?」
「多分すぐ帰ってくるよ。じゃ、行ってきます」

 祖父母は、俺が小さい時から極度の人見知りだということを理解してくれている。
 だから特にうるさいことは言われない。
 俺の将来を多少は心配しているだろうけど……なんだかこんな孫で申し訳ないな。
 同性を好きになるし、ひ孫を見せることはないかもしれない。



「……おじいさん、千春は本当にデートなんでしょうか……」
「何でだ? 千春は否定しなかったじゃないか」
「だって、デートだったらもっとウキウキして笑顔になるんじゃありませんか? 先週は友達とのお出かけでしたけど、とても楽しそうで……。でもさっきの千春は、まるで今から討ち入りにでも行くみたいな顔してましたよ」
「むむ、たしかに」
「最近特に元気がないし、心配だわ……千秋は年頃だから心配することはないって言っていたけど」
「まあ、そういうトシだからなぁ。儂らにできるのは見守ることだけだよ」
「ええ、分かってますけど……」


 俺が家を出たあと、祖父と祖母がそんな話をしていたことを俺は知らない。
 自分がどんな顔をして、家を出たのかも。

 学校の最寄駅に着いたが、約束の時間より10分は早かった。
 田上さんは、まだ来てないみたいだな……。
 ベンチに腰を下ろそうとしたら、声をかけられた。

「しっ、東雲君!」
「あっ……」

 田上さんはもう来ていた。制服じゃないから全然気付かなかった。
 普段は結っている髪を下ろして、後ろで半分束ねている。
 清楚な白いブラウスに、マシュマロみたいなふわふわのスカート。
 放射状のまつげに、ピンク色に塗られた頬と口唇。少し近づいただけで、なんだかいい匂いもした。
 こんなことを言ったらアレかもしれないけど、やはり女装をした男とは何かが違うと思った。
 のんさんとすずもかなり可愛かったけど、髪や爪の細部まで色々と気を遣っているというか……これが、本物の女の子か。

「来てくれるなんて思わなかった……! 嬉しい、今日はよろしくね」
「はっ、はい。こ、こちらこそよろしくお願いします」

 田上さんは俺が竹刀を背負っているのを見て一瞬怪訝な顔をしたが、特に突っ込んでこなかった。
 よほどの剣道好きと思われたのだろうが、否定はしない。(制服のときもいつも背負っているし)

「じゃ、じゃあ、行きましょうか……」
「は、はい」

 皮肉なことに、先週のすずと遊んだことが本当に予行演習だったかのように、デートは順調に進んだ。
 さすがに同じ店で食事はしなかったが、同じカラオケには来てしまった。
 適当に米〇玄師でも歌うか……。
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