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〃
「今日はすぐに答えてくれないんだね」
「あの、すず……」
「やっぱり本物の女の子にはかなわないのかなぁ」
そう言ってひとつ溜め息を着くと、すずはベンチから立ち上がった。
「ごめんねちーちゃん、付き合わせて。……ぼく、帰るね」
「すず!」
立ち上がった肩が震えてる気がして、俺は思わず呼びとめた。
このまますずを帰したらいけないと、俺の本能が叫んでいた。
大体何の用事も済ませていない。
すずの真意も分からないままだ。
俺はすずの肩をグッと掴んで、無理矢理こっちを振り向かせた。
「見ないで!」
「すず?」
「今のぼくの顔、見ないでよ……」
すずの顔を見てしまった俺は、しばし固まってしまった。
すずはそんな俺の手を振り払うと、また前を向いた。
俺が固まった理由……すずが、泣いていたからだ。
「す、すず? なんで……」
すずが泣くなんて、俺は今まで一度も想像したことがなかった。
いつも明るくて可愛いのにどこか男っぽくて、たまに辛辣なことも言うし、腹黒さは隠さず、のんさんがいじめられていたら容赦なくやり返す。
喜怒哀楽は俺達三人の中で誰よりも豊かだ。
でも、泣いている姿だけは想像したことがなかったし、そんなことがあるなんて思いもしなかった。
すずは「あー、くそっ」などと言いながら、乱暴に手の甲で涙をぬぐった。格好は可愛らしいが、その仕草はとても男らしい。
そして気合いを入れるように自分の頬を両手で叩くと、俺に向き合った。
「ごめん、いきなり泣いたりして。もう大丈夫!」
「いや、あの……なんで……?」
すずの行動についていけなくて、俺はただおろおろするしかなかった。
気合いを入れて自分で叩いた頬が、いつぞやのりんごのように赤くなっていて、また両手で包んであげたくなった。
「女の子ってさぁ、ずるいよね!」
突然、ケンカでもするような強い口調ですずが言った。
「え?」
「一度助けてもらっただけですぐ好きになってさ、簡単に告白してデートに誘って! 厚顔無恥っていうの? 図々しいことこの上ないね!」
「……」
すずの言ってることは理不尽だ。
女の子だからといって、別にそれらの行動が一般的に咎められることはない。
きっとそれはすずだって分かっていると思う。
分かっているのに……敢えて言っている?
じゃあ、すずのこの言葉の真意は――?
「ぼくだって、女の子だったら……」
喉から絞り出すような声に、胸が締め付けられるような思いがした。
先週、カラオケボックスの中ですずが俺に言った言葉がふと脳内で蘇る。
『もしもぼくが女の子だったら、絶対ちーちゃんを彼氏にしたいもん』
これは俺の、都合のいい解釈じゃないのか?
『よかった、だって千春くんみたいなカッコイイ子に助けられたら好きになっちゃうのは無理ないでしょう? その子が先に告白してたら、私は今頃千春くんとデートできなかったかもしれないもの』
田上さんが言った、どこかで聞いた話。
どこで聞いたんだ?
あれは、
あれは……
『でもさぁ、ピンチなとこ助けられたりなんかしたら好きになっちゃうのも無理ないよね』
『ぼくだって、女の子だったら……』
すず……。
「女の子だったら……なんてね、嘘だよ、嘘! わざわざこんな格好までして馬鹿みたいだね、ぼく。中身は変わらないのにさぁ」
「すず!!」
俺は自分が出したとは思えないような大きな声ですずの名を呼び、すずを抱きしめていた。
「あの、すず……」
「やっぱり本物の女の子にはかなわないのかなぁ」
そう言ってひとつ溜め息を着くと、すずはベンチから立ち上がった。
「ごめんねちーちゃん、付き合わせて。……ぼく、帰るね」
「すず!」
立ち上がった肩が震えてる気がして、俺は思わず呼びとめた。
このまますずを帰したらいけないと、俺の本能が叫んでいた。
大体何の用事も済ませていない。
すずの真意も分からないままだ。
俺はすずの肩をグッと掴んで、無理矢理こっちを振り向かせた。
「見ないで!」
「すず?」
「今のぼくの顔、見ないでよ……」
すずの顔を見てしまった俺は、しばし固まってしまった。
すずはそんな俺の手を振り払うと、また前を向いた。
俺が固まった理由……すずが、泣いていたからだ。
「す、すず? なんで……」
すずが泣くなんて、俺は今まで一度も想像したことがなかった。
いつも明るくて可愛いのにどこか男っぽくて、たまに辛辣なことも言うし、腹黒さは隠さず、のんさんがいじめられていたら容赦なくやり返す。
喜怒哀楽は俺達三人の中で誰よりも豊かだ。
でも、泣いている姿だけは想像したことがなかったし、そんなことがあるなんて思いもしなかった。
すずは「あー、くそっ」などと言いながら、乱暴に手の甲で涙をぬぐった。格好は可愛らしいが、その仕草はとても男らしい。
そして気合いを入れるように自分の頬を両手で叩くと、俺に向き合った。
「ごめん、いきなり泣いたりして。もう大丈夫!」
「いや、あの……なんで……?」
すずの行動についていけなくて、俺はただおろおろするしかなかった。
気合いを入れて自分で叩いた頬が、いつぞやのりんごのように赤くなっていて、また両手で包んであげたくなった。
「女の子ってさぁ、ずるいよね!」
突然、ケンカでもするような強い口調ですずが言った。
「え?」
「一度助けてもらっただけですぐ好きになってさ、簡単に告白してデートに誘って! 厚顔無恥っていうの? 図々しいことこの上ないね!」
「……」
すずの言ってることは理不尽だ。
女の子だからといって、別にそれらの行動が一般的に咎められることはない。
きっとそれはすずだって分かっていると思う。
分かっているのに……敢えて言っている?
じゃあ、すずのこの言葉の真意は――?
「ぼくだって、女の子だったら……」
喉から絞り出すような声に、胸が締め付けられるような思いがした。
先週、カラオケボックスの中ですずが俺に言った言葉がふと脳内で蘇る。
『もしもぼくが女の子だったら、絶対ちーちゃんを彼氏にしたいもん』
これは俺の、都合のいい解釈じゃないのか?
『よかった、だって千春くんみたいなカッコイイ子に助けられたら好きになっちゃうのは無理ないでしょう? その子が先に告白してたら、私は今頃千春くんとデートできなかったかもしれないもの』
田上さんが言った、どこかで聞いた話。
どこで聞いたんだ?
あれは、
あれは……
『でもさぁ、ピンチなとこ助けられたりなんかしたら好きになっちゃうのも無理ないよね』
『ぼくだって、女の子だったら……』
すず……。
「女の子だったら……なんてね、嘘だよ、嘘! わざわざこんな格好までして馬鹿みたいだね、ぼく。中身は変わらないのにさぁ」
「すず!!」
俺は自分が出したとは思えないような大きな声ですずの名を呼び、すずを抱きしめていた。
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