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82、千春の告白
自分の行動が正しいのか分からない。
そんなことを考えている余裕はない。
でも、俺の前ですずが泣いた。
女の子だったらよかったのに、と言って泣いたんだ。
これで気付けないほど、俺は鈍感じゃない!
俺はもう一度すずを力強く抱きしめた。
誰かが見ていたって、かまうもんか。
「俺は……俺はそのままのすずが好きだ。男のすずが大好きなんだ!」
「ちーちゃん……」
俺の耳元で、すずが涙声で俺の名前を呼んだ。
聞いた途端、タガが外れたように気持ちが言葉になって溢れた。
「性別とか関係ない、女の子と比べる必要なんて全然ない! もしすずが女だったら俺達はそもそも出会えてすらいないんだ、すずが男で本当によかったと思ってる!」
「……うん……」
すずの手が遠慮がちに俺の背に回ってきて、ぎゅっと抱きしめ返された。
そして。
「さっきは無茶苦茶なこと言ってごめん。ぼ、……ぼくも、ち……ちーちゃんのことがす、す、好き、だよ……」
蚊が鳴くような声で、すずが言った。
普段キレッキレのマシンガントークをするすずとは思えないような歯切れの悪さで、俺は少しだけ戸惑った。
もしかして、すずは――……
「すず」
「ちーちゃん……?」
俺はそっと身体を離すと、涙で濡れているすずの頬に手を添えて、珊瑚色の小さな唇にそっとキスをした。
黒目がちな瞳が大きく開き、白い頬がみるみる真っ赤に染まっていく。
どうやら俺の仮説は当たりらしい。
「すずは、自分のこととなるとすごく照れ屋になるんだな……可愛い」
「へっ?」
「ごめん、俺がこんな性格だからすずに余計な心労をかけてしまった。でも俺はすずほど照れ屋じゃないから、もう大丈夫だ」
「え? え?」
顔を真っ赤にして激しく戸惑っているすずが可愛くて、我慢できなくてもう一度キスしようとした。
が、腕を突っぱねられた。
「ちょ、ちょっと待ってちーちゃん! どういうこと? ひ、人見知りは? 赤面症は治ったの!?」
ああ、そんなことか。
「すず相手に今更人見知りなんてしない。今はすずの方が俺より真っ赤だし。……相手が自分よりテンパっていると逆に冷静になれるんだな。知らなかった」
「て、テンパってなんか!!」
「じゃあもう一度俺の目を見て言ってくれ、好きだって」
「うう……ッ」
すずは俺の目を見つめたまま、唸った。
口元は『す』の形になろうとしているのに、ぶるぶる震えていて全く言えそうにない。
まさか、こんな可愛い一面を持っているなんて。
最初から好きだったけど、こんなギャップは好きにならない方が無理だ。
「しゅk……「すず、好きだ!!」
あっ……可愛すぎて我慢できなくて、つい被せてしまった。
「ちょ、ちょっとちーちゃん! 今ぼく頑張って言おうとしてたんだけど!?」
「す、すまない。でもちゃんと『好き』とは言えていなかったぞ」
「言えてたし!!」
「いや、しゅkって聞こえたような……」
「ほらぁ、言えてるじゃん!!」
「……そうだな、しゅきって言えてるな」
何を言っても可愛すぎて、俺はもう一度すずを強く抱きしめた。
なんだこの可愛い生き物は。
可愛い、可愛い、いとしい……
「ちーちゃんて隠れ肉食男子だったんだ……今日のデートでも女の子相手にカマしてきたんでしょ、分かってるんだから!」
「か、カマす? とりあえず告白は断ってきたけど」
「! そーなの?」
「そうじゃなきゃ、すずに好きだって言わない」
俺は今、自分史上最強に締まりの無い顔をしてると思う。
好きな人に好きだって伝えることができて、しかも自分も好きだって気持ちを返されて……好きな人と想いが通じ合うことが、こんなにも嬉しい。
俺たちは少し落ち着くと、もう一度ベンチに座った。
夕方なのが幸いしてか、公園には全く人は来ない。
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