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26 大人のキス
「……好きな子に優しくしたり、親切にするのなんて下心があるからに決まってるよ。家にまで上がり込んで……」
「!」
「俺はもう声を掛けてきた女子にいい顔したり、優しくしたりなんかしないよ。そんなことをしてる間に、隆星くんが他の男に話しかけられる方がよっぽど嫌だって今日、思い知ったから……」
ぎゅぅぅ、と強めに抱きしめられた。
「や、八代……」
「さっきみたいに名前で呼んで?」
「愁、斗……」
「キスしていい? するね」
「ンッ」
今日トイレの個室でしたのと同じように、顎を掴まれて後ろを向かされ、返事をする前に唇を押し付けられた。
「ンンッ……」
チュウ、チュプッ、チュクチュク……
両の頬を優しく包まれて、八代は拙者の唇を貪るように何度もキスをした。
昼間も思ったが、キスがこんなに気持ちがいいものだとは知らなかった。恋人同士になったのだから、誰に遠慮することもない。
自分も八代のシャツを掴んで、ねだるように顔を傾けてキスを受け入れた。
「隆星くん、少し口を開けてくれる……?」
「? あー」
開けろというから開けたのに(わざわざあーとまで言って)何故かくすりと笑われてしまった。
「フフ、隆星くんなんか小さい子みたいだな……前から思ってたけど、メガネしてないとすごく幼く見えるね」
「おい、拙者はガキじゃね──っン、ムッ」
抗議しようとしたら、また言い切る前に唇を塞がれた。相変わらず人の話を聞かねぇ奴だなと思っていたら、口内にヌルッとした熱いものが入ってきて……
その熱いものの正体は八代の舌なのだと、すぐに分かった。八代のシャツを握っていた手に、思わずグッと力が籠る。
八代の舌は拙者の舌よりも長くて、逃げてもすぐに追いかけてくるし、捕まると強引に絡めとられてジュゥッとしつこく吸われた。
これは俗にディープキスと呼ばれるものだとは拙者も知っている。こんなものを経験したら、先程のキスや学校でしたキスがまるで児戯のように思えた。
もちろん舌を入れたキスをされるのは初めてなので、シャツを握りしめる手に思わず力がこもり、身体が強ばった。
八代はそんな拙者の様子に気付くと、すぐに唇を離してくれた。
「ご、ごめん! 嫌だった……?」
「………」
八代は拙者の嫌がることはしない、と先程言ったばかりだ。
それに、今のはびっくりはしたけど別に──……
「嫌……では、なかった、ぞ。それに、」
普通のキスよりも、気持ちよかった気がする……
「っ、そんなかわいいこと言われたら、もう止められないよ……!」
「ンンッ」
拙者がついそんなことを口にしたものだから、大人のキスは再開された。
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