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8 気になる会話
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歓迎会が始まったとき、大谷は当然のように光の隣に座っていたが、光は注文がしやすいように廊下側の隅に座っていたため、『大谷君は真ん中に座りなさい?』と師長に言われて引き離されてしまった。
「あーあ、大谷君ドナドナされちゃった。三澄君、一緒に行ってあげればよかったんじゃないの?」
「いや俺、幹事なんで。ていうかドナドナって……」
「大好きな三澄君と引き離されてかわいそ~、大谷君」
「あんまりそういうこと言わないでくださいよ、小泉さん。俺は別にいいですけど、大谷さんが気にするじゃないですか……繊細なんだから」
「いやどっちも繊細でしょ! それに大谷君は気にしてないと思うけど。むしろこういうこと言われるの喜んでるし」
「ええ……?」
「あんなに懐かれたら可愛いでしょー? おっきい後輩だけどさ」
「……はい」
実は、小泉は光が二階病棟に来たときのプリセプターだった。といっても光は既に三年目だったので、二階病棟の業務を覚えるまでの短い期間だったが。
それでも、当時ひどく落ち込んでいた光は小泉にとても良くしてもらったため、ひとまわりほど年は離れているが、病棟では一番懐いているのだった。小泉もまた、光を弟のように可愛がっている。
「よしよし」
「ちょっ、なんですかいきなり」
小泉がいきなり光の頭を撫でてきたので、光は思春期の少年のようにその手を嫌がり軽く頭を振った。自分は無意識で大谷の頭を撫でたくせに、自分がそうされるのは嫌なのだ。
「いや~まさかあの三澄君が、自分より年上の大男に詰所のど真ん中でよしよしするなんて、おねえさんにはいまだに衝撃でして……」
「あれは本当に不可抗力なんです! 身体が勝手に動いたんです!」
「わざとじゃない方がヤバいじゃん」
「うううう」
何も言い返せなくて子どものように唸ってしまう。小泉はそんな光を見てケラケラと笑った。遠くの席から大谷が光と小泉の様子を見つめていたが、その密やかな視線にはこの場の誰も気付いていなかった。
「大谷君って今彼女はいるのぉ~?」
飲み会も中盤に入った頃、だいぶお酒の入ったおばちゃん達がこぞって大谷に質問していた。その気になる内容に、光も遠くからだがしっかりと耳を澄ませて聞いていた。
「今はそんな余裕ないんでいませんよ」
「ほんとー? 院内に大谷君を狙ってる子結構多いから、それは朗報だわ! まあわざわざ教えないけどね。じゃあ自衛隊時代はいたの?」
「合コンはよくしてましたけど、恋人はなかなか……」
(よくしてたのか……まあ、俺と違って普通にモテそうだし、今まで彼女とかもたくさんいたんだろーな)
「へえ~、自衛隊ってそうなんだ。そういやお見合い番組でよく自衛隊出るわね。大谷君はああいうの興味ないの?」
「あんまり……ガツガツした人は苦手ですし」
(ふうん……)
別に大谷の好みを知ったからといって、大谷はノンケだろうし光にはどうすることもできないのだけど。
(いくら大好きな三澄君って周りから言われても、大谷さんにとって俺は先輩として好きって以外ないもんな……)
なんだか少し切なくなったが、ハッとして思い直す。
(いやっ別に俺、大谷さんのこと好きじゃないし! ただすっごいいいカラダしてるから、一度抱かれてみたいとかそういうフラチな妄想と時々オカズにするだけで、別に好きとか全っ然そういうのじゃないし!)
「三澄君、もうすぐお開きだからお勘定しといで~」
「あ、ハイ」
色んな人の場所でだいぶ飲んできたらしい小泉が、光の隣に戻ってきた。
「幹事はこれで終わりだけど、二次会も行くでしょ?」
「いや、俺はもう帰ろうかと……」
「大谷君も行くって」
(何故そこで大谷さんの名前を出すんだ……でも、今日あんまり話せなかったしなぁ……)
「……じゃあ、行こうかな」
「あはは、ほんと分かりやすい子」
「!?」
どういう意味ですかと聞き返そうとしたが、店員が『ラストオーダーでーす』と伝えに来たので、光は急いで会計に向かった。
「あーあ、大谷君ドナドナされちゃった。三澄君、一緒に行ってあげればよかったんじゃないの?」
「いや俺、幹事なんで。ていうかドナドナって……」
「大好きな三澄君と引き離されてかわいそ~、大谷君」
「あんまりそういうこと言わないでくださいよ、小泉さん。俺は別にいいですけど、大谷さんが気にするじゃないですか……繊細なんだから」
「いやどっちも繊細でしょ! それに大谷君は気にしてないと思うけど。むしろこういうこと言われるの喜んでるし」
「ええ……?」
「あんなに懐かれたら可愛いでしょー? おっきい後輩だけどさ」
「……はい」
実は、小泉は光が二階病棟に来たときのプリセプターだった。といっても光は既に三年目だったので、二階病棟の業務を覚えるまでの短い期間だったが。
それでも、当時ひどく落ち込んでいた光は小泉にとても良くしてもらったため、ひとまわりほど年は離れているが、病棟では一番懐いているのだった。小泉もまた、光を弟のように可愛がっている。
「よしよし」
「ちょっ、なんですかいきなり」
小泉がいきなり光の頭を撫でてきたので、光は思春期の少年のようにその手を嫌がり軽く頭を振った。自分は無意識で大谷の頭を撫でたくせに、自分がそうされるのは嫌なのだ。
「いや~まさかあの三澄君が、自分より年上の大男に詰所のど真ん中でよしよしするなんて、おねえさんにはいまだに衝撃でして……」
「あれは本当に不可抗力なんです! 身体が勝手に動いたんです!」
「わざとじゃない方がヤバいじゃん」
「うううう」
何も言い返せなくて子どものように唸ってしまう。小泉はそんな光を見てケラケラと笑った。遠くの席から大谷が光と小泉の様子を見つめていたが、その密やかな視線にはこの場の誰も気付いていなかった。
「大谷君って今彼女はいるのぉ~?」
飲み会も中盤に入った頃、だいぶお酒の入ったおばちゃん達がこぞって大谷に質問していた。その気になる内容に、光も遠くからだがしっかりと耳を澄ませて聞いていた。
「今はそんな余裕ないんでいませんよ」
「ほんとー? 院内に大谷君を狙ってる子結構多いから、それは朗報だわ! まあわざわざ教えないけどね。じゃあ自衛隊時代はいたの?」
「合コンはよくしてましたけど、恋人はなかなか……」
(よくしてたのか……まあ、俺と違って普通にモテそうだし、今まで彼女とかもたくさんいたんだろーな)
「へえ~、自衛隊ってそうなんだ。そういやお見合い番組でよく自衛隊出るわね。大谷君はああいうの興味ないの?」
「あんまり……ガツガツした人は苦手ですし」
(ふうん……)
別に大谷の好みを知ったからといって、大谷はノンケだろうし光にはどうすることもできないのだけど。
(いくら大好きな三澄君って周りから言われても、大谷さんにとって俺は先輩として好きって以外ないもんな……)
なんだか少し切なくなったが、ハッとして思い直す。
(いやっ別に俺、大谷さんのこと好きじゃないし! ただすっごいいいカラダしてるから、一度抱かれてみたいとかそういうフラチな妄想と時々オカズにするだけで、別に好きとか全っ然そういうのじゃないし!)
「三澄君、もうすぐお開きだからお勘定しといで~」
「あ、ハイ」
色んな人の場所でだいぶ飲んできたらしい小泉が、光の隣に戻ってきた。
「幹事はこれで終わりだけど、二次会も行くでしょ?」
「いや、俺はもう帰ろうかと……」
「大谷君も行くって」
(何故そこで大谷さんの名前を出すんだ……でも、今日あんまり話せなかったしなぁ……)
「……じゃあ、行こうかな」
「あはは、ほんと分かりやすい子」
「!?」
どういう意味ですかと聞き返そうとしたが、店員が『ラストオーダーでーす』と伝えに来たので、光は急いで会計に向かった。
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